お知らせ

  • データの移行について
    2005年10月26日のブログ開始当初から、2024年11月30日までの記事は、「猫の欠伸研究室(アーカイブ)」に移行しました(http://blog.livedoor.jp/taichimaru151/)。 このココログの「猫の欠伸研究室」には、2019年1月以降の記事を残し、2018年12月以前の記事は削除しました(2019年1月1日から2024年11月30日までの記事は、両方にあります)。

レンズを通した自然観察

  • この「レンズを通した自然観察」ということばは、恩師のお一人が、私の趣味を形容しておっしゃったものです。2023年2月7日のブログに書きましたが、実はときどき思い出していることばです。お世話になった先生方はたくさんいらっしゃいますが、この恩師は、就職のことから学位論文の執筆、審査に至るまで本当にお世話になった先生です。「写真の撮り方を指南してもらいたい」ともおっしゃったのですが、これはお世辞と理解しています。私はほぼ隠居状態となって10年以上になりますが、今、改めてこのことばをかみしめています。この先生には結婚式の際に「理論と臨床をつなぐ仕事をするように」ということばをいただきました。体調を崩してそれには十分に応えられませんでしたので、せめてこの「レンズを通した自然観察」については、極めるとまでは行かないにしても、もう少し精進したいと考えています。

ブログ名の由来

  • ブログ名の「猫の欠伸研究室」は、中日新聞の夕刊に連載されている「紙つぶて」というコラム(平成22(2010)年1月13日)に、元新党さきがけ代表の武村正義さんが書いていらっしゃった「人生は猫の欠伸である」というコラムによります。武村さんは、“チベットで鳥葬を取り仕切る僧侶が、「人の生涯は猫の欠伸のようなもの」と語った”と書いていらっしゃいます。「猫の欠伸のようなもの研究室」としたかったのですが、ちょっと間延びしますので、「猫の欠伸研究室」とした次第です。「研究室」とつけたのは、過去、大学に勤めていたことがあるということやら、知らないこと、分からないことがあると何でも調べずにはいられない性分であること、屁理屈、講釈が大好きであることからであります。しかし、「人生の研究をしている」のではありません。「大所高所」からのご高説を開陳できるほどの力量はないが故、「小所低所」からの戯れ言をつぶやくのが精一杯(苦笑)。身の程に合わせ、勝手なことを書き綴っていますので、御用とお急ぎでない皆様には、今後ともご交誼のほど、お願いいたします。是非ともコメントを頂戴し、少しでも世間を広げたいと熱望しております。

モットー

  • 座右の銘というほど立派なものはありませんが、過去に体調を崩し、療養生活を送った経験から、私なりのモットーをつくっています。その一つは、「淡々と飽きもせず……」です。自分では、「……」と余韻を残しているところが気に入っています。こだわりすぎや、やり過ぎはよくありません。若い頃はムキになってやったこともありますが、今はこのように「淡々と飽きもせず……」が自分に合っていると思っています。もう一つは「晴耕雨読」ならぬ「晴歩雨読」です。マンション暮らし故、耕すところはありません。代わりに歩いています。そして、最近(令和3(2021)年に入った頃から)追加したのが、「散歩生活、ときどき仕事」。NHKのテレビ番組に「晴れ、ときどきファーム!」というものがあります。これのもじり。浅学非才の身ですので、ご交誼の上、いろいろとご教示をお願いします。

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2023年7月20日 (木)

20230715伊勢河崎ウォーキング(その3)……倉田山公園、松尾観音寺、倭姫宮、日蓮聖人誓願の井戸、正寿院、光明寺を経て宇治山田駅へゴールにて「完」

Kawasaki4 Kawasaki5  7月15日の伊勢河崎ウォーキング本編その3です。その2では、河崎の町にある河邊七種神社、伊勢河崎商人館、そして、川の駅・河崎を回り、勢田川沿いを下って二軒茶屋まで歩きました。その3では、二軒茶屋から旧三重交通神都線の線路跡をたどって倉田山公園に向かいます。ここにある野口みずき金メダルロード顕彰碑と、沢村栄治投手&西村幸生投手の胸像を見て、松尾観音寺、倭姫宮をたどっていきます。

Img_8685c_20230718041201 Img_8694c_20230718041201  二軒茶屋から倉田山公園に向かう途中、再びJR参宮線をくぐります。その1にも書きましたが、このあたりは旧三重交通神都線の跡です。などということを思い出しながら県道22号線を越え、倉田山公園入り口の信号から、さあ坂を登ろうと思ったら、タイミングよく神都バスが来ました。三重交通が運用しています。神都線の路面電車が、第62回式年遷宮(平成25(2013)年)に合わせて、路面電車型バスとなって生まれ変わったものです。

Img_8707c_20230718041901  倉田山公園には11時45分頃到着。それまではほぼ平地を歩いていたのですが、10数mまで登ってきました。ここにはダイムスタジアム伊勢という野球場があり、この日は甲子園の三重県予選が行われていました。我々がここに着いた時には、宇治山田商業対亀山の試合中。次の試合は、皇學館対上野で、球場あたりには皇學館の応援に来た方がたくさん。皇學館高校はここからすぐのところ にあるのです。

Img_8696c_20230718041901 Img_8703c_20230718041901  球場脇にまずは、野口みずき金メダルロード顕彰碑野口みずき選手は、伊勢市出身。平成16(2004)年のアテネオリンピックの女子マラソンで優勝しました。その功績を顕彰し記念するため、三重県立宇治山田商業高等学校時代に実際にトレーニングで走ったコースを顕彰記念道路として設置し、その愛称を「野口みずき金メダルロード」と名付けたのです。顕彰碑は、平成17(2005)年10月に建てられています。

Img_8714c_20230718041901  球場に近いところにこちらの胸像。伊勢が生んだ2人の名投手、沢村栄治投手と、西村幸生投手。この胸像は元々別のところにあったのですが、平成26(2014)年3月、隣り合わせに移設されました。この記念と、球場のリニューアルオープンを記念して、創立80周年を迎えた読売巨人軍と、翌年80周年を迎えた阪神の2球団による「伝統の巨人阪神戦80周年企画」の一環として行われました。向かって左が沢村栄治投手(大正6(1917)~昭和19(1944)年)、右が西村幸生投手(明治43(1910)~昭和20(1945)年)。沢村は、宇治山田駅前にある明倫商店街に生家跡があります。旧京都商業(現在の京都学園高等学校)に進み、甲子園にも出場。17歳の時に出場した日米野球ではベーブ・ルースらがいた大リーグ選抜を1点に抑えました。巨人では3度のノーヒットノーラン試合を達成しています。昭和19(1944)年、3度目の出征の際、輸送船が台湾沖で攻撃され、27歳で戦死しました。背番号14は巨人初の永久欠番。今も、「沢村賞」にその名を残しています。西村は、現在の伊勢市大世古町出身。学生野球(関西大学)で活躍した後、昭和12(1937)年、大阪(現阪神)タイガースに投手として入団。同年秋、翌年春の優勝に貢献しています。昭和14(1939)年に退団、昭和20(1945)年4月、フィリピンで戦死しました。沢村投手との対戦を望んで阪神タイガースに入団したといいます。

