お知らせ

  • データの移行について
    2005年10月26日のブログ開始当初から、2025年3月31日までの記事は、「猫の欠伸研究室(アーカイブ)」に移行しました(http://blog.livedoor.jp/taichimaru151/)。 このココログの「猫の欠伸研究室」には、2020年1月以降の記事を残し、2019年12月以前の記事は削除しました(2020年1月1日から2025年3月31日までの記事は、両方にあります)。

レンズを通した自然観察

  • この「レンズを通した自然観察」ということばは、恩師のお一人が、私の趣味を形容しておっしゃったものです。2023年2月7日のブログに書きましたが、実はときどき思い出していることばです。お世話になった先生方はたくさんいらっしゃいますが、この恩師は、就職のことから学位論文の執筆、審査に至るまで本当にお世話になった先生です。「写真の撮り方を指南してもらいたい」ともおっしゃったのですが、これはお世辞と理解しています。私はほぼ隠居状態となって10年以上になりますが、今、改めてこのことばをかみしめています。この先生には結婚式の際に「理論と臨床をつなぐ仕事をするように」ということばをいただきました。体調を崩してそれには十分に応えられませんでしたので、せめてこの「レンズを通した自然観察」については、極めるとまでは行かないにしても、もう少し精進したいと考えています。

ブログ名の由来

  • ブログ名の「猫の欠伸研究室」は、中日新聞の夕刊に連載されている「紙つぶて」というコラム(平成22(2010)年1月13日)に、元新党さきがけ代表の武村正義さんが書いていらっしゃった「人生は猫の欠伸である」というコラムによります。武村さんは、“チベットで鳥葬を取り仕切る僧侶が、「人の生涯は猫の欠伸のようなもの」と語った”と書いていらっしゃいます。「猫の欠伸のようなもの研究室」としたかったのですが、ちょっと間延びしますので、「猫の欠伸研究室」とした次第です。「研究室」とつけたのは、過去、大学に勤めていたことがあるということやら、知らないこと、分からないことがあると何でも調べずにはいられない性分であること、屁理屈、講釈が大好きであることからであります。しかし、「人生の研究をしている」のではありません。「大所高所」からのご高説を開陳できるほどの力量はないが故、「小所低所」からの戯れ言をつぶやくのが精一杯(苦笑)。身の程に合わせ、勝手なことを書き綴っていますので、御用とお急ぎでない皆様には、今後ともご交誼のほど、お願いいたします。是非ともコメントを頂戴し、少しでも世間を広げたいと熱望しております。

モットー

  • 座右の銘というほど立派なものはありませんが、過去に体調を崩し、療養生活を送った経験から、私なりのモットーをつくっています。その一つは、「淡々と飽きもせず……」です。自分では、「……」と余韻を残しているところが気に入っています。こだわりすぎや、やり過ぎはよくありません。若い頃はムキになってやったこともありますが、今はこのように「淡々と飽きもせず……」が自分に合っていると思っています。もう一つは「晴耕雨読」ならぬ「晴歩雨読」です。マンション暮らし故、耕すところはありません。代わりに歩いています。そして、最近(令和3(2021)年に入った頃から)追加したのが、「散歩生活、ときどき仕事」。NHKのテレビ番組に「晴れ、ときどきファーム!」というものがあります。これのもじり。浅学非才の身ですので、ご交誼の上、いろいろとご教示をお願いします。

文化・芸術

2025年3月15日 (土)

九華公園でメスのカワセミ、ウグイスの初鳴き……桑名市博物館で「春の企画展『茶道具✿春らんまん』」を見てくる

Dsc04764c_20250315162101  曇りのち雨という予報の通り、昼くらいから小雨が降っています。最低気温は5.9℃、最高気温は9.3℃と、昨日とは打って変わって寒い日。朝7時20分から散歩へ。住吉神社、九華公園、貝塚公園、内堀南公園、外堀、桑名市博物館、京町、寺町と、6.6㎞。あまり歩くと、腰が重くなります。6㎞を超えるのはまだよくなさそうです。

Dsc04781c_20250315162101 Dsc04799c_20250315162101  住吉入江には、オオバン1羽と、カンムリカイツブリが1羽。キンクロハジロは、このところ見なくなっています。住吉水門から揖斐川を眺めたら、キンクロハジロが14羽、ヒドリガモが28羽、浮かんでいるのが見えました。

Dsc04925c_20250315162101 Dsc05184c_20250315162301  七里の渡跡では、ヒドリガモが4ペアと、コガモが1ペア。コガモは上陸して休んでいました。蟠龍櫓の東の高水敷には、ヒドリがモア30羽ほど飛来してきて、草を食べています。

Dsc04976c Dsc05102c_20250315162201  その蟠龍櫓のところで、ホオジロのペア。オスは、ここに来る前、船津屋さんの近くでさえずっていました。これは、今年もキットこのあたりで繁殖してくれるのでしょう。

Dsc05036c_20250315162201  さらに、ヒバリ。これはメスでしょう。一昨日、一昨昨日と、オスが揚げ雲雀をしているのを見ています。ヒバリも、繁殖するのかも知れません。今日は、なかなかのラインナップ。

Dsc05258c Dsc05297c_20250315162301  九華公園に着いて、鎮国守国神社の境内の堀では、コサギ2羽と、カルガモが4羽。堀は、いったん水を抜いたあと、揖斐川から水を入れているのですが、満潮時間帯でないとスムーズに導水できません。まだ堀に水が満ちるのには、時間がかかるようです。

Dsc05383c_20250315162301 Dsc05602c_20250315162301  奥平屋敷跡では、何と、カワセミのメス。鳴き声が聞こえましたので、探したところ、ちょうどよいところにしばらく止まっていてくれたのです。ほかには、ツグミも1羽。この直前、花菖蒲園のところでは、ツグミ2羽が同時に来ていましたが、写真が撮れたのは、この1羽。

 ヒヨドリは、今日も散歩&鳥見友達のOさんからパンの耳をもらっています。Dsc05899cが、やはりこのサイズは、丸呑みしにくそうでした。

Dsc05981c_20250315162301 Dsc06067c  二の丸堀の東側エリアでは、カンムリカイツブリ。ここ最近は、1羽のみ。朝日丸跡には、ビンズイが2羽。見つけるのが遅かったので、追いかけるような写真で、これは証拠写真。

Dsc06159c_20250315162301 Dsc06362c_20250315162401  鎮国守国神社の梅で「ウメジロウ」を狙ったものの、あまり出てこず。北門から再び、鎮国守国神社の社務所裏の堀に行ったら、イソシギ。羽毛が1伝っていますので、いつもここに来ている個体。この個体は、少し前、住吉入江にも来ていました。コサギ2羽が、まだいました。かなり接近するシーンもありましたが、ノートラブル。

20250315bushwarblercall  九華橋まで来たら、神戸櫓跡方面からウグイスの初鳴きが聞こえてきました。「初鳴き」といっても、私が今シーズン初めて、ウグイスがさえずるのを聞いたということです。Youtubeに短い動画をアップロードしてあります(こちら)。スマホで動画を撮影したもので、音が小さいのですが、「ホーホケキョ」と2回鳴いているのが聞こえます。

Dsc06500c_20250315162401  九華公園の外周遊歩道の南では、ジョウビタキのオス。九華公園に着いたときには、メスのジョウビタキを見たのですが、写真は撮れず、でした。

Dsc05926c  堀の水がまだ少ないため、カモは、キンクロハジロがほとんどいません。雌雄1羽ずつの2羽のみ。ハシビロガモは14羽、ヒドリガモは1ペア、ホシハジロのオスが1羽。キンクロハジロ以外は、いつも並。

Dsc05918c_20250315162301 Dsc05944c_20250315162301  ユリカモメは、22羽。数も少ないのですが、パンの耳を手に持って掲げても取りに来ませんし、橋の欄干にパンの耳を並べてもやって来ません。あのUYユリカモメもこのところ来ていません。貝塚公園、内堀南公園ではヒヨドリくらいしかいませんでした。

Dsc06574c_20250315162401 Dsc06694c_20250315162501  寺町商店街にある河津桜。暖かくなったためかほぼ満開。今日、明日は「河津桜まつり」ということで、キッチンカーが来ているほか、ビール、甘酒、花見だんごなどを売る店も出ています。

Dsc06820c_20250315162501 Dsc06891c_20250315162501  私は、いつものように河津桜の並木を丁寧に見てきました。狙いはもちろん、これ。「河津桜にメジロ」で、一名「サクジロウ」(もうちょっとよいネーミングが欲しいところ)。メジロは、ヒヨドリに追い払われて、あまり来ませんでした。曇天でしたので、「サクジロウ」も今ひとつ。

Dsc06646c_20250315164801 Dsc06977c_20250315162501  そのヒヨドリも、花の蜜を吸っています。私はヒヨドリを「暴れん坊」と呼んでいますが、メジロなど小型の野鳥を蹴散らすのです。ヒヨドリたちも、嘴のあたりが花粉で黄色くなっています。

Dsc06705c Dsc06715c  桜を見ていたら、知人の高齢女性に遭遇。「御坊さんにも桜みたいなのが咲いているけど、何?」と聞かれました。私もこれは知っていたのですが、いったい何なのかは、分かりません。桜か、梅か、アンズのような花で、めしべが大きいのですが、素人故、判別できていません。もう少し調べますが、ご存じの方がいらっしゃれば、ぜひともご教示ください。

Dsc07050c_20250315162501  住吉入江では、再び、カンムリカイツブリ。朝見た個体ではないかと思います。

Dsc06543c_20250315162401  ところで、途中で桑名市博物館に立ち寄ってきました。3月8日から「春の企画展『茶道具✿春らんまん』」が開かれているので、それを見てきたという次第。5月11日まで。大人は¥150。花をテーマに、花の茶道具や、春の日本画作品が展示されています。2階展示室では「刀剣セレクションⅢ―桑名ゆかりの刀剣―」も同時に開催されています。花の描かれた萬古焼や、茶道具、提げ重などや、日本画はいずれも春らしいもので、楽しめます。

Haruranman1c Haruranman2c  こちらが出品リスト。花の茶道具が75点、春の日本画が8点、刀剣セレクションには7点が展示されています。

Dsc06561c_20250315162401  いつものように、1点のみ撮影可能な展示があります。今回は、「短刀 銘 藤原正真(まさざね)作」。説明によれば、「平造、庵棟、地金は板目肌があらわれ、表裏で揃えられた波紋は花びらのように華やかで、『箱乱れ』調である。茎はタナゴ腹に仕立てられる」とあります。正真は、大和文殊派の刀工で、大和伝の影響が色濃い作例が確認される一方、「千子派」の刀工の一人ともされるそうです。この作も、村正の影響もうかがわれるといいます。刀剣のことはよく分かりませんが、村正やその影響を受けた刀を見ると、何となく吸い込まれそうな気がします。正真を調べたら、本多忠勝の槍「蜻蛉切」の作刀者だそうです。ちなみに、刀剣鑑賞の基本については、こちらの名古屋刀剣博物館のサイトにあります。

