お知らせ

  • データの移行について
    2005年10月26日のブログ開始当初から、2024年4月30日までの記事は、「猫の欠伸研究室(アーカイブ)」に移行しました(http://blog.livedoor.jp/taichimaru151/)。 このココログの「猫の欠伸研究室」には、2019年1月以降の記事を残し、2018年12月以前の記事は削除しました(2019年1月1日から2024年4月30日までの記事は、両方にあります)。

レンズを通した自然観察

  • この「レンズを通した自然観察」ということばは、恩師のお一人が、私の趣味を形容しておっしゃったものです。2023年2月7日のブログに書きましたが、実はときどき思い出していることばです。お世話になった先生方はたくさんいらっしゃいますが、この恩師は、就職のことから学位論文の執筆、審査に至るまで本当にお世話になった先生です。「写真の撮り方を指南してもらいたい」ともおっしゃったのですが、これはお世辞と理解しています。私はほぼ隠居状態となって10年以上になりますが、今、改めてこのことばをかみしめています。この先生には結婚式の際に「理論と臨床をつなぐ仕事をするように」ということばをいただきました。体調を崩してそれには十分に応えられませんでしたので、せめてこの「レンズを通した自然観察」については、極めるとまでは行かないにしても、もう少し精進したいと考えています。

ブログ名の由来

  • ブログ名の「猫の欠伸研究室」は、中日新聞の夕刊に連載されている「紙つぶて」というコラム(平成22(2010)年1月13日)に、元新党さきがけ代表の武村正義さんが書いていらっしゃった「人生は猫の欠伸である」というコラムによります。武村さんは、“チベットで鳥葬を取り仕切る僧侶が、「人の生涯は猫の欠伸のようなもの」と語った”と書いていらっしゃいます。「猫の欠伸のようなもの研究室」としたかったのですが、ちょっと間延びしますので、「猫の欠伸研究室」とした次第です。「研究室」とつけたのは、過去、大学に勤めていたことがあるということやら、知らないこと、分からないことがあると何でも調べずにはいられない性分であること、屁理屈、講釈が大好きであることからであります。しかし、「人生の研究をしている」のではありません。「大所高所」からのご高説を開陳できるほどの力量はないが故、「小所低所」からの戯れ言をつぶやくのが精一杯(苦笑)。身の程に合わせ、勝手なことを書き綴っていますので、御用とお急ぎでない皆様には、今後ともご交誼のほど、お願いいたします。是非ともコメントを頂戴し、少しでも世間を広げたいと熱望しております。

モットー

  • 座右の銘というほど立派なものはありませんが、過去に体調を崩し、療養生活を送った経験から、私なりのモットーをつくっています。その一つは、「淡々と飽きもせず……」です。自分では、「……」と余韻を残しているところが気に入っています。こだわりすぎや、やり過ぎはよくありません。若い頃はムキになってやったこともありますが、今はこのように「淡々と飽きもせず……」が自分に合っていると思っています。もう一つは「晴耕雨読」ならぬ「晴歩雨読」です。マンション暮らし故、耕すところはありません。代わりに歩いています。そして、最近(令和3(2021)年に入った頃から)追加したのが、「散歩生活、ときどき仕事」。NHKのテレビ番組に「晴れ、ときどきファーム!」というものがあります。これのもじり。浅学非才の身ですので、ご交誼の上、いろいろとご教示をお願いします。

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2022年5月14日 (土)

20220507東海道ウォーキング「亀山宿~関宿」(その4)……念願の関宿はおもしろい(完)

Kameyama3  5月7日の東海道ウォーキング「亀山宿~関宿」の本編その4です。その3では念願の関宿に入りましたが、途中の延命寺山門までとなっています。

Img_1985c_20220513160801 Img_1988c_20220513161401  延命寺から東海道に戻り、スタートから8㎞の手前に見どころが集まっています。まずは、関まちなみ資料館。江戸時代末期に建てられた関宿を代表する町屋建築のひとつです(旧別所家)。亀山市関町の文化財・歴史資料の展示・町並み保存事業による、関宿の町並みの移り変わりを写真展示しています。