Img_8743c  ルートマップはその4になります。倉田山公園からさらに少し登ると龍池山松尾観音寺があります。奈良時代始め(712年)、行基が伊勢神宮参拝の折、この松尾山に雄・雌の龍が住むと伝えられる池があることを知り、その池のほとりに自ら観音様を刻み寺を創建したと伝えられています。その後は、伊勢国の国司であった北畠(きたばたけ)氏が祈願寺として守護し、その後、北畠家一統の木造(こつくり)氏が氏寺として守護してきました。創建以来、本山も末寺も檀家も持たず、いずれの既成宗派にも属さない「単立」という特異な形態の祈願寺です。ご本尊は、「十一面観世音菩薩」と、脇仕の「地蔵菩薩」「毘沙門天」。この本堂は、約200年前の文政3(1820)年、総欅(そうけやき)造りで建てられています。

Img_8729c_20230715172901  今シーズンは、まだ蓮を見ていなかったのですが、ここで見られました。本堂裏には、二つ池(龍池)と呼ばれる2つの池があり、昔から東の池には雄龍、西の池には雌龍がそれぞれ住んでおり、観音様をお守りになっているといわれています。今から約600年前の応永10(1403)年5月、本堂が火災に遭った際、池から2体の龍神が姿を現わし、雄龍は燃え盛る炎を飲み込みながら舞い降り、観音様を自らの体で幾重にも巻き付け、また、雌龍は何度も池の水を炎に吹きかけ、観音様を火災から守ったという伝説が残っています。ここの境内には、庚申堂、松尾龍池社などさまざまなものがあります。詳しくは平成30(2018)年10月8日に訪ねた記事をご覧ください(2018年10月24日:20181008近鉄ハイキング「路面電車跡を巡り名物二軒茶屋餅で舌鼓」へ(その4)……角屋麦酒、神都線線路跡(?)、野口みずき金メダルロード顕彰碑、沢村栄治・西村幸生胸像を見て、松尾観音寺へ)。

Img_8767c_20230718044701  Img_8774c 松尾観音寺から倭姫宮へ向かうのですが、学校法人皇學館が経営する皇學館中学・高校・大学の敷地の脇を通っていきます。さらに住宅地の中を通り抜けると倭姫前交差点に出ます。そこに神宮文庫があり、立派な門が立っています。神道、文学、歴史などの貴重な和書20万冊を含み、約31万冊が収蔵されているそうです。慶安元(1648)年、外宮の東隣に豊宮崎文庫(とよみやざきぶんこ)が創設、また、貞享3(1686)年には、内宮文庫が立てられました。元禄3(1690)年に内宮近くの林崎の地に移され、林崎文庫と改称されています。久邇宮朝彦親王が林崎文庫内に皇學館を創設したのですが、両文庫は、図書館であると共に神職子弟の教育機関でもあった訳です。「諸車通行禁止」とありましたので、入るのがはばかられ、覗いても来ませんでした。

Img_8781c_20230718061801  倭姫前交差点のところに道標が1基あります。3面に矢印とともにいずれも「古市へ二町」と刻まれています。碑陰には、「昭和四年十二月建之」とあります。古市は、外宮と内宮を結ぶ参宮街道沿いにあり、17世紀以降には遊郭や芝居小屋、旅館が並び、伊勢随一の歓楽街としてにぎわったところ。要するに、伊勢参りの参拝客が増加するにつれ、参拝後に精進落としをする場所として賑わったのです。最盛期の天明(1781~1789年)頃には妓楼70軒、遊女1,000人、浄瑠璃小屋も数軒というにぎやかさで、「伊勢参り 大神宮にもちょっと寄り」という川柳があるほど活気に溢れていたといいます。十返舎一九の「東海道中膝栗毛」にも登場しました。二町は、218mあまりのこと。

 さらに交差点の北側には、Img_8785c_20230718062001「崇敬致誠」という石碑があります。これは、神宮徴古館が設立されたときの記念碑です。明治42(1909)年、神宮徴古館は内宮や外宮の神苑を整備した神苑会により設立されました。神苑会は、徴古館設立後に役目を終え、神宮に徴古館を献納して解散しています。この石碑の題字「崇敬至誠」は、徴古館建設に関わった多くの方の崇敬を伝えるものだそうです。なお、題字は有栖川宮威仁(ありすがわのみやたけひと)親王(文久2(1862)~大正2(1913)年)によります。

Img_8795c_20230715172901  倭姫宮です。御祭神は、倭姫命(やまとひめのみこと)。垂仁天皇の皇女。『日本書紀』によれば、天照大神を伊勢に祀り、伊勢神宮の初代斎宮(さいぐう)となりました。また、東征に向かう甥の日本武尊に草薙剣を与えたといいます。倭姫命は、垂仁天皇25年、それまで倭(やまと)の笠縫邑(かさぬいのむら)で天照大神を奉斎していた崇神天皇の皇女豊鍬入姫命(とよすきいりひめのみこと)にかわって「御杖代(みつえしろ)」として奉仕。さらによい鎮座地を求めて伊賀、近江、美濃、尾張を経て伊勢国五十鈴(いすず)川上に遷座したと伝承されます。

Img_8803c_20230715172901  倭姫宮交差点近くにある鳥居をくぐってから200mあまりの参道を進んで行くと、社殿があります。倭姫宮は、大正12(1921)年に御鎮座という、新しいお宮なのですが、木々は鬱蒼としていて、神聖な雰囲気は十分。大きな功績を示した倭姫命の御神徳を慕って、大正の初年から神宮司庁と宇治山田市(現在の伊勢市)が、命を祀るお宮の創立を請願し、大正10(1921)年1月、皇大神宮別宮として創立が許可され、同12(1921)年11月にご鎮座祭が執り行われたといいます。伊勢神宮には、別宮・摂社・末社・所管社の諸宮社(神宮が管理するのは、125社)があります。いずれも由緒は古く、奈良時代以前に遡るものが多いのですが、設立が明らかで、極めて新しいのは、この倭姫宮のみです。