Harurannmannup  余談。日本画を見ていて、描かれている鳥と、その説明が合わないことに気づいてしまいました。「余分なことをいってはいけない」という気もしたのですが、やはり訂正していただいた方がよいと思い直し、学芸員の方に伝えてきました。最近、自分が犯したミスにはなかなか気づかないのですが、他人様の誤りには、割とよく気づくというよくない傾向は、相も変わらず残っているようで、恐縮です(微苦笑)。この画像は、桑名市博物館のサイトからお借りしました。

 ちなみに、7年近く前にも説明が入れ替わっているのに気づいたことがありました(2018年9月7日:散髪のあと桑名市博物館で「山林王の蔵の中」を見る……説明の入れ違いを発見(微笑)【9/8の中日新聞記事の写真に写り込んでいました】)。このときは、さらに、新聞記事に載った写真に写り込んでいたという出来事もありました。リンク先に新聞記事のコピーがあります。

2025年3月14日 (金)

20250314四日市市立博物館の「四日市の生んだ『日本のライト兄弟』玉井兄弟展」へ

Dscn0003c 250314095651894c  今日も最高気温は19.8℃と、とても暖かくなりました。散歩日和ですが、今日は、こちらへ行って来ました。四日市市立博物館です。ここで、3月1日から5月6日まで「四日市の生んだ『日本のライト兄弟』玉井兄弟展」が開かれているのです。玉井兄弟については、いつ、何で知ったか、記憶はないのですが、四日市出身で日本のライト兄弟と呼ばれることは承知していたのです。3月2日の中日新聞の「『日本のライト兄弟』四日市出身の玉井清太郎・藤一郎の偉業広めたい 市立博物館で企画展 」という記事でこの展覧会の紹介があり、これはぜひ見たいと思ったのです。近鉄桑名駅を8時57分に出る四日市行き準急で、近鉄四日市駅に9時23分着。¥360。四日市駅から歩くと、博物館の開館時刻である9時30分に着けるのです。

Dscn0007c  この展覧会は、博物館3階のロビーと、時空街道の中にある「白里亭」という展示処で行われています。入場は、無料。玉井兄弟とは、四日市市浜田町(現在の諏訪栄町)出身の玉井清太郎(明治25(1892)~大正6(1917)年)、藤一郎(明治27(1894)~昭和53(1978)年)のお二人。民間航空の草創期に活躍しています。兄・玉井清太郎は、織機や製糸機械の製造業を営む織具屋・玉井常太郎の長男として生まれました。日本飛行学校教官。大正6(1917)年5月20日、自作の新型機にて東京の芝浦海岸を飛行中に墜落。24歳の生涯を閉じています。弟・玉井藤一郎は、玉井常太郎の次男。兄が立ち上げた日本飛行学校を手伝っていました。兄が墜落した翌年の大正7(1918)年に照高(てるたか)と改名し独立。後に郷里の四日市で兄の追善飛行を行っています。

 Dscn0017c兄の清太郎は、16歳の時にライト兄弟の成功を知り、飛行機製作を決意。2年後の明治43(1910)年に弟の藤一郎も協力して、実物大の自作機・玉井式単葉機を母校浜田小学校の校庭で組み立てました。滑走実験を数回行ったものの機体が浮上せず失敗。その後も改良と挑戦を繰り返すがいずれも成功していません。明治44(1911)年に上京し、公式記録として日本で初めて飛行機で飛んだとされる徳川好敏大尉に会って助言を受けています。その後、何度も挑戦しますが、失敗をくり返した後、大正5(1916)年に「日本飛行学校」を設立。同年10月5日に、飛行練習場と定めた多摩川河口の干潟、通称・三本葦(さんぼんよし)でキャメロン25馬力エンジンを搭載した「玉井式2号機」の飛行に成功ました。ここは、現在、東京国際空港となった羽田の地です。

Dscn0009c Dscn0012c  展覧会には80点ほどの資料が展示されています。その多くは、玉井兄弟のおいで津市に住む玉井勝則さんが父・恒三さんから譲り受け、昨年3月に四日市市立博物館へ寄付したもの(これについての中日新聞の記事は、こちら)。清太郎が亡くなった時に付けていたゴーグルや懐中時計などの遺品が収められた写真、郷里での初飛行の成功後に撮影された藤一郎の写真などががあります。学芸員の方が作ったNFS2号機の10分の1スケールの模型も展示されています(左の写真)。右の写真は、日本飛行学校のジオラマ。

Dscn0019c  さらに、実際の飛行機に使った直径約3メートルのプロペラも見られます。プロペラは、四日市空襲で焼失したと思われていたのですが、清太郎と共に飛行機の製作に当たった友野直二の親族からの連絡で、東京にあることが判明。羽に「TAMAI」と刻まれていたことから兄弟のものと分かったといいます。玉井兄弟のことについては、もっと知られてもよいのではないかと思います。

250314094757706c 250314094910574x  ところで、四日市市立博物館の時空街道は、私の好きな展示です。以前にも何度か載せたことがありますが、四日市の原始・古代から江戸時代までの歴史を扱っています。なかでも江戸時代に関わる展示は、何度見ても飽きません。これらは、江戸時代の旅籠。人形でその様子を再現してありますが、リアルです。

250314095035757c 250314095043113x  こちらは、馬。江戸時代には、人が乗ったり、荷物を運んだりと重用されましたが、馬も草鞋を履いているのに目が向きます。

250314094936092c  ここは、饅頭屋ですが、ときどき焼き蛤屋に模様替えされています。

 250314103022827c 博物館の後は、アピタ四日市店でドンクのミニワンに寄って、ミニクロワッサン、ミニチョコクロワッサンのほかに季節限定の苺のフロマージュを買い、さらに近鉄百貨店四日市店にある丸善で本を買って帰宅。近鉄四日市駅を10時52分に出る名古屋行き準急で、近鉄桑名駅には11時11分着。¥360。

【追記(3/16)】 玉井兄弟については、四日市市文化会館の情報誌「よんぶんデジタル」の2020年3月創刊号に記事があります。ここをご覧ください。

2025年1月15日 (水)

三重県総合博物館で「三重の実物図鑑 2025年新春企画展示 三重のヘビたち」と、さんちゃんの動くところを見てきました

250115093136662c  水曜日、江戸橋での非常勤の授業です。今日で後期14回目。朝、家を出る前には少し雨。江戸橋駅を降りたら、道路が濡れていましたから、雨が降ったようでしたが、通勤には支障なし。今日の出席率は、70%弱とやや増えましたが、やはり欠席は多め。インフルやコロナが流行している影響かという気がします。午後からは風が強くなり、寒くなってきています。

 250115102812741c教壇に上がるのも、今日と来週ということになりました。来週が、私にとっては個人的な最終講義ですが、まぁ、非常勤講師ですから、そこは例の「淡々と飽きもせず……」のモットーでと思っています。学生諸君にもそのことは告げるつもりはありません。フェードアウトするというのが、理想的な終わり方ですから(微笑)。

250115125701897c 250115123754079c  さて、授業終了後は、それなりに元気がありましたので、予定通り、非常勤先から三重県総合博物館まで20分あまり歩いて行って来ました。

250115122745439c  見たかったのは、こちら。「三重の実物図鑑 2025年新春展示 三重のヘビたち」。巳年にちなみ、ここの収蔵資料から、「巳(蛇)」に関連した資料を展示するということで、ヘビの標本のほか、蛇をかたどった郷土玩具など、自然から歴史・文化まで幅広い分野の資料が展示されていました。展示は撮影できませんでしたが、私は、こちら中日新聞の記事にありますように、伊勢別街道沿いの名所「銭掛松(ぜにかけまつ)」(現・津市)に残るヘビにまつわる伝承を記した江戸期の書籍を見たかったのです。展示は小規模で、2回見て回りましたが、さほど時間はかかりませんでした。

250115124758632c 250115124016293c  三重県総合博物館といえば、上にも写真を載せましたが、ミエゾウの骨格標本と、さんちゃんを見てこなければなりません。さんちゃんは、オオサンショウウオ。三重県総合博物館唯一の生きた標本です。2階のミュージアムショップの奥にお住まいです。

250115124703017c 250115124303660c  ほとんど動かないのですが、今日は、さんちゃんの前にある休憩所で休んでいたら、やおら動きはじめました。途中、鼻を水の上に突き出していました。オオサンショウウオは、肺呼吸のはずですから、呼吸をしたのでしょう。ここと、こちらに動いているシーンをYouTubeにアップロードしておきました。1本はもう少し長くとったつもりでしたが、10秒ほどで終わっていました。「三重のヘビたち」ももちろん興味深かったのですが、動くさんちゃんにはかないません。

250115132420036c 250115133846354c  三重県総合博物館からバスで津駅へ。津駅ビルチャムの2階にあるそじ坊という、私の好きなそば屋さんで昼食。今日は、「けんちん蕎麦」(¥950)。暖かくて、おいしい蕎麦でした。別所書店にも立ち寄って、文庫本を1冊ゲット。津駅発13時56分の名古屋行き急行で帰宅。帰りが遅くなりましたから、今日はまだ出欠をチェックし、また、今日実施した質問紙の結果の集計が途中まで。Q&Aはまた明日です。

2025年1月12日 (日)

午後から桑名市博物館の「新春企画展『とっても♡いいもの』」へ……九華公園にも回り、カワセミの飛び出しシーンも

Dsc02074c_20250112171101  今日も寒い日になっています。最低気温は2.0℃、最高気温は7.4℃。午前中は曇っていましたが、午後からは晴れ間が出てきました。午前中は、内輪での勉強がありましたので、散歩は午後から。13時20分から、桑名市博物館、九華公園、三之丸公園、七里の渡跡と4.1㎞。

Dsc02310c_20250112171001 Iimonoposterc  まずは、桑名市博物館。昨日から「新春企画展『とっても♡いいもの』」が始まっています。「若者のみなさんとミュージアムの双方向的な企画として、20代を中心とした学芸スタッフが『若者の考え・気持ち』を踏まえ、作品の選定・解説を担当しました」ということで、期待して見に行きました。ちなみに、今回は新しい試みとして、この展覧会では、すべて撮影・SNS投稿可能となっています。これが、タイトルの「とっても♥いいもの」につながっているのです。大人は¥150。

250112133639597c  出品されていたものから、浮世絵などを中心にたくさん写真を撮ってきました。以下、私の個人的な好みでいくつか紹介します。こちらは、「徳川十六将肖像図」。和泉守政常の作。徳川家康と、彼を支えた重臣16人の姿が描かれています。中央が家康。その周囲に酒井忠次や、桑名藩初代藩主・本多忠勝など、名高い武将が配されています。忠勝は、向かって左の列の上から3人目。

250112134456704c  続いて、250112134300045c 「東海道五十三對桑名舩のり徳蔵の傳」。歌川国芳。各地の伝説などをテーマにしたシリーズ「東海道五十三對」の内の1枚。「無双の船乗り」ともいわれた桑名屋徳蔵と海坊主との問答という緊迫した場面が描かれています。私は、一度見て、気に入ったもの。右は、「東海道名所之内 桑名 蜃気楼」。周麿(ちかまろ:河鍋暁斎)。徳川家茂の上洛を題材としたシリーズの1つ。伊勢湾は蜃気楼の名所として知られており、桑名屋四日市の場面で蜃気楼を描く作品は他にもあります。