Kawasaki1  倭姫宮から神宮徴古館、神宮美術館、神宮農業館のところを通って神田久志本本町の方へ下っていきます。実際にあるいたルートマップは、その5といいたいところですが、その1に逆戻り。御幸道路に出たところに日蓮聖人誓願の井戸。金刀比羅神社は、坂道を登っていかねばならないところを通り過ぎてしまい、パス。正寿院と光明寺を見て、スタート&ゴールの宇治山田駅に向かいます。

Img_8812c_20230718100701 Img_8822c_20230715172901  日蓮聖人誓願の井戸です。延長5(1253)年、日蓮上人が関東下向の途中で旧常明寺(じょうみょうじ)に参籠し、境内の井戸を潔斎して3つの誓い(三大誓願)を立てた場所です。日蓮の三大誓願とは、「我 日本の柱とならん、我 日本の眼目とならん、我 日本の大船とならん」です。常明寺は継体天皇代の創建とされ、もとは真言宗でしたが、寛永年間(1624~1644年)に天台宗に改宗。度会氏(二門)の氏寺。常明寺は、明治の廃仏毀釈の際、廃寺になり、明治15(1882)年、常明寺跡に伊勢・欣浄寺が復興されていますが、のちに移転。倭姫命の陵墓の伝承地が隣接します。『倭姫命世記』によると、雄略天皇23年2月、倭姫命は尾上山峰に退いて「石隠」したといいますが、この「尾上山峰」が常明寺のある小山で、境内の石窟が倭姫命の墳墓であるといわれるそうです(宇治山田陵墓参考地に指定)。この倭姫命の陵墓は、パスしてしまった金刀比羅神社の手前にあったのだそうで、これはちょっと失敗。

Img_8830c_20230718100701 Img_8834c  左の写真が、日蓮聖人が100日間にわたって水垢離をした井戸。また、ここには、誓願塔や石造宝塔が建てられています。大正13(1924)年、正法護持財団によって上人の遺跡の聖域や井戸が整備修復され、誓願塔も建てられています。また、平成3(1991)年には、新しく石造宝塔が建てられました(こちら)。

Img_8852c_20230718103201 Img_8849c_20230718103201  御幸道路を宇治山田駅の方に向かっていくと、勢田川の手前、右側にお寺が2つ並んでいます。まず、大塚山正寿院赤心門寺。浄土宗。平安時代前期の弘仁3(812)年に弘法大師・空海が真言密教の道場として創設したのが始まりで、安土桃山時代の天正2(1574)年に浄土宗に改宗しています。

Img_8845c_20230718103201  宝暦13(1763)年、霊元天皇の皇子職仁親王第二世に当たられる有栖川宮織仁親王殿下が伊勢神宮参拝の時、当山の南楼黒書院に宿泊されて以来、有栖川宮家と深い関わりができています。山門に菊のご紋章があしらわれていたのは、このためのようです。この写真は、平成22(2010)年にできあがった赤心殿。

Img_8858c Img_8871c_20230718103201  こちらは、金鼓山(きんこざん)光明寺。臨済宗東福寺派。寺伝では、天平年間(729~749年)に聖武天皇の勅願により伊勢神宮外宮宮域の南方の前山の鼓ヶ岳(現伊勢市前山町)に創建されたといいます。しかし、もとは外宮宮域の北方の山田の世木(現在の伊勢市駅前付近の伊勢市吹上、勢田川左岸)の世木神社の近くにあり、外宮神職であった度会氏の世木広光が創建したというのが定説とされます。鎌倉時代末期の元応元(1319)年、禅僧の月波恵観(げっぱえかん)が再興。恵観はもともと天台宗でしたが、東福寺の禅師癡兀大恵(ちこつだいえ)に師事したことから当寺が臨済宗に改宗されたと考えられています。

Img_8865c_20230718103201  ここはまた、南北朝時代の南朝の武将結城宗広(ゆうきむねひろ;?~延元3=暦応1(1338)年)の終焉の地でもあります。結城宗広は、延元元・建武3(1336)年、北畠顕家とともに陸奥の大軍を率いて西上、足利尊氏を九州へ走らせ、翌延元2・建武4(1337)年ふたたび尊氏追討のために奥州をたったものの失敗し、吉野に逃れます。翌年、顕家、義貞が相次いで戦死したため、奥州における南朝勢力再建を企図し、伊勢大湊(いせおおみなと)を出航したものの、天竜灘で暴風にあって吹き戻され、延元3・暦応元(1338)年、伊勢光明寺で病没しています。自決であったともいいます。宗広は当寺境内の「結城宗廣卿墳墓」に葬られました。ちなみに、結城宗広に関連して、津市にある結城神社は結城宗広をご祭神としていますし、境内に墓もあります(2019年5月10日:20190428近鉄ハイキング「『阿漕』砂浜ハイキングと津グルメ散策」へ(その2)……教圓寺、神明神社、山二造酢を経て結城神社へ)。結城宗広の墓は、福島県白河市の関川寺(かんせんじ;結城家の菩提寺)にもあります。伊勢の光明寺あたりが終焉の地で、結城神社近くの阿漕浦海岸で遭難したという言い伝えもあるようです。

Img_8896c_20230715172901 1689394935695c  これで目的地はコンプリート。宇治山田駅近くには13時15分頃に戻ってきました。暑かったので冷麺か、冷たい蕎麦でも食べたかったのですが、我々が行った「うじやまだ駅前横丁」にはそば屋はなく、ラーメン屋さんは営業していませんでした。そこでまんぷく食堂さんへ。プチからあげ丼、¥650をチョイス。からあげ丼では、ちょっと量が多そうな気がしたのです。プチにして正解。ちなみに、ここまんぷく食堂さんは、伊勢のソウルフードといえば必ず名前が上がる店だそうです。「からあげ丼」は来客の8割が頼むという超人気の品。スパイシーな唐揚げを、出汁と卵でふんわりととじてあり、クセになりそうでした。

Img_8911c_20230715172901  帰りは、宇治山田駅発13時40分の伊勢中川行き急行に乗車。伊勢中川には14時20分に到着。14時23分の名古屋行き急行に乗り換え、桑名には15時22分着。¥1,450。運賃もそれなりに高く、乗車時間も結構長かったのです。

230715165343428c  230715170118008c 本日のお土産は、もちろん二軒茶屋餅。10個入りで¥840。あんこの入ったきなこ餅です。シンプルでとても美味しいのです。個人的意見としては、赤福や、ひょっとしたらへんば餅もより美味しいかも知れません。賞味期限は2日間で、7月16日まで。賞味期限が短いこともあって、あまりあちこちで売っていないので、ちょっと残念。ここ本店、伊勢角屋麦酒外宮前店伊勢角屋麦酒内宮前店(おかげ横丁)のほか、宇治山田駅のファミマでも売っているようです。