250112133951027c 250112133941292c  「五霊硯」。松平定信愛用の品。四霊(青龍、朱雀、白虎、玄武)を螺鈿で描いた蓋が特徴の硯。右は、白河藩の儒学者である廣瀬蒙斎による銘記。四霊に加え、この硯を一霊として、合わせて五霊となっています。君子がこの硯を用いれば、正道、すなわち人としての正しさが伝承されるという意味。

250112134936016c  古萬古の「赤絵人物文水盤」。沼波弄山の作。「萬古」は、「萬古不易」の意から名づけられ、初代の弄山が確立した技法が受け継がれています。周縁には唐子人物や、山水、青海波が描かれ、中国風のデザインになっています。盆石や生け花に用いられる水盤です。

250112135122072c  「勢州住千子正重」という銘の刀。正重は村正を祖とする一門・千子派の刀工です。この作は、寛文年間(1611~1673年)頃のものと考えられています。

Tottemoiimono1c  Tottemoiimono2c これらは出品リスト。私は、最近のくわな市民大学郷土史学科の講座で、浮世絵が資料としてよく呈示されていましたので、とくにそれらを見たいと思って行って来ました。なかなか興味深い展示内容で、お勧めです。もう一度ゆっくり見に行こうかと思っているくらいです。2月24日(月・振替休日)まで。

Dsc02099c_20250112171101 Dsc02235c_20250112171101  さて、博物館に行こうと拙宅マンションを出た、住吉入江にはハジロカイツブリミミカイツブリがいました。オオバン3羽といっしょに泳いでいるところ。

Dsc02218c_20250112171101  オオバンもけっこうきれいに撮ることができました。

Dsc02456c_20250112171001  博物館には30分ほど滞在し、14時頃九華公園に到着。いつもとは違って、立教小学校の体育館側から公園へ。こんな時間ですから、野鳥はあまりいないかと思ったのですが、きわめて良い方に期待が外れました(微笑)。奥平屋敷跡では、ジョウビタキのオス。寒かったので、まん丸のジョビ・ボール。

 Dsc02586c_20250112171001 さらに九華橋のところで、「カワセミはいないよな」と思って、ふと見たら、いたのです。橋の北東側の石垣の上に、まさにちょこんと座っている感じ。

Dsc02671c_20250112171001 Dsc02672c_20250112171001  何枚も写真を撮った中に、飛び立つシーンも写っていました。ピントがちょっと甘いのが残念ですが、いつも野鳥を撮るときには、絞り優先モードにしていますので、やむを得ず。

 Dsc02673c_20250112171001 もう1枚。このシーンが撮れただけでも大満足。ただし、もっとシャープに撮れるように精進しなくてはなりません。

Dsc02729c_20250112170901  相撲場の近くでコゲラ2羽。シジュウカラ2羽、メジロ数羽も近くにいましたが、これらはうまく撮れず。

Dsc02316c Dsc02372c_20250112171001  カモは、キンクロハジロが57羽、ハシビロガモが14羽、ホシハジロのオスが1羽、ヒドリガモは2ペア(左の写真)、もしくは、1ペアと、オス、メス1羽ずつ(1組はいっしょに行動していましたが、別のオス、メスは別々に行動)。キンクロハジロのオス1羽が、野球場の南の堀で、石の上に乗っていました。体調不良なのか、と心配になります。

Dsc02380c_20250112171101 Dsc02356c_20250112171001  ユリカモメは、18羽とあまり多くはありませんでした。私が歩いている途中で、エサをやり始めた方があり、大騒ぎになったのですが、それ以前は、野球場のフェンスの上などで待機。

Dsc02979c_20250112170901 Dsc03022c_20250112170901  三之丸公園に向かう途中、柿安コミュニティパークの堀でオオバンが食事中。さらに、七里の渡跡では、ヒドリガモ3ペアとメス1羽が堤防の法面に上がって、草を食べていました。

Dsc02493c_20250112171001  今週は明日が成人の日だそうで、世間は3連休。私は水曜に、江戸橋での非常勤の授業があります。14回目。週末には、近鉄ハイキングに行こうかと思っていますが(1月18日:旧伊勢街道で歴史探訪 新春!海の幸ハイキング)、以前にほぼ同じコースの企画に行っていますので(2019年2月2日:20190202近鉄ハイキング「名所・旧跡めぐり お江の里と海の幸」へ(予告編))、土壇場で気が変わる可能性が大(苦笑)。

【付記(1/13)】 桑名市博物館「とっても♥いいもの」で見てきた作品を追加しました。また、pnさんのご教示により鳥名を修正しました。

2024年11月24日 (日)

久しぶりに散歩へ

Dsc05542c  よく晴れて、風も弱く暖かくなっています。最高気温は、17.3℃。桑名市長選挙の投票日と、桑名市民芸術文化祭美術部門展が開催されていますので、8時半からまずは、そちらへ。その後、大央町、吉津屋町、京町から九華公園を一回り。田町、春日町、桑名七里の渡し公園と5.6㎞を歩いてきました。お陰様で、風邪は、ようやくかなりよくなってきました。

Dsc05550c_20241124151001 Dsc05554c_20241124151001  市長選挙の投票所は、子どもたちが通っていた小学校の屋内運動場。我が家からは、徒歩10分ほど。私が出かけた時間帯は、投票にきている人はあまり多くはありませんでした。

Dsc05558c_20241124151001  続いて、くわなメディアライブへ。1階にある多目的ホールで、桑名市民芸術文化祭美術部門展が今日まで開催中。日本画、洋画、書道、彫刻などのほかに写真も。知人が写真を出展していますので、拝観に行ったという次第。私のようなテキトー写真とは違って、本格的に取り組んでいらっしゃいますから、勉強になります。

Dsc05574c  九華公園には、9時25分頃到着。先週火曜日以来です。京町から行きましたので、いつもとは逆回り。この時間では、小型野鳥はあまり期待できません。 時間が遅いので、散歩友達は、もう帰宅した後。

Dsc05646c_20241124151101 Dsc05675c_20241124151101  公園の外周遊歩道の南東あたりにカワラヒワが10羽以上集まっていました。右の写真のカワラヒワは、若い個体のような感じです。

Dsc05699c_20241124151101  その近くには、スズメが20羽以上。スズメの個体数は、近年急速に減少しており、絶滅危惧種レベルに達する危険性が指摘されています(たとえば、こちら)。調査によれば、スズメは、年平均3.6%のペースで減少しており、過去数十年で個体数は大幅に減少しました。半世紀前に比べ、90%ほど減ったというデータもあるそうです。この減少の主な原因として、巣を作る場所の減少や食料の不足、捕食者の増加が挙げられています。

Dsc05730c_20241124151101  小型野鳥が少ないので、ヒヨドリの写真も撮ってきました(微苦笑)。普段なら、ヒヨドリや、ムクドリの写真は撮りません。

Dsc05904c Dsc05886c_20241124151101  カモは、キンクロハジロが21羽(左の写真はオス)、ハシビロガモが15羽(右の写真はオス)、ヒドリガモが1ペアとほかにオスが1羽、ホシハジロのオスが1羽で、合計40羽。

Dsc05836c_20241124151101 Dsc06001c_20241124151101  ユリカモメは、25羽。二の丸橋の欄干にも並んだのですが、たったの5羽。ここにずらっと整列したところを見たいものです。

Dsc06069c_20241124151101  親子連れの方が、カモにエサをやっていましたので、ユリカモメもやってきて大騒ぎ。飛翔シーンが撮れないかと思ったのですが、なかなか難しい。

Dsc06176c 241124095445658c  紅葉の様子も見てきましたが、まだまだというか、今ひとつというか。イチョウは木によっては、すでにほとんど落葉しているものもあります。左の写真は、鎮国守国神社にて。右の写真も、同じくですが、例の「なんちゃって紅葉」を毎年撮影するところ。ここも今ひとつ。

Dsc06274c_20241124151201 241124103108436c  続いて、諸戸氏庭園の紅葉。昨日と同じあたりですが、モミジの木の下などへ行って、あれこれ試しましたが、これもイマイチ。今週でいよいよ11月も終わりになります。今週は、水曜日に江戸橋での非常勤の授業が予定されているだけ。

2024年11月13日 (水)

授業後、三重県立美術館で「知っておきたい 三重県の江戸絵画」を見てくる

241113102119816c  今日も気温が上がり、桑名では23.6℃になっています。何度も書きますが、11月中旬とは思えない気候。江戸橋での非常勤の授業も7回目。来週で折り返しとなります。出席率は、80%台前半で推移しています。まぁ、これくらいでしょう。欠席が続く学生も少しいますし、失格を宣言せざるを得ない学生も出て来ています。

241113095634854c  今日は、ビックリしたことがあります。非常勤講師控え室から教室に向かう途中、消防車の音が聞こえ、バン!という爆発音もして、白い煙が西の方から漂ってきたのです。教室に着いたら、窓の外はかなり白く、学生たちが外を覗いています。「ゴミ収集車が燃えているらしい」という話でした。ネットで検索しても、ニュースとしては出ていませんでした。ゴミとして出してはいけないものが混じっていたのか、という気がします。

241113125512460c  終了後、この時期ならいつもは志登茂川に寄ってくるのですが、今日はこちらへ。かねてからの計画通り、三重県立美術館(津市大谷町)で開催中の「知っておきたい 三重県の江戸絵画」を見てきました(¥700)。江戸橋駅から津駅まで近鉄電車で、津駅から美術館へは徒歩でも行けますが、往きは上り坂が続きます。2区間だけ三交バスに乗車(¥230)。帰りは、津駅まで歩いてきました。10分ほど。写真にもありますように、蘇我簫白(そがしょうはく)、月僲(げっせん)、増山雪斎(ましやませっさい:伊勢長島藩増山家5代藩主)の書画が出ています。いずれも三重県ゆかりの人物。簫白、雪斎は見たことがありましたが、月僲は、何年か前、名古屋であった展覧会を見逃したのです。月僲は、伊勢古市にある寂照寺の住職でした。寂照寺は、歩いて伊勢参りに行ったときに訪ねていて(2021年12月30日:20211225「東海道・伊勢街道歩いて伊勢参りツアー」第17回「宇治山田駅~内宮~五十鈴川駅」(その2)……長峰神社、麻吉旅館、寂照寺、伊勢古市参宮街道資料館から牛谷坂にある両宮常夜燈へ)、その際、月僲を知り、絵を見てみたいと思っていたのです。これで念願が叶いました。こちらに出品リストがあります。図録も入手(¥800)。作品ごとに、展示につけられていた解説文が載っており、なかなかおもしろそうです。石水博物館(津市垂水)で開催されている「京商人の美意識」も美学の先生に勧めていただいているのですが、津駅から榊原車庫行きのバスで行かねばなりません。授業後、2つの展覧会を回るのは、ちょっと大変で、今日はパス。

241113133807240c 241113132624289c  昼食は、津駅に戻り、私の好きなそじ坊で蕎麦。「ぶっかけ3種そば」をいただいてきました(税込¥990)。昼食を済ませ、同じ駅ビルチャムの3階にある別所書店で文庫本5冊を買って、津駅発13時56分の名古屋行き急行で帰宅。出欠チェックを終えたところで、例の、授業のQ&Aは、これから。

2024年11月 9日 (土)

今日もカワセミ……桑名市博物館で小林研三展も見て来る

Dsc07128c  朝は7.0℃と冷えましたが、日中は気温が上がって、19.6℃となっています。好天で散歩日和。JRさわやかウォーキングで、新幹線名古屋車両所に行く企画があり、ちょっと気持ちが動いたのですが、JR名古屋駅から中村公園に立ち寄って、名古屋車両所を往復するルート。都会の町中を立ち寄るところもなく、8.7㎞も歩くのはどうもなぁと思って、いつも通りの散歩へ。7時から住吉神社、九華公園、内堀公園。ここから桑名市博物館に立ち寄って、特別企画展「生誕百年 小林研三 ―モンペエ会と桑名のアートシーン―」を見て、京町、寺町を通って帰宅。6.5㎞。

Dsc07161c_20241109150001  拙宅マンションのプレイ・ロットにハクセキレイが来ていました。ここには、スズメ、ムクドリなどのほかに、ハクセキレイ、冬になるとシロハラなどが来ることがあります。

Dsc07282c_20241109150001 Dsc07232c  揖斐長良川の中州にはアオサギが1羽、また、揖斐川にはキンクロハジロが10数羽いるのが見え、さらにヒドリガモの鳴き声も聞こえてきました。カンムリカイツブリも1羽浮かんでいます。七里の渡し跡では、コガモのメス。これ1羽だけでした。

Dsc07587c_20241109150001 Dsc07543c_20241109150001  九華公園の堀には、キンクロハジロ(左の写真)が28羽、ハシビロガモ(右の写真)が10羽、ヒドリガモが1ペアで、カモたちは合計40羽になりました。この数は、今頃としては、例年並み。ただし、ヒドリガモは、しばらくして姿を消してしまいました。

Dsc07889c_20241109150001  奥平屋敷跡にいると、カワセミが来たのですが、すぐに二の丸跡へ移動。移動した先が、光の当たり方が微妙なところで、黒っぽく写り、アイキャッチができないところ。そのうち飛び去ってしまったのですが、ひょっとしたらと思い、鎮国守国神社へ。いました(微笑)。カワセミへの勘は、鈍っていないようです。

Dsc08161c_20241109150001  奥平屋敷跡に戻って、散歩&鳥見友だちのOさん、Yさんと話していたら、モズのメスがやってきました。木のてっぺんの小さいところにちょこんと止まっていて、かわいい。

Dsc08304c_20241109150001  朝日丸跡では、ジョウビタキのオス。写真は、ちょっと今ひとつ。

Dsc08376c_20241109150001 Dsc08465c_20241109150001  九華橋に来て、鎮国守国神社の社務所裏方面を双眼鏡で見ると、またもやカワセミがいるのが見えました。行くまでに逃げられるかと心配したものの、大丈夫でした。メダカくらいの大きさの小魚を捕るシーンも見えましたが、撮影は失敗。左の写真は、その小魚をくわえています。Oさんもいっしょに行きましたが、「近くできれいな写真が撮れた」と大満足しておられました。

Dsc08493c_20241109145901 Dsc08722c_20241109145901  カワセミを見ていたら、頭上からジョウビタキの鳴き声。メスのジョウビタキが、電線に来ていました。九華公園内をあちこちウロウロしていますが、朝日丸跡で散歩友達の女性と話していたら、目の前にコゲラ。「キツツキだ」と教えて差し上げたら、「エッ!? キツツキなんて、ここに来るの?」と驚かれました。

241109094345417c 241109101307847c  桑名市博物館。冒頭に書きましたように、特別企画展「生誕百年 小林研三 ―モンペエ会と桑名のアートシーン―」が、11月24日まで開催されています。小林研三の展覧会は、今までにも行われていますが、タイトルにあるように、生誕百年を記念し、また、小林が関わったモンペエ会のメンバーの絵画も出ています。ここに出品リストがあります。小林は、大正13(1924)年に三重県四日市市で生まれ、幼いころに桑名に移り住み、動物に対するやさしいまなざしを感じさせる作品を数多く残しました。それらは小林のあたたかい人柄を感じさせ、今なお多くの方々に愛されています。四日市にある山画廊のWebサイトでも、作品とその解説を見ることができます。

Screenshot_20241109102426c  桑名市博物館では、「ポケット学芸員」というアプリが導入されていて、これでいくつかの作品の解説音声を聞くことができました。作品そのものの解説や、その作品をめぐるエピソードなどが、簡潔明瞭にまとめられています。私のような素人には、どこに目をつけてみたらよいかなどが分かりますので、大変ありがたい。

 241109101235728c 毎回の展覧会で1つだけある、撮影可能な展示物、今回は、村正の短刀。刻まれているのは、「不動明王」という梵字だそうです。文字の上部が、炎のように伸びています。

2024年10月13日 (日)

三重県総合博物館で「刀剣 三重の刀とその刀工」を見てくる……法事は無事に終えられました

Img_5572c_20241013181101  今日は、義母の三回忌法要を勤めました。コロナ禍が収まらない、丸2年前に亡くなっています。菩提寺のご住職に実家に来ていただいて、家族だけで法要を勤め、無事に終えられました。朝は、6時50分から町内一周の散歩へ。5㎞ほど。

Img_5578c_20241013181101  ご近所のお宅で、アケビが色づいてきていました。私の実家にもオヤジが山で採ってきて植えたものがあり、懐かしい感じです。

Img_5627c_20241013181101  榊原川の掛子橋のところで、「ジャッジャッ」と鳴く声ガ聞こえてきました。目をこらしてみたら、これはたぶんウグイス。ムシクイの仲間は、こういう川沿いの藪には出てこないでしょうし、鳴き声もウグイスの地鳴きと思います。

Img_5664c_20241013181101 Img_5673c_20241013181101  氏神様の射山神社にお参り。今日は、秋祭りのようで氏子の皆さんが準備中。右の写真の幟旗を見ますと、故里の祭を思い出します。

Img_5679c_20241013181101  野鳥はそれなりに見たのですが、超望遠コンデジでは思うように撮れません(苦笑)。神社の近くでホオジロ。このほか、あちこちでモズを見たのですが、カメラを向けると逃げられることを繰り返し、結局、モズの写真は撮れずじまい。

Img_5801c_20241013181101  菩提寺にお参りして、近くの田圃でセグロセキレイ。実家の裏庭には、エゾビタキが何度も来たのですが、カメラを持っていなかったり、カメラを用意していると来なかったりで、結局、写真は撮れず。

241013140429786c  241013150533952c 午前中に法要を終え、自宅に帰る途中、三重県総合博物館に立ち寄ってきました。現在開催中の「開館10周年記念・第38回企画展 刀剣 三重の刀とその刀工」を見てきたのです。三重には、桑名の村正を筆頭に南北朝時代の終わりから室町時代にかけ、各地で刀工が活躍し、多くの作品を世に送り出してきました。そこで、この企画展では、三重県ゆかりの刀剣に焦点をあて、その作品や刀工の存在が紹介されているのです。私は、村正その他はもちろん、日本三大仇討ちとして有名な江戸時代の鍵屋の辻の決闘荒木又右衛門が使用した刀を見てみたかったのです。地元の桑名宗社や多度大社が所蔵する刀剣もたくさんでていました。しかし、やはり、地元の村正は素晴らしいということを再確認にしてきました。また、あまり知られていないのですが、桑名では江戸時代、刀の鍔もつくられており、これも有名です(桑名鍔)。「刀剣女子」という言葉ができて久しいのですが、女性のお客さんが圧倒的多数でした。刀剣乱舞とのコラボです。

241013144901002c  三重県総合博物館に行ったときのお約束。その1は、ミエゾウの骨格模型。何度見ても、写真を撮りたくなるのです。

241013144934960c 241013145134377c  もう1つのお約束は、さんちゃん。サンショウウオで、三重県総合博物館唯一の生きた標本。月に1回、「さんちゃんのお食事会」がありますが、餌を食べるのは、このときだけだそうです。余談ですが、少し考えて、結局、今日、三重県総合博物館の年パスを買いました。¥1,670。先月は「標本展」を見ましたが(2024年9月13日:「標本」展@三重県総合博物館へ)、このときの料金は¥800。今日の「刀剣展」は¥1,000。これから考えると、展覧会を2回見れば、元が取れる計算なのです。ほかにも基本展示もこの年パスで見られます。

Img_5716c_20241013181101  今週は、水曜日に非常勤の授業。内科の定例検診に行って、特定健診も受けてきます。コロナワクチンの接種もした方がよいだろうなと思っているところ。来週日曜は、四日市でJRさわやかウォーキングがあります( 2024年10月20日:2つの可動橋と旧みなとまち巡り)。すでにほとんど歩いたコースですが、行ってこようかと思っています。

2024年9月21日 (土)

イソヒヨドリとイソシギ……桑名市博物館で「蒼と白の世界-青磁・白磁、そしてガラス-」を見てくる

Dsc08510c_20240921143701  猛暑日からは逃れられそうですが、33.5℃となっています。朝は熱帯夜で湿度も高く、散歩してきたら、猛暑日と同じく、汗びっしょりでした。その散歩は、6時45分から。いつも通り、住吉神社、九華公園、中橋、歴史を語る公園、内堀公園、京町、寺町と7.0㎞。歩いたコースの割に距離が伸びていますが、九華公園でカワセミを求めて歩き回ったのです。

Dsc08529c_20240921143701 Dsc08565c_20240921143701  散歩に出てすぐ、諸戸氏庭園の前でハクセキレイ。猛暑以前は、よくいましたが、最近また、ときどき見られるようになりました。住吉神社の前から、揖斐長良川の中州を見たら、アオサギがいるのが見えました。こんな写真まで載せたのは、今日は、出会った野鳥が少なかったからです(苦笑)。

Dsc08673c Dsc08731c_20240921143701  蟠龍櫓の上にイソヒヨドリのメス。実は、住吉神社の近くで、2羽のイソヒヨドリがじゃれ合うように飛んでいたのですが、それは写真には撮れませんでした。柿安コミュニティパークまで来て、西にある堀を覗いたら、ちょうどカワセミがやってきました。初めに書きましたように、九華公園でもカワセミを見られないかと歩き回ったのですが、今日は、このシーンだけ。

Dsc08750c  九華公園では、例によって、ドバトばかり。まったく笑えてきます。スズメ、ムクドリはまったく見ず。ヒヨドリはわずかにいただけ。 カラスも少しだけ。

Dsc09136c_20240921143601 Dsc09136c_20240921143601  諦めきれずに、いつもであれば、鎮国守国神社の社務所裏を見るのは2回ですが、公園の外周遊歩道を回り終えてからもう1回(計3回)、見に行ったのです。筏橋を渡るところで何かが2羽、飛んでいくのが見えました。そっと近づいてみたら、イソシギでした。イソシギは単独行動がほとんどだと思うのですが、2羽が近くにいたのです。カワセミは証拠写真でしたが、イソシギがいたので、まぁ良し。