 Screenshot_20230715153958cこの日のGoogle Fitのデータ。ルートマップでは現地で歩いたのは8.2㎞。Google Fitではトータル10.1㎞。帰りは桑名駅までクルマで迎えに来てもらいましたので、これくらいでしょう。歩数は、18,738。よく歩きました。今回は、暑い日でいささかへばりました。

Img_8918c_20230722113301 230715134839230c  オマケ。帰りに宇治山田から伊勢中川まで乗った電車は、ミジュマルトレイン。去年の1月から運行されているそうですが、主に賢島~伊勢中川間を走っていますので、なかなか目にする機会がありませんでしたし、乗ったのも初めて。

Img_8936c_20230722113301  ミジュマルというのは、みえ応援ポケモンに認定されているポケモン。鳥羽の方では、ミジュマルバスも走っているそうですし、県内各地で「ポケふた」というポケモンのキャラクターをあしらったマンホールの蓋が順次設置されているそうです(ただし、桑名はまだ)。

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    著者の前著『スサノヲの正体』も、興味深く読みました。斬新な着眼点と発想で、思いもかけない結論に至っています。読み物としてはとてもおもしろいという点で、☆を5つとしました。ネタバレになりますから、詳しいことを書くのは控えておきますが、著者は、伊勢神宮に祀られているのは、いわゆる「天照大神」ではなく、別の霊威の強い(祟る)、二柱の神だとしています。祟るが故に、伊勢に放逐されたのだと主張するのです。ただ、著者の肩書きは、歴史作家にして、武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェローであり、仏教美術に関心をもち、奈良に通ううち、独学で日本古代史を研究したということですから、現在の歴史学や考古学が明らかにした内容と整合性がとれている主張なのかどうかは、私には判断はできかねます。それ故、「読み物としてはおもしろい」と評価しています。 (★★★★★)

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    和田秀樹さんは、もともと高齢者専門の精神科医です。浴風会病院というところで35年間勤務され、6,000人以上の高齢者の方を診てこられました。その臨床経験から、高齢者については、理屈通りに行かないと思うことがたくさんあるといっておられます。タバコをたくさん吸っていても100歳まで生きる人もいれば、検査データはすべて正常なのにガンで亡くなる人もいるのだそうです。医者にいわれて血圧その他に注意していたのに、脳卒中を起こす人もいます。和田さんはこの本で80歳を過ぎたら我慢せず、好きな物を食べ、行きたいように生きることを勧めています。また、医療に関わらない方が長生きできる共書いています。不摂生を勧めておられるわけではありませんが、常識にとらわれず、自由に生きた方が楽しみも見つかってよいのではないかと思います。養老孟司先生流にいえば「なるようになる」のですから。 (★★★★★)

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    彬子女王: 赤と青のガウン オックスフォード留学記 (PHP文庫)
    彬子女王殿下の英国留学記です。彬子女王は、ヒゲの寛仁親王のご長女。殿下は、女性皇族として初めての博士号をオックスフォード大学で取得されました。この留学記は、ネットで話題になっていましたので、ぜひとも読んでみたいと思っていました。今上天皇の「テムズとともに」も読んだことがありますが、皇族の皆様は、どなたも誠実で朗らかで、それでいてユーモア溢れるお人柄をお持ちのようですが、殿下も同様でいらっしゃり、それがよく感じられる文章で楽しく拝読し、爽やかな読後感を持ちました。 (★★★★★)

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  • 宮口幸治: 歪んだ幸せを求める人たち―ケーキの切れない非行少年たち3―(新潮新書)

    宮口幸治: 歪んだ幸せを求める人たち―ケーキの切れない非行少年たち3―(新潮新書)
    「ケーキの切れない非行少年たち」シリーズの3冊目です。本の帯には「『幸せを求めて不幸を招く人』の戦慄ロジック」とあります。「みんな幸せになりたい」という動機は万人がもつものでしょう。しかし、幸せの形は人それぞれですし、幸せになりたいと強く願うものの、かえって生きづらさや苦悩を抱える人たちもたくさんいます。著者は、人は幸せになりたいが故に、結果的に他人が不幸になることでもやってしまうといいます。さらに、幸せになりたいのだけれど、そのやり方がよくない」と考える、結果的に他人を不幸にする人たちを理解できるともいいます。著者が長年関わってきた非行少年達にもそれは共通するそうです。歪んだ幸せを求める人たちの背景にある要因として、著者は、怒りの歪み、嫉妬の歪み、自己愛の歪み、所有欲の歪み、判断の歪みの5つの歪みを取り上げ、事例も含めて考察しています。これを読むと、こうした5つの歪みは、ごく普通の人びとも多少とももっているものといえます。最終章では、自分と他者の「ストーリー」という概念を用いて、歪んだ幸せを求める事についてどう向き合えばよいか、提案されています。 (★★★★)

  • 森永 卓郎: 書いてはいけない

    森永 卓郎: 書いてはいけない
    他の本を買いに行った時、書店で平積みになっていましたので、思わず買ってしまいました。メディアのタブーに触れつつ、現在の日本が凋落している要因を3つ指摘しています。サブタイトルは、「日本経済墜落の真相」となっています。3つは、ジャニーズの性加害、財務省のカルト的財政緊縮主義、日本航空123便の墜落事件。この3つについては、関係者は皆知っているものの、触れてはいけない、本当のことをいってはいけないタブーになっているといいます。メディアで触れたら、瞬時にメディアには2度と出られなくなるそうです。ジャニーズ問題は、BBCの報道のためにオープンになってしまいましたが、著者の森永さんは、ご自身が病を得られたこともあって、現状を打破するためにこの本を書かれました。財務省による必要以上の財政緊縮政策と、日航123便の事故のお陰で日本がアメリカに対してどんどん主権を失っていったことが、日本経済の衰退の主たる要因と主張しています。たぶんそれは本当だろうなというのが、私の読後感。 (★★★★)

  • 立木 康介: フロイト『夢判断』 2024年4月 (NHKテキスト)

    立木 康介: フロイト『夢判断』 2024年4月 (NHKテキスト)
    何を今さら勉強しているのか? と思われるかも知れませんが、ちょっと前に流行った言葉でいえば、リスキリングに相当するかも知れません。学生時代に読みましたが、しっかり理解したかといえば、アヤシいのです。学生時代からは50年近い月日が経っていますので、その後の研究成果も含め、新しいことがあるだろうと思ったのです。100分de名著というNHK Eテレの番組のテキストです。講師の立木先生は、パリ第8大学で精神分析の博士号を取得され、京大人文科学研究所の教授。精神分析は「昨日までとは違う自分を手に入れるために行う」とおっしゃっていました。この番組でもっとも印象に残ったのは、あの有名な「エディプス・コンプレックス」よりも、今日、重要なフロイトが提案した概念は、「両性性」であるということでした。これは、いかなる個人も与えられた解剖学的性にしばられないセクシュアリティの自由を持つことをうたうものです。この視点に立てば、同性愛も、トランスジェンダーもいわば当たり前の存在であるということになります。これらを踏まえると120年間に書かれた「夢判断」の内容は、きわめて今日的な意義を持ってくると再認識する必要があります。 (★★★★★)