240921110030714c Aotoshioposter  いったん帰宅して、シャワーを浴びてから、今日は、桑名市博物館へ。9月7日(土)~9月29日(日)まで、秋季企画展「蒼と白の世界-青磁・白磁、そしてガラス-」が開かれているのです。会期が短いので、ウロウロしていると見逃しそうだと思ったのです。くわな市民大学郷土史学科の講師の大塚先生のご推薦もあって、ぜひ見ようと思っていたのです。右のポスター(博物館のサイトからお借りしました)にある、①本多忠政が徳川秀忠から下賜されたと言われる「獅子蓋(ししぶた)竹之耳附(たけのみみつき)青磁水指」、②朝鮮から輸入された「李朝(りちょう)白磁水指」、③江戸時代の吹きガラスの至宝「紫色ちろり」の3点にとくに興味がありました。とくに「紫色ちろり」は、これが江戸時代のものかと思い、見入ってしまうくらいきれいでした。

240921112231296c  2階展示室では、「刀剣セレクションII-君の銘。-」と「佐藤昌胤(まさたね) 移りゆくもの/変わらないもの」もあわせて開催中です。前者では、館蔵品の中から「無銘」の刀剣が展示されていましたが、村正と伝わるものもありました。佐藤昌胤(明治40(1907)~昭和45(1970)年)は画家で、桑名郡長島町(現在の三重県桑名市)出身。伊勢湾台風を題材にした絵画などで知られます。今回は、伊勢湾台風の被害を受けて変わってしまった故郷の長島の風景を描いた《破船の群れ》などが見られます。写真は、毎回ある、1点だけ撮影可能な展示品。今回は、「脇差 無銘(伝 繁慶(はんけい))」。三河から武蔵国に出て、鉄砲鍛冶から刀鍛冶になった繁慶の作と伝わっているそうです。

0921siryo  今回は、図録はありませんでしたが、このような資料を¥100で販売していましたので、購入してきました。表紙を除いて全8ページ。主な内容は、ガラスの歴史。全般的な歴史や、日本のガラス史にページが割かれており、最後の2ページに青磁と白磁の解説があります。

2024summerweather  ところで、今朝の中日新聞に「県内も異常だった夏…」という記事が載っていました。桑名での猛暑日は43日(昨年までの最多記録は24日、以下同)、熱帯夜は55日(52日)、今季の最高気温は40.4℃(8月9日)でした。最高気温40.4℃は、県内で初めて40℃を越えた記録です。地球全体の気温が上昇していることに加え、太平洋高気圧が日本付近に張り出しやすい気象状況で、晴れた日が多かったことがその要因だといいます。

2024年9月13日 (金)

「標本」展@三重県総合博物館へ

240913090441197c  今日も暑くなっています。津のアメダスでは、最高気温は、33.2℃。家内の実家での一人暮らしが続いていますが、退屈しのぎその3として、今日は、三重県総合博物館で開催されている「標本」展に行ってきました。昨日の記事で、どのように行くか迷っていると書きましたが、結局、実家からバスで久居駅へ。近鉄に乗り換え、津まで。津駅からはバスということになりました。たいしたことはありませんがそれなりに理由があります(後述)。往きは8時前のバスに乗り、久居駅には8時25分頃到着。¥580。久居駅8時31分発の急行で津駅には8時40分着。¥300。津駅西口9時13分発の総合文化センター行きのバスで、9時17分着。博物館は、この総合文化センターの敷地内にあります。帰りは、逆ルートで、実家には12時20分頃帰宅。歩いたのは、少なくて3.1㎞ほど。

0913miem  開催の趣旨は、次の通り。これは見逃す手はないと思っていたのですが、結局、見に行けたのは、会期末間際になりました。

開館10周年の夏は、わくわくするような昆虫・化石・岩石や鉱物・動物・植物など、当館のたくさんの自然史標本を大公開します!
博物館がたくさんの標本を集めるのはなぜ?どうやって集めるの?標本から何がわかるの?そんな疑問にもお答えします。当館の前身である三重県立博物館時代から集め、保存してきた「標本」の数々とそのすばらしさ、また展示を見るだけではない、博物館の真の姿を紹介します。

240913092338323c 240913092429080c  こちらが展示室の入り口。企画展示は、いつもこの展示室で行われます。右の写真は、入り口を入ったところの様子。手前に埋まっているのは、「ヒパクロサウルス」という化石の標本。アメリカで発掘されています。すべて撮影可能でしたので、100数十枚も写真を撮ってきてしまいました(すべてスマホ写真)。

240913094836646c  240913094635149c チョウの標本はとくにきれいでした。左の写真は、モルフォチョウの仲間のもの。右は、さまざまなチョウの標本を集めたもの。

240913093411865c  恐竜の標本は、大きくて目を引かれます。こちらは、トリケラトプス。

240913093129390c 240913093201391c  趣味の野鳥の標本も気になります。左の写真には、キジなどさまざまな標本が並んでいる様子が写っています。右は、その中からコゲラをクローズアップしたもの。このほか、植物、岩石、卵、種子、動物など多種多様な標本や、標本のつくり方などが展示されていて、とても興味深く見て回ってきました。展覧会は、9月16日までです。

240913101354297c  今回も図録を入手してきました。博物館も好きですが、図録を見るのも(集めるのも?)好きです。今回のものは、¥1,000。展示内容に沿って、あつめる、のこす、しらべる、つたえるという内容構成。

240913092254778c 240913104016915c  以下、余談。三重県総合博物館へ行くと、必ず会ってきます。オオサンショウウオのさんちゃん。三重県総合博物館唯一の生きた標本。ミュージアム・ショップ奥の水槽にいます。ほとんど動かないのですが、今日はお子さんを二人連れたお母さんが見ていたら、「動いた!」とおっしゃっていました。残念ながら、私は動くのを見たことはありません。右の写真は、展示室前にあるミエゾウの骨格標本。気に入っていて、行くたびに写真を撮ってしまいます。

Screenshot_20240913162549c  久居駅経由で行った理由その1。以前、エキタグというスマホアプリを紹介しました(2024年3月17日:20240317近鉄ハイキング酒蔵みてある記「銘酒『伊勢旭』旭酒造をたずねて」へ(一回完結))。最近は出かけていませんでしたので、デジタルスタンプが増えていませんでした。久居駅にも設置されているのを確認しましたので、久しぶりにゲットしようということで、往きに電車に乗る前に確認してきました。これでようやく8個目。

240913111656137c  理由その2。これは、以前に見ているのですが(2018年12月23日:20181223近鉄ハイキング「酒蔵みてある記 酒蔵めぐり油正『初日』と桃園三地蔵」へ……予告編、年内のウォーキング/ハイキング納め)、久居駅東口に、こういう銅像があります。忠犬ハチ公といえば、渋谷駅前なのですが、久居駅にもその銅像があるのです。これは「上野英三郎博士とハチ公」という銅像。飼い主の上野英三郎博士が、現在の津市久居元町(一志郡本村)に生まれたという縁で、ここに平成24(2012)年10月銅像が建てられたのです。久しぶりに見ようと思って、こちらは帰りに立ち寄ってきました。

240913100635332c  オマケ。ほぼ1時間で展示を見終わったのですが、10時台に津駅に行くバスは、10時46分の1本のみ。30分ほど時間がありましたので、図録を買うついでに「さんちゃんクッキー」が目に入りましたので、2個入り¥150を買って、休憩スペースで勝手におやつタイム(微笑)。

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  • 日本放送協会,NHK出版: NHK 3か月でマスターする 江戸時代 2025年 1月~3月 [雑誌] (NHKテキスト)

    日本放送協会,NHK出版: NHK 3か月でマスターする 江戸時代 2025年 1月~3月 [雑誌] (NHKテキスト)
    NHKのEテレで放送された、同名の番組のテキストです。今年の大河ドラマ「べらぼう」の関連番組ともいえます。放送を見なくとも、このテキストを通読することによって、江戸時代の概要をおさらいし、さらに、学生時代に学んだ知識をアップデートすることができます。とくに私のように、学生時代から50年近く過ぎたものにとって、昔、教科書で学んだことが、今やまったく書き替えられていることもよくあります。図表、写真も多用されていて、とても分かりやすいものです。 (★★★★)

  • 田中 優子: 蔦屋重三郎 江戸を編集した男 (文春新書)

    田中 優子: 蔦屋重三郎 江戸を編集した男 (文春新書)
    今年の大河ドラマの主人公である蔦屋重三郎について書かれた本ですが、読み終えるのに難儀しました(苦笑)。蔦屋重三郎は、数多くの洒落本、黄表紙、狂歌を世に出し、歌麿、写楽を売り出した人物です。江戸最大のプロデューサーというか、編集者というか。大河ドラマの主人公になるくらいなら読んでみるかと思って、気楽に手に取ったものの、専門書ではないかと思えるような内容、記述で読むのに苦労しました。著者の田中優子さんは、法政大学総長も務めた日本近世文学、江戸文化の大家。 (★★★)

  • 岩波 明: 高学歴発達障害 エリートたちの転落と再生 (文春新書)

    岩波 明: 高学歴発達障害 エリートたちの転落と再生 (文春新書)
    高学歴、高機能の発達障害の方たちの人生は、かなり激しいアップダウンを示すことがよくあります。ダウンした、長いつらい時期を過ごさざるを得ない人達であっても、そこから這い上がり、復活して、成功をつかむことが可能な人達も多くいます。その一方で、長きにわたって低迷した状態から抜け出せない人や、失敗、挫折を何度もくり返してしまう人もいます。高学歴、高機能の人達は、理解がよく、必要な情報に容易にアクセスする能力を持っているのですが、この点がマイナスに作用することもあります。知識量が多くて混乱したり、自分の考えに固執して医師と対立関係になったりすることがあるからです。私自身は、発達障害のある人には、自覚と工夫が必要と考えていますが、この本を読み終えた現在も、その考えに大きな間違いはないと思っています。さらに、発達障害の特性があったとしても、広い意味での環境要因を整えることはとても重要です。専門家による専門的な援助はもちろん、学校、職場の環境調整、家族の適切なサポートなどがそれです。「工夫」をする際には、とくに力量のある専門家からの援助は不可欠です。ASDについては、中核的症状に対する、有効な薬剤がない現状では、心理教育や、認知行動療法、SSTが有用です。ADHDの諸症状には、有効な薬剤が複数ありますし、心理教育や、認知行動療法のアプローチも有用でしょう。苦手なことについてがんばろうとしないことや、自分の得意な事が上手く発揮できたり、活かせたりすることを考えることもとても大切です。この本は、当事者の方やご家族、関わりを持つ教師などの皆さんにとても参考になるでしょう。 (★★★★)

  • 外山滋比古: 人生の整理学 読まれる自分史を書く (イースト新書Q)

    外山滋比古: 人生の整理学 読まれる自分史を書く (イースト新書Q)
    著者は、私の出身高校が旧制中学であった時代の大先輩。『思考の整理学』ほか、多数のベストセラーを書いておられます。この本は、ほかの本を探しに書店に行ったときに見つけて、即買い。自分史を書こうとは思っていませんが、これまでの人生を振り返るのに、何か参考になるかも知れないと思って、買ってきました。「サクセスストーリーのほとんどが退屈」「言いたくてむずむずするところは抑える」「『私』をおさえて『間接話法」で書いてみる」「お手本の文章をみつけて、軟度も読む」「内田百閒『戦後日記』のようにさらっと書いてみる」などなど、首肯するところ多々ありました。 (★★★★)

  • 小松 正: なぜヒトは心を病むようになったのか? (文春新書)

    小松 正: なぜヒトは心を病むようになったのか? (文春新書)
    進化心理学とは、ヒトの心のはたらきを「自然淘汰による進化」という考え方によって統一的に説明しようとする分野です。私が現役の頃から発展してきた、新しい心理学の分野です。この本は、ヒトが陥る自己否定的な状態、他人に対する攻撃性、人間同士の対立や分断など、ネガティブな性質がなぜ進化の過程で残ったのかを考察しています。一言でいうと、それは生存や繁殖と深い関係があるというのです。進化心理学から捉えることで、これら、心のダークサイドがよりよく見えてきます。 (★★★★)

  • 林 望: 節約を楽しむ あえて今、現金主義の理由 (朝日新書)

    林 望: 節約を楽しむ あえて今、現金主義の理由 (朝日新書)
    林望こと、リンボウ先生の本は、昔々、よく読みました。「イギリスはおいしい」などのエッセイは楽しみました。この本のタイトルをネットで見たとき、まさかあのリンボウ先生だとは思ってもみませんでした。リンボウ先生と節約というのが結びつかなかったのです。しかし、読んでみると、まがいもなくあのリンボウ先生の文章でした。ただの節約術の本ではなく、高齢になったときのライフスタイル、生き方について、リンボウ先生の考え方が展開されていました。筋金入りのへそ曲がりにして、頑固者のリンボウ先生らしい生き方です。キーワードを拾っただけでも、その一端が分かります。「銀行は信用してはいけません」「(お金を)知らない人に預ける危険性を考える」「高齢者は見栄を張らない」「冠婚葬祭は義理を欠く」「自然の調整機能に任せる」などなど。私はリンボウ先生ほど変人でも頑固でもないと思っていますが(多少は変人で、融通が利かないという自覚はあります)、なるほどと思ったことは参考にして行きます。 (★★★★)

  • 関裕二: アマテラスの正体(新潮新書)

    関裕二: アマテラスの正体(新潮新書)
    著者の前著『スサノヲの正体』も、興味深く読みました。斬新な着眼点と発想で、思いもかけない結論に至っています。読み物としてはとてもおもしろいという点で、☆を5つとしました。ネタバレになりますから、詳しいことを書くのは控えておきますが、著者は、伊勢神宮に祀られているのは、いわゆる「天照大神」ではなく、別の霊威の強い(祟る)、二柱の神だとしています。祟るが故に、伊勢に放逐されたのだと主張するのです。ただ、著者の肩書きは、歴史作家にして、武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェローであり、仏教美術に関心をもち、奈良に通ううち、独学で日本古代史を研究したということですから、現在の歴史学や考古学が明らかにした内容と整合性がとれている主張なのかどうかは、私には判断はできかねます。それ故、「読み物としてはおもしろい」と評価しています。 (★★★★★)

  • 小塩真司: 「性格が悪い」とはどういうことか ――ダークサイドの心理学 (ちくま新書)

    小塩真司: 「性格が悪い」とはどういうことか ――ダークサイドの心理学 (ちくま新書)
    タイトルに惹かれて読みました。ただし、初めにお断りしておきますが、図表こそないものの、心理学の専門書といっても良いくらいの、分厚い記述になっていますので、馴染みのない方にとっては読みやすいものではありません。「性格が悪い」ことについて、最近研究が進んできた「ダークな性格」を中心にまとめられています。ダークな性格とは、マキャベリアニズム、サイコパシー、ナルシシズム、サディズムの4つの特性です。これらの特性とリーダーシップ、社会的成功との関連、身近な人間関係中でのダークな性格、ダークな人物の内面、ダークな性格の遺伝、ダークさとは何かについて、文献を引用しつつ論じられています。その上で、性格の良し悪しは、その内容ではなく、どのような結果に結びつくかで判断されるというのが、著者の結論でした。 (★★★★)

  • 和田 秀樹: 老いるが勝ち! (文春新書)

    和田 秀樹: 老いるが勝ち! (文春新書)
    和田秀樹さんは、もともと高齢者専門の精神科医です。浴風会病院というところで35年間勤務され、6,000人以上の高齢者の方を診てこられました。その臨床経験から、高齢者については、理屈通りに行かないと思うことがたくさんあるといっておられます。タバコをたくさん吸っていても100歳まで生きる人もいれば、検査データはすべて正常なのにガンで亡くなる人もいるのだそうです。医者にいわれて血圧その他に注意していたのに、脳卒中を起こす人もいます。和田さんはこの本で80歳を過ぎたら我慢せず、好きな物を食べ、行きたいように生きることを勧めています。また、医療に関わらない方が長生きできる共書いています。不摂生を勧めておられるわけではありませんが、常識にとらわれず、自由に生きた方が楽しみも見つかってよいのではないかと思います。養老孟司先生流にいえば「なるようになる」のですから。 (★★★★★)

  • 彬子女王: 赤と青のガウン オックスフォード留学記 (PHP文庫)

    彬子女王: 赤と青のガウン オックスフォード留学記 (PHP文庫)
    彬子女王殿下の英国留学記です。彬子女王は、ヒゲの寛仁親王のご長女。殿下は、女性皇族として初めての博士号をオックスフォード大学で取得されました。この留学記は、ネットで話題になっていましたので、ぜひとも読んでみたいと思っていました。今上天皇の「テムズとともに」も読んだことがありますが、皇族の皆様は、どなたも誠実で朗らかで、それでいてユーモア溢れるお人柄をお持ちのようですが、殿下も同様でいらっしゃり、それがよく感じられる文章で楽しく拝読し、爽やかな読後感を持ちました。 (★★★★★)

  • 石井光太: ルポ スマホ育児が子どもを壊す

    石井光太: ルポ スマホ育児が子どもを壊す
    タイトルに惹かれて買ったのですが、帯にあるように「衝撃の現場報告」でした。この本に書かれているエピソードのうち、いくつかはこれまでにもマスコミ報道などで接していましたが、これだけのことがらが一度に示されると圧倒されます。現代の子どもたちは、まさに私たちが知っている(知っていた)子どもではなくなっているといえるようです。たとえば、「2歳児のネット利用率は58.8%」「子守歌はアプリで聞く赤ちゃん」「ヘッドガードの制服化」「教室の『アツ』に怯える小学生」「褒められ中毒はエスカレートする」などなど。スマホが登場して16年でその影響は大ですが、子どもたちの特徴に影響しているのはスマホだけではなく、現代社会や、大人達のありようも大きく影響しているといえます。「『将来の夢は交通整理のバイト』と言う女子高生」などはその例でしょう。私が教えている学生も、「『アツ』がすごい」ということがあり、いったい何だ?と思っていましたが、よく分かりました。すでに若い先生方は、デジタル・ネイティブ世代になっていますし、この本に登場する若者達が社会に出て、その中核を担うのも遠い将来のことではありません。これらの若者は、高い情報処理能力を持ち、周囲に適応する力もあり、コンプライアンス能力も高いのですが、それらを認めた上で、彼らが自立した大人になるために何が必要か見極め、それを提供することが必要とされるのでしょう。その意味では、大人の世代にも彼らを適切に理解し、必要な支援を提供する責任があります。 (★★★★)

  • 養老 孟司, 中川 恵一: 養老先生、再び病院へ行く

    養老 孟司, 中川 恵一: 養老先生、再び病院へ行く
    『養老先生、病院へ行く』の続編です。医療とは距離をとっておられる養老先生が、再診のため1年3ヶ月ぶりに東大病院に行かれました。大病から復活された今だからこそ語ることができる老い、医療、健康、死との付き合い方について、養老先生ご自身と、教え子にして主治医の中川恵一先生がお書きになっています。養老先生のスタイルをそのまままねすることは、凡人には不可能であり、よろしくはありません。しかし、健康についての考え方や、死についてのとらえ方などはとても参考になります。私が啓蒙されたことがらは、「健康法は人の数だけ存在する」「養老先生は抜け道の天才」「不連続な体調の変化に気をつける」「具合が悪いときは一週間様子を見ると医者に行くべきかどうか分かる」「お酒はもはや百薬の長ではないが飲む飲まないは自分で決めてよい」などでした。 (★★★★★)

  • 宮口幸治: 歪んだ幸せを求める人たち―ケーキの切れない非行少年たち3―(新潮新書)

    宮口幸治: 歪んだ幸せを求める人たち―ケーキの切れない非行少年たち3―(新潮新書)
    「ケーキの切れない非行少年たち」シリーズの3冊目です。本の帯には「『幸せを求めて不幸を招く人』の戦慄ロジック」とあります。「みんな幸せになりたい」という動機は万人がもつものでしょう。しかし、幸せの形は人それぞれですし、幸せになりたいと強く願うものの、かえって生きづらさや苦悩を抱える人たちもたくさんいます。著者は、人は幸せになりたいが故に、結果的に他人が不幸になることでもやってしまうといいます。さらに、幸せになりたいのだけれど、そのやり方がよくない」と考える、結果的に他人を不幸にする人たちを理解できるともいいます。著者が長年関わってきた非行少年達にもそれは共通するそうです。歪んだ幸せを求める人たちの背景にある要因として、著者は、怒りの歪み、嫉妬の歪み、自己愛の歪み、所有欲の歪み、判断の歪みの5つの歪みを取り上げ、事例も含めて考察しています。これを読むと、こうした5つの歪みは、ごく普通の人びとも多少とももっているものといえます。最終章では、自分と他者の「ストーリー」という概念を用いて、歪んだ幸せを求める事についてどう向き合えばよいか、提案されています。 (★★★★)

  • 森永 卓郎: 書いてはいけない

    森永 卓郎: 書いてはいけない
    他の本を買いに行った時、書店で平積みになっていましたので、思わず買ってしまいました。メディアのタブーに触れつつ、現在の日本が凋落している要因を3つ指摘しています。サブタイトルは、「日本経済墜落の真相」となっています。3つは、ジャニーズの性加害、財務省のカルト的財政緊縮主義、日本航空123便の墜落事件。この3つについては、関係者は皆知っているものの、触れてはいけない、本当のことをいってはいけないタブーになっているといいます。メディアで触れたら、瞬時にメディアには2度と出られなくなるそうです。ジャニーズ問題は、BBCの報道のためにオープンになってしまいましたが、著者の森永さんは、ご自身が病を得られたこともあって、現状を打破するためにこの本を書かれました。財務省による必要以上の財政緊縮政策と、日航123便の事故のお陰で日本がアメリカに対してどんどん主権を失っていったことが、日本経済の衰退の主たる要因と主張しています。たぶんそれは本当だろうなというのが、私の読後感。 (★★★★)