  • 諸富 祥彦: NHK「100分de名著」ブックス フランクル 夜と霧

    諸富 祥彦: NHK「100分de名著」ブックス フランクル 夜と霧
    フランクルのこの本は、改めて紹介するまでもないほど、有名な本です。私も学生時代、霜山徳爾先生の翻訳で読みましたが、ことばでは書き尽くせないほどの衝撃を受けたことを、いまでもよく覚えています。第二次世界大戦中にナチスの強制収容所に収監された経験をもとに、精神医学者・フランクルが、人生の目的を明確にし、その実現に向けて没頭する心理療法を紹介する本です。原題を直訳すると「それでも人生に然りと言う:ある心理学者、強制収容所を体験する」となります。実存心理学の名著であり、極限の環境におかれたとしても、何かが、あるいは、誰かがあなたを待っているということを主張しています。絶望して終わるのではなく、人生が何をわれわれに期待しているのかが問題であり、私たちはそれを学ぶことが重要だとしています。何度か読み直すことによって、人生への理解が深まる気がします。 (★★★★★)

  • 松田 忠徳, 増田 晋作: 枕草子の日本三名泉 榊原温泉

    松田 忠徳, 増田 晋作: 枕草子の日本三名泉 榊原温泉
    榊原温泉は、全国的に有名とはいえないかも知れませんが、名湯です。それは、枕草子に「湯は七栗の湯 有馬の湯 玉造の湯」にある、七栗の湯が榊原温泉と考えられるからです。最近、日本三名泉といえば、有馬温泉/兵庫県、草津温泉/群馬県、下呂温泉/岐阜県とされますが、枕草子に取り上げられたのはそれよりも古く、「元祖日本三名泉」といえます。榊原温泉の湯は、肌がきれいになる「美人の湯」というだけでなく、抗酸化作用もある健康の湯でもあります。この本は、日本一の温泉教授・松田先生と、地元を知り尽くした増田さんの共著で、「何もない」といわれていた榊原温泉の魅力を語り尽くしています。ちなみに、私にとっては家内の実家を知る上で格好のガイドブックです。 (★★★★)

  • 文藝春秋: 定年後に読む不滅の名著200選 (文春新書)

    文藝春秋: 定年後に読む不滅の名著200選 (文春新書)
    この本の帯には「これが定年後の知の道しるべ!」とありますが、私自身はさほど大上段に構えたつもりで読んではいません。どのような本が選ばれているかにももちろん興味はあったのですが、それらがどのように紹介されているかといった方面に興味があって読みました。本を紹介している方々はいろいろな分野で功なり、名を挙げた方ばかり。それらの方がどんな本を読み、どのように唱歌していらっしゃるかが知りたかったのです。ちょっと邪道な読み方ではありましたが、しっかりと楽しめました。 (★★★★)

  • 石田泰弘(編著): 街道今昔 佐屋路をゆく (東海の街道2) (爽BOOKS 東海の街道 2)

    石田泰弘(編著): 街道今昔 佐屋路をゆく (東海の街道2) (爽BOOKS 東海の街道 2)
    さほど本格的に取り組んでいるわけではありませんが、昔の街道を歩くのは好きです。この本のテーマである佐屋路(佐屋街道)も歩きたいと思って調べています。佐屋路は、東海道佐屋廻りとも呼ばれたように、東海道の迂回路でした。江戸時代に東海道宮宿と桑名宿の間を、陸路万場宿、佐屋宿の陸路を経て、佐屋から桑名宿への水路三里の渡しによって結んでいた街道です。実際に歩いて書かれたと考えられますが、旅人目線で書かれたウォーキングガイドです。津島街道、高須道も取り上げられています。部分的には歩いたところがありますが、佐屋路はいずれ、歩いてみたいと思い、計画中ですので、とても参考になりました。実際に歩かなくとも、歴史読み物としても楽しめます。 (★★★★★)

  • 柳瀬博一: カワセミ都市トーキョー 【電子限定カラー版】 (平凡社新書1049)

    柳瀬博一: カワセミ都市トーキョー 【電子限定カラー版】 (平凡社新書1049)
    東京都心にたくさんのカワセミが棲んでいるというのは、最近割とよく知られるようになっています。清流の鳥というイメージがあるかも知れませんが、東京の「野生」環境をうまく利用して繁殖もしています。そのカワセミが暮らす街は東京屈指の高級住宅街ばかりだそうです。すなわちカワセミも、人間も好む環境は同じというのです。カワセミが暮らす街は、人間にとってもよい街ということです。カワセミの存在に気付いたことから、「小流域源流」をキーワードに「新しい野生」と「古い野生」の繋がりを論じています。カワセミの生態も詳しく観察されていますので、私も今までよく知らなかったことが多々書かれていて、興味深く読みました。 (★★★★)

  • 内田 樹: コモンの再生 (文春文庫)

    内田 樹: コモンの再生 (文春文庫)
    私は、内田樹先生の評論が好きで割とよく読みます。「コモン(common)」とは、形容詞としては「共通の、共同の、公共の、ふつうの、ありふれた」という意味ですし、名詞としては「町や村の共有地、公有地、囲いのない草地や荒れ地」を意味します。昔は、ヨーロッパでも日本でも村落共同体はそういう「共有地」を持っていました。コモンを管理するには「みんなが、いつでも、いつまでも使えるように」という気配りが必要になるのですが、近代になって怒った「囲い込み」によって「コモンの私有化」が起こり、村落共同体が消え、集団的に維持されていた儀礼、祭祀、伝統芸能、生活文化が消えてしまったのです。著者は、このコモンを再生することが市民の原子化、砂粒化、血縁、地域共同体の瓦解、相互扶助システムの不在という索漠たる現状を何とかするために必要と考えています。ちなみに、マルクスとエンゲルスによるコミュニズムは、著者によれば「共同体主義」と訳した方がよく、彼らは「コモンの再生」が必要と提言したといいます。「共産主義」と訳されてしまったがため、なんだかよく分からないことになっているのです。「共有主義」あるいは「共同体主義」と意訳してくれていたら、もろもろが変わっていたかも知れないという話には、膝を打ちました。 (★★★★★)

  • 本田 秀夫: 知的障害と発達障害の子どもたち (SB新書)

    本田 秀夫: 知的障害と発達障害の子どもたち (SB新書)
    児童精神科医の本田先生の最新刊です。今回は知的障害が取り上げられています。これまでの本田先生の御著書では、発達障害が主に取り上げられてきたのですが、実は知的障害を持つ子どもたちも一定数存在していますし、発達障害と知的障害を合わせ持つ子どもたちもいます。その意味で、発達に困難のある子どもたちのことをきちんと理解して、適切な支援をする上では、両者を視野に入れることが重要です。著者は、知的障害の支援では、「早く」と「ゆっくり」がキーワードになると書いておられます。これは私もそうだと思います。可能な限り早期から支援を受けた方がよく、一方で、発達のスピードに合わせて「ゆっくり」としたペースで支援をすることが大切になります。発達障害の子どもたちにも「本児のペースに遭わせた支援が必要」とおっしゃる方がありますが、発達障害の子どもたちの理解/支援の上でのキーワードは「アンバランス」です。この本は、発達が気になるお子さんをお持ちの保護者の方、特別支援教育に携わる教員の方々にとって、基本的なテキストといえます。 (★★★★★)

  • BIRDER編集部: お手本でわかる!野鳥撮影術 (BIRDER SPECIAL)

    BIRDER編集部: お手本でわかる!野鳥撮影術 (BIRDER SPECIAL)
    バードウォッチングや野鳥撮影を趣味にしています。とはいえ珍鳥を追うのではなく、主に自宅近くを散歩しながら、いわば「定点観測」のように野鳥を見ています。自分の写真の撮り方を振り返ると、図鑑的に撮ることがほとんどです。なぜそうなのかを考えてみると、研究者の端くれであったことが関わっている気がします。つまり、写真を撮ることを、観察した記録やデータと見ているからではないかということに思い当たりました。野鳥撮影の「幅を広げたい」と思っていたら、この本が出版されました。ざっと目を通したところ、「色とりどりの花と鳥」「木の実レストラン」「やわらかい表情を追う」などさまざまなテーマで鳥とその周辺を撮る方法が載っています。これを参考に、自分の野鳥写真の世界を広げられたらいいなと思える本です。 (★★★★★)

  • 磯田 道史: 磯田道史と日本史を語ろう (文春新書)

    磯田 道史: 磯田道史と日本史を語ろう (文春新書)
    磯田道史さんが、さまざまな分野の達人と歴史についての論賛をしたのをまとめた本です。論纂とは、①人の徳行や業績などを論じたたえること、②史伝の終わりに著者が書き記した史実に対する論評のこと。異分野の専門家同士が議論をすることによって生まれるものは、別次元となり、大変興味深いものとなります。この本がその論より証拠。養老孟司さんとの論賛からは「脳化社会は江戸時代から始まった」という話が出て来ています。忠、孝、身分などは、シンボリズムであり、それらは見たり、触れたりできません。また、関東大震災に遭遇したことは、被害に対する鈍感さをもたらし、それが太平洋戦争につながったという指摘には、なるほどそういう面も確かにありそうだと思わされました。その他、歴史や人間について、実にさまざまな、新しい見方が示され、大変おもしろく読み終えました。 (★★★★★)

  • 保阪 正康: 近代日本の地下水脈 I 哲学なき軍事国家の悲劇 (文春新書 1440)

    保阪 正康: 近代日本の地下水脈 I 哲学なき軍事国家の悲劇 (文春新書 1440)
    本の帯に「『水脈史観』で日本の失敗を読み解く」とあります。「水脈史観」という概念には初めて接しましたが、「攘夷のエネルギーは、いまも日本社会の根底に流れている」という見方です。明治維新後、日本がとりえた国家像は、欧米型帝国主義国家、道義的帝国主義国家、自由民権国家、米国型連邦制国家、攘夷を貫く小日本国家の5つであったが、哲学なきまま欧米型帝国主義国家の道を突き進み、軍事中心の国家作りを推し進めたことが、戦前の日本の失敗の原因であったというのが著者の主張です。それは確かにそうだと思いますが、私には、ほんのサブタイトルにある「哲学なき国家」ということが、現代日本の様々な問題の背景にあるような気がしてなりません。 (★★★★)

  • 佐伯 泰英: 陰流苗木(かげりゅうなえき)~芋洗河岸(1)~ (光文社文庫)

    佐伯 泰英: 陰流苗木(かげりゅうなえき)~芋洗河岸(1)~ (光文社文庫)
    今回も特別に時代小説を取り上げます。この2つ前の本に佐伯泰英さんの「恋か隠居か 新・酔いどれ小籐次(二十六)」を取り上げ、これは佐伯さんの300冊目の「文庫書き下ろし小説」だと書きました。今回のこの本は、301冊目です。しかも、80歳を越えて、さらに新しいシリーズを始められたのです。美濃を食い詰めた浪人・小此木善治郎が、職なし、金なし、住むあてなしながら、剣の達人にしてとぼけた侍であるものの、なんとも頼りになる存在で、親切な住人や大家によって受け入れられた長屋の秘密と謎の渦に巻き込まれるという設定。これまたおもしろそうなシリーズです。毎月刊行で、全3巻の予定とか。第2巻が待ち遠しい内容です。 (★★★★★)

  • 養老孟司, 鵜飼哲夫: なるようになる。 僕はこんなふうに生きてきた(中央公論新社)

    養老孟司, 鵜飼哲夫: なるようになる。 僕はこんなふうに生きてきた(中央公論新社)
    養老先生の新刊が出たというので早速入手し、ほぼ一気に読み終えました。「はじめての自伝!」といううたい文句で、帯には「虫と猫と、バカの壁。考え続けた86年」ともあります。養老先生は、かなりしつこい性格でいらっしゃるようで、疑問に思ったことは「まぁいいか」などと思わず、考え続けてこられたそうです。その結果が、これまでのユニークな著作に結実しています。それはさておき、考え続けた結果、「なるようになる。」というのが、養老先生の現時点での結論だそうです。「なるようにしかならない」ではなく、「なるようになる。」のです。物事は、はっきりとした目的意識があって進むのではないので、「なるようになる。」なのです。忘れてしまったような些事がその後の人生を動かしてきたかもしれないともあります。なるほどと、この本を読み、養老先生の来し方をいささか知ると、納得できます。というか、納得した気になっているだけかも知れませんが…… (★★★★★)

  • 佐伯 泰英: 恋か隠居か 新・酔いどれ小籐次(二十六) (文春文庫)