  • 立木 康介: フロイト『夢判断』 2024年4月 (NHKテキスト)

    立木 康介: フロイト『夢判断』 2024年4月 (NHKテキスト)
    何を今さら勉強しているのか? と思われるかも知れませんが、ちょっと前に流行った言葉でいえば、リスキリングに相当するかも知れません。学生時代に読みましたが、しっかり理解したかといえば、アヤシいのです。学生時代からは50年近い月日が経っていますので、その後の研究成果も含め、新しいことがあるだろうと思ったのです。100分de名著というNHK Eテレの番組のテキストです。講師の立木先生は、パリ第8大学で精神分析の博士号を取得され、京大人文科学研究所の教授。精神分析は「昨日までとは違う自分を手に入れるために行う」とおっしゃっていました。この番組でもっとも印象に残ったのは、あの有名な「エディプス・コンプレックス」よりも、今日、重要なフロイトが提案した概念は、「両性性」であるということでした。これは、いかなる個人も与えられた解剖学的性にしばられないセクシュアリティの自由を持つことをうたうものです。この視点に立てば、同性愛も、トランスジェンダーもいわば当たり前の存在であるということになります。これらを踏まえると120年間に書かれた「夢判断」の内容は、きわめて今日的な意義を持ってくると再認識する必要があります。 (★★★★★)

  • 諸富 祥彦: NHK「100分de名著」ブックス フランクル 夜と霧

    諸富 祥彦: NHK「100分de名著」ブックス フランクル 夜と霧
    フランクルのこの本は、改めて紹介するまでもないほど、有名な本です。私も学生時代、霜山徳爾先生の翻訳で読みましたが、ことばでは書き尽くせないほどの衝撃を受けたことを、いまでもよく覚えています。第二次世界大戦中にナチスの強制収容所に収監された経験をもとに、精神医学者・フランクルが、人生の目的を明確にし、その実現に向けて没頭する心理療法を紹介する本です。原題を直訳すると「それでも人生に然りと言う:ある心理学者、強制収容所を体験する」となります。実存心理学の名著であり、極限の環境におかれたとしても、何かが、あるいは、誰かがあなたを待っているということを主張しています。絶望して終わるのではなく、人生が何をわれわれに期待しているのかが問題であり、私たちはそれを学ぶことが重要だとしています。何度か読み直すことによって、人生への理解が深まる気がします。 (★★★★★)

  • 松田 忠徳, 増田 晋作: 枕草子の日本三名泉 榊原温泉

    松田 忠徳, 増田 晋作: 枕草子の日本三名泉 榊原温泉
    榊原温泉は、全国的に有名とはいえないかも知れませんが、名湯です。それは、枕草子に「湯は七栗の湯 有馬の湯 玉造の湯」にある、七栗の湯が榊原温泉と考えられるからです。最近、日本三名泉といえば、有馬温泉/兵庫県、草津温泉/群馬県、下呂温泉/岐阜県とされますが、枕草子に取り上げられたのはそれよりも古く、「元祖日本三名泉」といえます。榊原温泉の湯は、肌がきれいになる「美人の湯」というだけでなく、抗酸化作用もある健康の湯でもあります。この本は、日本一の温泉教授・松田先生と、地元を知り尽くした増田さんの共著で、「何もない」といわれていた榊原温泉の魅力を語り尽くしています。ちなみに、私にとっては家内の実家を知る上で格好のガイドブックです。 (★★★★)

  • 文藝春秋: 定年後に読む不滅の名著200選 (文春新書)

    文藝春秋: 定年後に読む不滅の名著200選 (文春新書)
    この本の帯には「これが定年後の知の道しるべ!」とありますが、私自身はさほど大上段に構えたつもりで読んではいません。どのような本が選ばれているかにももちろん興味はあったのですが、それらがどのように紹介されているかといった方面に興味があって読みました。本を紹介している方々はいろいろな分野で功なり、名を挙げた方ばかり。それらの方がどんな本を読み、どのように唱歌していらっしゃるかが知りたかったのです。ちょっと邪道な読み方ではありましたが、しっかりと楽しめました。 (★★★★)

  • 石田泰弘(編著): 街道今昔 佐屋路をゆく (東海の街道2) (爽BOOKS 東海の街道 2)

    石田泰弘(編著): 街道今昔 佐屋路をゆく (東海の街道2) (爽BOOKS 東海の街道 2)
    さほど本格的に取り組んでいるわけではありませんが、昔の街道を歩くのは好きです。この本のテーマである佐屋路(佐屋街道)も歩きたいと思って調べています。佐屋路は、東海道佐屋廻りとも呼ばれたように、東海道の迂回路でした。江戸時代に東海道宮宿と桑名宿の間を、陸路万場宿、佐屋宿の陸路を経て、佐屋から桑名宿への水路三里の渡しによって結んでいた街道です。実際に歩いて書かれたと考えられますが、旅人目線で書かれたウォーキングガイドです。津島街道、高須道も取り上げられています。部分的には歩いたところがありますが、佐屋路はいずれ、歩いてみたいと思い、計画中ですので、とても参考になりました。実際に歩かなくとも、歴史読み物としても楽しめます。 (★★★★★)

  • 柳瀬博一: カワセミ都市トーキョー 【電子限定カラー版】 (平凡社新書1049)

    柳瀬博一: カワセミ都市トーキョー 【電子限定カラー版】 (平凡社新書1049)
    東京都心にたくさんのカワセミが棲んでいるというのは、最近割とよく知られるようになっています。清流の鳥というイメージがあるかも知れませんが、東京の「野生」環境をうまく利用して繁殖もしています。そのカワセミが暮らす街は東京屈指の高級住宅街ばかりだそうです。すなわちカワセミも、人間も好む環境は同じというのです。カワセミが暮らす街は、人間にとってもよい街ということです。カワセミの存在に気付いたことから、「小流域源流」をキーワードに「新しい野生」と「古い野生」の繋がりを論じています。カワセミの生態も詳しく観察されていますので、私も今までよく知らなかったことが多々書かれていて、興味深く読みました。 (★★★★)

  • 内田 樹: コモンの再生 (文春文庫)

    内田 樹: コモンの再生 (文春文庫)
    私は、内田樹先生の評論が好きで割とよく読みます。「コモン(common)」とは、形容詞としては「共通の、共同の、公共の、ふつうの、ありふれた」という意味ですし、名詞としては「町や村の共有地、公有地、囲いのない草地や荒れ地」を意味します。昔は、ヨーロッパでも日本でも村落共同体はそういう「共有地」を持っていました。コモンを管理するには「みんなが、いつでも、いつまでも使えるように」という気配りが必要になるのですが、近代になって怒った「囲い込み」によって「コモンの私有化」が起こり、村落共同体が消え、集団的に維持されていた儀礼、祭祀、伝統芸能、生活文化が消えてしまったのです。著者は、このコモンを再生することが市民の原子化、砂粒化、血縁、地域共同体の瓦解、相互扶助システムの不在という索漠たる現状を何とかするために必要と考えています。ちなみに、マルクスとエンゲルスによるコミュニズムは、著者によれば「共同体主義」と訳した方がよく、彼らは「コモンの再生」が必要と提言したといいます。「共産主義」と訳されてしまったがため、なんだかよく分からないことになっているのです。「共有主義」あるいは「共同体主義」と意訳してくれていたら、もろもろが変わっていたかも知れないという話には、膝を打ちました。 (★★★★★)

  • 本田 秀夫: 知的障害と発達障害の子どもたち (SB新書)

    本田 秀夫: 知的障害と発達障害の子どもたち (SB新書)
    児童精神科医の本田先生の最新刊です。今回は知的障害が取り上げられています。これまでの本田先生の御著書では、発達障害が主に取り上げられてきたのですが、実は知的障害を持つ子どもたちも一定数存在していますし、発達障害と知的障害を合わせ持つ子どもたちもいます。その意味で、発達に困難のある子どもたちのことをきちんと理解して、適切な支援をする上では、両者を視野に入れることが重要です。著者は、知的障害の支援では、「早く」と「ゆっくり」がキーワードになると書いておられます。これは私もそうだと思います。可能な限り早期から支援を受けた方がよく、一方で、発達のスピードに合わせて「ゆっくり」としたペースで支援をすることが大切になります。発達障害の子どもたちにも「本児のペースに遭わせた支援が必要」とおっしゃる方がありますが、発達障害の子どもたちの理解/支援の上でのキーワードは「アンバランス」です。この本は、発達が気になるお子さんをお持ちの保護者の方、特別支援教育に携わる教員の方々にとって、基本的なテキストといえます。 (★★★★★)

  • BIRDER編集部: お手本でわかる!野鳥撮影術 (BIRDER SPECIAL)

    BIRDER編集部: お手本でわかる!野鳥撮影術 (BIRDER SPECIAL)
    バードウォッチングや野鳥撮影を趣味にしています。とはいえ珍鳥を追うのではなく、主に自宅近くを散歩しながら、いわば「定点観測」のように野鳥を見ています。自分の写真の撮り方を振り返ると、図鑑的に撮ることがほとんどです。なぜそうなのかを考えてみると、研究者の端くれであったことが関わっている気がします。つまり、写真を撮ることを、観察した記録やデータと見ているからではないかということに思い当たりました。野鳥撮影の「幅を広げたい」と思っていたら、この本が出版されました。ざっと目を通したところ、「色とりどりの花と鳥」「木の実レストラン」「やわらかい表情を追う」などさまざまなテーマで鳥とその周辺を撮る方法が載っています。これを参考に、自分の野鳥写真の世界を広げられたらいいなと思える本です。 (★★★★★)

  • 磯田 道史: 磯田道史と日本史を語ろう (文春新書)

    磯田 道史: 磯田道史と日本史を語ろう (文春新書)
    磯田道史さんが、さまざまな分野の達人と歴史についての論賛をしたのをまとめた本です。論纂とは、①人の徳行や業績などを論じたたえること、②史伝の終わりに著者が書き記した史実に対する論評のこと。異分野の専門家同士が議論をすることによって生まれるものは、別次元となり、大変興味深いものとなります。この本がその論より証拠。養老孟司さんとの論賛からは「脳化社会は江戸時代から始まった」という話が出て来ています。忠、孝、身分などは、シンボリズムであり、それらは見たり、触れたりできません。また、関東大震災に遭遇したことは、被害に対する鈍感さをもたらし、それが太平洋戦争につながったという指摘には、なるほどそういう面も確かにありそうだと思わされました。その他、歴史や人間について、実にさまざまな、新しい見方が示され、大変おもしろく読み終えました。 (★★★★★)

  • 保阪 正康: 近代日本の地下水脈 I 哲学なき軍事国家の悲劇 (文春新書 1440)