    佐伯 泰英: 恋か隠居か 新・酔いどれ小籐次(二十六) (文春文庫)
    佐伯泰英さんは、この本で「文庫書き下ろし小説」というジャンルで300冊刊行を達成されました。佐伯さんの時代小説はすべて読んでいます。まさにストーリー・テラーといえる作家で、実に読み応えのある時代小説をたくさん書いておられます。このシリーズは、いったん完結となったかと思ったのですが、この「恋か隠居か」で復活しました(と理解しています)。隠居を考える小籐次ですが、小籐次親子に挑戦状が届くところから始まる物語。今回も楽しめました。 (★★★★★)

  • 安藤優一郎: 15の街道からよむ日本史 (日経ビジネス人文庫)

    安藤優一郎: 15の街道からよむ日本史 (日経ビジネス人文庫)
    街道歩きを少ししています。三重県内では、東海道のほとんど、伊勢参宮街道、美濃街道・養老街道などを歩きました。もっとあちこちの街道を歩きたいと思っていますが、そのときにこの本が出版されましたので、早速入手して読みました。芭蕉の奥州街道、伊勢参宮街道のお伊勢参り、武士の旅日記などの章をとくに興味深く読みました。主要な街道を取り上げることで読みやすい歴史物語となっています。 (★★★★)

  • 大芦治: 心理学をつくった実験30 (ちくま新書)

    大芦治: 心理学をつくった実験30 (ちくま新書)
    「誰もが一度は耳にしたことがある有名実験の背景・内容・影響を紹介、新たな心理学像を呈示する」と帯にあります。心理学全般に関心を持つ社会人を読者に想定しているといいますが、私には心理学史のテキストとして、あるいは、入門段階の心理学を学んだ方がさらに学習を深める際に読む本としてもよいかも知れません。 私自身も、心理学の教科書を執筆したことが何度かありますが、そこに引用する理論や実験については、いわゆる「孫引き」をしてしまったこともよくありました。この本の著者は、可能な限り原典にあたって執筆していらっしゃり、その意味では参考になったところが多々あります。 ところで、著者は心理学の未来にあまり明るい展望を持てないようです。臨床心理士、公認心理師の資格が人気を集め、心理学部などもたくさん設けられました。私自身の勝手な個人的意見を書けば、資格ができると、レベルは下がると思っています。根拠はありません。個人的な印象によるものです。私は実験心理学でトレーニングを受け、臨床心理の分野に進みました。心理学の基本は実験心理学と個人差測定心理学にあると思っています。学部段階からいきなり臨床心理学プロパーに進むのは、相当よろしくないと思います。臨床実践にあたってはその基礎となる確かな、科学的な学問(知見、理論なども含む)が必要です。また、仮説演繹法などのものの見方もきちんと身に付ける必要があります。これらは実験心理学と個人差測定心理学から養われると思っています。 この本は、基礎的知識がない方がいきなり読むのは難しいでしょうが、科学的心理学を学びたいと思う方にはよい参考書となります。 (★★★★)

  • 磯田 道史: 家康の誤算 「神君の仕組み」の創造と崩壊 (PHP新書)

    磯田 道史: 家康の誤算 「神君の仕組み」の創造と崩壊 (PHP新書)
    磯田先生の書く本はどれもとても面白く読めます。といっても、私が読むのは研究書ではなく、新書だからなのかも知れません。この本は、家康がなぜ幕藩体制を創ることができたのか、江戸時代、誰が神君の仕組みを崩わしたのか、幕末、かくして神君の仕組みは崩壊した、神君の仕組みを破壊した人々が創った近代日本とは、家康から考える日本人というものという5つの章からなっています。家康は天下を取ったあとこの国を支配するのに巧妙な仕掛けをつくり、平和な時代が続いたのですが、誤算が生じて、徳川政権が変質し、崩壊に至ったと著者は考え、そのプロセスを俯瞰しています。いろいろな時点で「神君の仕組み」を骨抜きにする人物や政策が表れたといいます。組織が弱体化する姿を見ておくと、自分たちの劣化を防ぐ力が養われると磯田先生は述べています。徳川時代が現在にあたえている影響も多く、その分析も興味深く読めます。 (★★★★★)

  • 多井 学: 大学教授こそこそ日記

    多井 学: 大学教授こそこそ日記
    文庫本を買いに本屋に行ったら、平積みしてあるのを見つけて思わず買ってしまいました。私もその昔、ご同業だったことがあったからです。帯に「いくらでも手抜きのできる仕事」とありますが、私の経験でもそういう人もそれなりにいました。ちなみに私自身は、こき使われたと思っています。さらに「現役教授が打ち明けるちっとも優雅じゃない生活」とも書かれていますが、これはまさに私の体験と同じ。本に書かれていることがらも、ことごとく納得できます。私は、「そうそう!」といいながら読み終えました。大学教授で儲けている人はごく一部などなど。まぁ大学教授の仕事や生活に興味をお持ちの方は、さほど多くはいらっしゃらないとは思いますが、お暇な方にはどうぞ。 (★★★★)

  • 宮口 幸治: 境界知能の子どもたち 「IQ70以上85未満」の生きづらさ (SB新書)

    宮口 幸治: 境界知能の子どもたち 「IQ70以上85未満」の生きづらさ (SB新書)
    「境界知能」という言葉は、専門家はよく知っていると思いますが、一般のご父兄や、小中学校の先生方にはあまりなじみがないかも知れません。IQという指標でいえば、多くの場合70以上85未満の子どもたちがこれに該当する可能性があります。一見したところでは普通の子どもたちと変わりはなく、なかなか気づかれません。しかし、理論的には約14%の子どもたちが含まれますから、本の帯にあるように「日本人の7人に1人」となります。平均と知的障害のはざまにあり、気づかれにくいものの、授業について行けなかったり、友だちと上手くつきあえなかったり、感情のコントロールが苦手であったりして、当事者の子どもたちは苦戦し、辛い思いをしています。発達障害はよく知られるようになりましたが、境界知能の子どもたちにもしっかり目を向け、必要な支援を提供することは喫緊の課題といえます。この本では、境界知能とはどのような状態なのか、教科学習の前に認知機能を向上することの重要性、子どもの可能性をいかに伸ばしたら良いかについて具体的に、分かりやすく解説されています。 (★★★★)

  • 関裕二: スサノヲの正体(新潮新書)

    関裕二: スサノヲの正体(新潮新書)
    タイトルに惹かれて手に入れたものの、序章の記述が私にとっては退屈でしばらく放っておいたり、読み直そうと思ってくじけたりしていました。しかし、そこを乗り越えるとこの本はとても面白くなり、ほとんど一気読みしました。スサノヲ(素戔嗚尊)の正体を探るプロセスでアマテラス(天照大神)の謎も明らかにされて行き、それもとても興味深いものがあるのです。アマテラスは皇祖神とされますが、実在の初代王と言われる崇神天皇はアマテラスを伊勢に追いやっています。また、伊勢神宮を整備した持統天皇だけは伊勢に参ったものの、それ以降明治になるまで、1,000年以上も歴代天皇は伊勢神宮を訪れていません。明治天皇が東京に遷御したあと武蔵国の鎮守勅祭の社に定めたのは、スサノヲの祀られる氷川神社(現さいたま市)です。明治天皇は氷川神社を訪れた翌年に、伊勢神宮を訪れています。そもそも伊勢にいる神はアマテラスなのかという疑問にも立ち向かっている、古代史や神に関心がある方にはお勧め。 (★★★★★)

  • 安藤 優一郎: 大名屋敷「謎」の生活 (PHP文庫)

    安藤 優一郎: 大名屋敷「謎」の生活 (PHP文庫)
    時代小説をよく読みます。捕物帖、市井の人たちの生活、侍の物語、大名の話などいろいろとあります。庶民の生活については、これまでもいろいろな本でかなり知っていますが、大名の生活については分からないところの方が多いと思っていました。タイトルに惹かれて買ったのですが、大名やその家族の生活が詳しく書かれているのではなく、勤番侍の生活、大名屋敷の庭園、御用達商人や豪農、幕末の動乱と大名屋敷などの話が中心でした。それはそれで知らなかったことが多々あり、興味深く読みました。 (★★★)

  • 服部環ほか: 指導と評価2023年10月号(図書文化社)
    「指導と評価」は、日本教育評価研究会の機関誌であるとともに、日本で数少ない教育評価に関する月刊誌です。この号では、教育・心理検査の意義と活用という特集が組まれています。「教育・心理検査の意義」に始まり、WISC-Ⅴ、KABC-Ⅱなどの個別検査の使い方、解釈の仕方、指導への活かし方がそれぞれの専門の先生によってわかりやすく解説されています。特別支援教育の現場でも、きちんとした心理アセスメント所見に基づいた支援を展開することが望ましいのですが、現場の先生方には敷居が高いようです。ご関心がおありの方には、どのように使えるか、どのように考えたらよいかについて基本的なことがらを理解するのに適しています。出版社のWebサイトからバックナンバーとして購入できます。 (★★★★)
  • 石田 光史, 樋口 広芳(ナツメ社): ぱっと見わけ観察を楽しむ 野鳥図鑑

    石田 光史, 樋口 広芳(ナツメ社): ぱっと見わけ観察を楽しむ 野鳥図鑑
    野鳥図鑑はすでに何冊も持っていますが、この野鳥図鑑は、2015年の刊行で、なぜ今までこの存在に気づかなかったと反省するほど便利そうなもの。掲載されているのは324種ですが、それぞれの特徴や、見わけのポイントがパッとわかるようになっています。その鳥の生活型や生息地、食性や羽色、形態などのほか、雌雄、夏羽冬羽、幼鳥などで特徴が異なる場合は、それらについても説明されています。観察したい行動から、おもしろい生態、探し方までもが載っていますし、鳥の鳴き声が聴けるQRコードも付いています。私自身、野鳥の特定がけっこうアヤシいので、しっかり活用しましょう。 (★★★★★)

  • 千枝大志(風媒社): 街道今昔 三重の街道をゆく (爽BOOKS)

    千枝大志(風媒社): 街道今昔 三重の街道をゆく (爽BOOKS)
    「東海の街道」シリーズの第4巻です。「街道歩きのお供に最適の1冊」といううたい文句。内容は、三重の主な街道、近世三重の城郭図・城下図を読み解く、お伊勢参り小咄、伊勢をめぐる〈参詣〉をデジタル化するの4章構成で、まさに三重の街道歩きの参考書としてよいと思います。私自身も県内の東海道、伊勢街道、美濃街道、濃州街道はほとんど歩き、ほかの街道も部分的に歩いていますし、城もここに載っているところはかなり訪ねています。デジタル化も、ブログに写真・記事を載せていますから、出来不出来はともかく、私も取り組んでいます。県内の街道はさらに歩こうと思っていますし、デジタル化にももっと取り組みたいと考えていますので、十分活用できるでしょう。 (★★★★★)

  • 唐沢孝一: 都会の鳥の生態学 カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰 (中公新書)

    唐沢孝一: 都会の鳥の生態学 カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰 (中公新書)
    都市にもたくさんの野鳥がいることを知る人は少ないかも知れません。私がいつも散歩している地方都市の公園では、これまで10年あまりで70種類近くの野鳥を観察しています。都会は自然の少ない人工的な環境にあふれていますが、野鳥たちはもともとの生態を活かしつつこれらにしたたかに適応してい生きています。この本では、カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽を取り上げ、その都会における生態や、活動の変化、人間と鳥との関係とその変化などについて多くの実例や、調査結果をもとに、豊富な写真を使って楽しく読めるようにまとめられています。 (★★★★★)

  • 堤未果: 堤未果のショック・ドクトリン 政府のやりたい放題から身を守る方法 (幻冬舎新書)

    堤未果: 堤未果のショック・ドクトリン 政府のやりたい放題から身を守る方法 (幻冬舎新書)
    「ショックドクトリン」とは、テロや大災害など、恐怖でこくみんが思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさ紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことです。アメリカでの3.11以来、日本でも大地震やコロナ禍の裏で知らない間に個人情報や資産が奪われようとしているというのがこの本のテーマ。パンデミックで製薬企業は空前の利益を得、マイナンバーカード普及の先には政府のよからぬ思惑があるなどよくよく注意し、自分の生命・財産を守らないといけないというのが著者の主張。「今だけ、自分だけ、お金だけ」という強欲資本主義に負けないようにするには、ちょっとした違和感を大事にし、お金の流れがその裏にないか、また、それで大もうけして回転ドアをくぐって逃げる輩がいないかをチェックすることです。また、政府が何か、大急ぎで導入しようとしたり、既存の制度を急拡大しようとするときは、要注意だそうです。 (★★★★)

  •  奥山景布子: 葵の残葉 (文春文庫)

    奥山景布子: 葵の残葉 (文春文庫)
    いわゆる「高須四兄弟」である徳川慶勝、松平容保、松平定敬、徳川茂栄は、幕末維新の激動期に、結局のところ官軍と幕府とに分かれて戦う運命になったのですが、この四兄弟を取り上げて埋もれた歴史を活写した小説。私自身は、桑名藩主であった松平定敬が取り上げられているので興味を持って手に取った次第。幕末維新は、次々に色々な出来事が起きて、さまざまな人たちの思惑も複雑に入り組んでいるので、小説にするのは難しいと思っていたのですが、隠れた主人公ともいえる高須四兄弟の視点からとても躍動感のある読み物になっています。また、この時期の歴史をより一層深く理解できたという感想も持っています。 (★★★★)