    保阪 正康: 近代日本の地下水脈 I 哲学なき軍事国家の悲劇 (文春新書 1440)
    本の帯に「『水脈史観』で日本の失敗を読み解く」とあります。「水脈史観」という概念には初めて接しましたが、「攘夷のエネルギーは、いまも日本社会の根底に流れている」という見方です。明治維新後、日本がとりえた国家像は、欧米型帝国主義国家、道義的帝国主義国家、自由民権国家、米国型連邦制国家、攘夷を貫く小日本国家の5つであったが、哲学なきまま欧米型帝国主義国家の道を突き進み、軍事中心の国家作りを推し進めたことが、戦前の日本の失敗の原因であったというのが著者の主張です。それは確かにそうだと思いますが、私には、ほんのサブタイトルにある「哲学なき国家」ということが、現代日本の様々な問題の背景にあるような気がしてなりません。 (★★★★)

  • 佐伯 泰英: 陰流苗木(かげりゅうなえき)~芋洗河岸(1)~ (光文社文庫)

    佐伯 泰英: 陰流苗木(かげりゅうなえき)~芋洗河岸(1)~ (光文社文庫)
    今回も特別に時代小説を取り上げます。この2つ前の本に佐伯泰英さんの「恋か隠居か 新・酔いどれ小籐次(二十六)」を取り上げ、これは佐伯さんの300冊目の「文庫書き下ろし小説」だと書きました。今回のこの本は、301冊目です。しかも、80歳を越えて、さらに新しいシリーズを始められたのです。美濃を食い詰めた浪人・小此木善治郎が、職なし、金なし、住むあてなしながら、剣の達人にしてとぼけた侍であるものの、なんとも頼りになる存在で、親切な住人や大家によって受け入れられた長屋の秘密と謎の渦に巻き込まれるという設定。これまたおもしろそうなシリーズです。毎月刊行で、全3巻の予定とか。第2巻が待ち遠しい内容です。 (★★★★★)

  • 養老孟司, 鵜飼哲夫: なるようになる。 僕はこんなふうに生きてきた(中央公論新社)

    養老孟司, 鵜飼哲夫: なるようになる。 僕はこんなふうに生きてきた(中央公論新社)
    養老先生の新刊が出たというので早速入手し、ほぼ一気に読み終えました。「はじめての自伝!」といううたい文句で、帯には「虫と猫と、バカの壁。考え続けた86年」ともあります。養老先生は、かなりしつこい性格でいらっしゃるようで、疑問に思ったことは「まぁいいか」などと思わず、考え続けてこられたそうです。その結果が、これまでのユニークな著作に結実しています。それはさておき、考え続けた結果、「なるようになる。」というのが、養老先生の現時点での結論だそうです。「なるようにしかならない」ではなく、「なるようになる。」のです。物事は、はっきりとした目的意識があって進むのではないので、「なるようになる。」なのです。忘れてしまったような些事がその後の人生を動かしてきたかもしれないともあります。なるほどと、この本を読み、養老先生の来し方をいささか知ると、納得できます。というか、納得した気になっているだけかも知れませんが…… (★★★★★)

  • 佐伯 泰英: 恋か隠居か 新・酔いどれ小籐次(二十六) (文春文庫)

    佐伯 泰英: 恋か隠居か 新・酔いどれ小籐次(二十六) (文春文庫)
    佐伯泰英さんは、この本で「文庫書き下ろし小説」というジャンルで300冊刊行を達成されました。佐伯さんの時代小説はすべて読んでいます。まさにストーリー・テラーといえる作家で、実に読み応えのある時代小説をたくさん書いておられます。このシリーズは、いったん完結となったかと思ったのですが、この「恋か隠居か」で復活しました(と理解しています)。隠居を考える小籐次ですが、小籐次親子に挑戦状が届くところから始まる物語。今回も楽しめました。 (★★★★★)

  • 安藤優一郎: 15の街道からよむ日本史 (日経ビジネス人文庫)

    安藤優一郎: 15の街道からよむ日本史 (日経ビジネス人文庫)
    街道歩きを少ししています。三重県内では、東海道のほとんど、伊勢参宮街道、美濃街道・養老街道などを歩きました。もっとあちこちの街道を歩きたいと思っていますが、そのときにこの本が出版されましたので、早速入手して読みました。芭蕉の奥州街道、伊勢参宮街道のお伊勢参り、武士の旅日記などの章をとくに興味深く読みました。主要な街道を取り上げることで読みやすい歴史物語となっています。 (★★★★)

  • 大芦治: 心理学をつくった実験30 (ちくま新書)

    大芦治: 心理学をつくった実験30 (ちくま新書)
    「誰もが一度は耳にしたことがある有名実験の背景・内容・影響を紹介、新たな心理学像を呈示する」と帯にあります。心理学全般に関心を持つ社会人を読者に想定しているといいますが、私には心理学史のテキストとして、あるいは、入門段階の心理学を学んだ方がさらに学習を深める際に読む本としてもよいかも知れません。 私自身も、心理学の教科書を執筆したことが何度かありますが、そこに引用する理論や実験については、いわゆる「孫引き」をしてしまったこともよくありました。この本の著者は、可能な限り原典にあたって執筆していらっしゃり、その意味では参考になったところが多々あります。 ところで、著者は心理学の未来にあまり明るい展望を持てないようです。臨床心理士、公認心理師の資格が人気を集め、心理学部などもたくさん設けられました。私自身の勝手な個人的意見を書けば、資格ができると、レベルは下がると思っています。根拠はありません。個人的な印象によるものです。私は実験心理学でトレーニングを受け、臨床心理の分野に進みました。心理学の基本は実験心理学と個人差測定心理学にあると思っています。学部段階からいきなり臨床心理学プロパーに進むのは、相当よろしくないと思います。臨床実践にあたってはその基礎となる確かな、科学的な学問(知見、理論なども含む)が必要です。また、仮説演繹法などのものの見方もきちんと身に付ける必要があります。これらは実験心理学と個人差測定心理学から養われると思っています。 この本は、基礎的知識がない方がいきなり読むのは難しいでしょうが、科学的心理学を学びたいと思う方にはよい参考書となります。 (★★★★)

  • 磯田 道史: 家康の誤算 「神君の仕組み」の創造と崩壊 (PHP新書)

    磯田 道史: 家康の誤算 「神君の仕組み」の創造と崩壊 (PHP新書)
    磯田先生の書く本はどれもとても面白く読めます。といっても、私が読むのは研究書ではなく、新書だからなのかも知れません。この本は、家康がなぜ幕藩体制を創ることができたのか、江戸時代、誰が神君の仕組みを崩わしたのか、幕末、かくして神君の仕組みは崩壊した、神君の仕組みを破壊した人々が創った近代日本とは、家康から考える日本人というものという5つの章からなっています。家康は天下を取ったあとこの国を支配するのに巧妙な仕掛けをつくり、平和な時代が続いたのですが、誤算が生じて、徳川政権が変質し、崩壊に至ったと著者は考え、そのプロセスを俯瞰しています。いろいろな時点で「神君の仕組み」を骨抜きにする人物や政策が表れたといいます。組織が弱体化する姿を見ておくと、自分たちの劣化を防ぐ力が養われると磯田先生は述べています。徳川時代が現在にあたえている影響も多く、その分析も興味深く読めます。 (★★★★★)

  • 多井 学: 大学教授こそこそ日記

    多井 学: 大学教授こそこそ日記
    文庫本を買いに本屋に行ったら、平積みしてあるのを見つけて思わず買ってしまいました。私もその昔、ご同業だったことがあったからです。帯に「いくらでも手抜きのできる仕事」とありますが、私の経験でもそういう人もそれなりにいました。ちなみに私自身は、こき使われたと思っています。さらに「現役教授が打ち明けるちっとも優雅じゃない生活」とも書かれていますが、これはまさに私の体験と同じ。本に書かれていることがらも、ことごとく納得できます。私は、「そうそう!」といいながら読み終えました。大学教授で儲けている人はごく一部などなど。まぁ大学教授の仕事や生活に興味をお持ちの方は、さほど多くはいらっしゃらないとは思いますが、お暇な方にはどうぞ。 (★★★★)

  • 宮口 幸治: 境界知能の子どもたち 「IQ70以上85未満」の生きづらさ (SB新書)

    宮口 幸治: 境界知能の子どもたち 「IQ70以上85未満」の生きづらさ (SB新書)
    「境界知能」という言葉は、専門家はよく知っていると思いますが、一般のご父兄や、小中学校の先生方にはあまりなじみがないかも知れません。IQという指標でいえば、多くの場合70以上85未満の子どもたちがこれに該当する可能性があります。一見したところでは普通の子どもたちと変わりはなく、なかなか気づかれません。しかし、理論的には約14%の子どもたちが含まれますから、本の帯にあるように「日本人の7人に1人」となります。平均と知的障害のはざまにあり、気づかれにくいものの、授業について行けなかったり、友だちと上手くつきあえなかったり、感情のコントロールが苦手であったりして、当事者の子どもたちは苦戦し、辛い思いをしています。発達障害はよく知られるようになりましたが、境界知能の子どもたちにもしっかり目を向け、必要な支援を提供することは喫緊の課題といえます。この本では、境界知能とはどのような状態なのか、教科学習の前に認知機能を向上することの重要性、子どもの可能性をいかに伸ばしたら良いかについて具体的に、分かりやすく解説されています。 (★★★★)

  • 関裕二: スサノヲの正体(新潮新書)

    関裕二: スサノヲの正体(新潮新書)
    タイトルに惹かれて手に入れたものの、序章の記述が私にとっては退屈でしばらく放っておいたり、読み直そうと思ってくじけたりしていました。しかし、そこを乗り越えるとこの本はとても面白くなり、ほとんど一気読みしました。スサノヲ(素戔嗚尊)の正体を探るプロセスでアマテラス(天照大神)の謎も明らかにされて行き、それもとても興味深いものがあるのです。アマテラスは皇祖神とされますが、実在の初代王と言われる崇神天皇はアマテラスを伊勢に追いやっています。また、伊勢神宮を整備した持統天皇だけは伊勢に参ったものの、それ以降明治になるまで、1,000年以上も歴代天皇は伊勢神宮を訪れていません。明治天皇が東京に遷御したあと武蔵国の鎮守勅祭の社に定めたのは、スサノヲの祀られる氷川神社(現さいたま市)です。明治天皇は氷川神社を訪れた翌年に、伊勢神宮を訪れています。そもそも伊勢にいる神はアマテラスなのかという疑問にも立ち向かっている、古代史や神に関心がある方にはお勧め。 (★★★★★)

  • 安藤 優一郎: 大名屋敷「謎」の生活 (PHP文庫)

    安藤 優一郎: 大名屋敷「謎」の生活 (PHP文庫)
    時代小説をよく読みます。捕物帖、市井の人たちの生活、侍の物語、大名の話などいろいろとあります。庶民の生活については、これまでもいろいろな本でかなり知っていますが、大名の生活については分からないところの方が多いと思っていました。タイトルに惹かれて買ったのですが、大名やその家族の生活が詳しく書かれているのではなく、勤番侍の生活、大名屋敷の庭園、御用達商人や豪農、幕末の動乱と大名屋敷などの話が中心でした。それはそれで知らなかったことが多々あり、興味深く読みました。 (★★★)