Img_1996c_20220513160801 Img_2006c  ここで見たもののうち、興味のあるものをいくつか。左の写真は、明治10年代(1877~1886年)につくられた自転車。自転車がステータスシンボルであった頃で、かけそばが1銭8厘のとき、自転車1台が150~250円と高価でした。しかし、このサドルの位置、ちょっと前過ぎるような気がします。右の写真は、長火鉢。時代劇などにもよく出て来ます。中央の丸いところで酒の燗がつけられます。

Img_2018c_20220513162601  階段箪笥と、その奥は薬箪笥。この階段箪笥を登って2階に行きます。薬箪笥は、医者や薬屋が使ったもので、薬剤を入れるための引き出しがたくさんついており、百味箪笥や百目箪笥と呼ばれる場合もあるそうでます。

Img_2014c_20220513160901  2階には、有栖川宮親王が明治初期に関宿に泊まられたときの宿札が保存されていました。この有栖川宮親王は、有栖川宮熾仁親王(天保6(1835)~明治28(1895)年)かと思ったのですが、確認は取れませんでした。

Img_2020c_20220513171301  関まちなみ資料館の向かいに鶴屋。玉屋、会津屋とともに関を代表する旅籠の1つ。「関で泊まるなら鶴屋か玉屋、まだも泊まるなら会津屋か」という、伊勢参りの旅人などが歌ったとされる歌があるそうです。江戸時代の終わりには、脇本陣も務めた波多野家。脇本陣ですから、本陣に準ずる宿で、主に身分の高い商人たちの宿泊の用を勤めましたが、平素は一般庶民も泊まれました。鶴屋は、西尾吉兵衛を名乗っていましたから、西尾脇本陣ともいったそうです。2階に千鳥破風を載せた独特のデザインになっており、その格式を示しています。

Img_2025c_20220513172201 Img_2030c_20220513172201  中町三番町山車庫。その3で書きましたように、現在は4台の山車が残っていますので、山車庫も4ヶ所あります。また、ここは、問屋場跡でもあります。この西に川北本陣跡があります。現在ここには遺構はありません。その3で見てきた延命寺に、川北本陣の門が移築されているだけです。川北家は、本陣ととともに宿継ぎ問屋を勤めていたそうで、今も450点余りの古文書・古記録が伝えられているといいます(こちら)。

Img_2034c_20220513172201 Img_2048c_20220513172301  その向かいに百六里庭(ひゃくろくりてい)・眺関亭(ちょうかんてい)があります。小公園になっています。関宿が江戸から百六里あまりにあることから名付けられました。通りに面した建物は、眺関亭。

Img_2037c_20220507193101 Img_2044c  眺関亭の2階に上がると、こんな景色が眺められます。まさに「関を眺める」亭。西を見ると(左の写真)、瓦屋根の間に通る東海道とその突き当りにある地蔵院本堂の大屋根、さらには鈴鹿峠の方を、また、東を見ると(右の写真)、軒の並ぶ関宿のまちなみを望むことができます。展望台から西を見た様子は、関宿の成り立ちが現れた関宿の最も特徴的な景観だそうです。

Img_2053c_20220513173901  百六里庭・眺関亭の西には、伊藤本陣跡。川北本陣と並んで関宿の中心的な役割を果たしました。間口11軒あまり、建坪69坪、西隣の表門は唐破風造りの檜皮葺だったそうです。現在残っている街道に面した部分は家族の住居と、大名宿泊時に道具置き場に供した建物です。木造2階建、切妻、桟瓦葺、平入、開口部が格子窓で2階外壁両側には袖壁が設けられ、2階の外壁が前に張り出す「せがい造り」になっています。

Img_2083c_20220507193101  続いて、関宿旅籠玉屋歴史資料館。鶴屋のところに書きましたように、関を代表する旅籠の1つ。江戸時代の貴重な旅籠建築を修復し、旅籠で使われていた道具や歴史資料が展示してあります。宝珠の玉をかたどった虫籠(むしこ)窓が魅力的。この虫籠窓は、屋号にちなんで、宝珠の玉(玉から火焔があがる様)をかたどったものとなっているのだそうです。

Img_2080c_20220513174301  ここの裏手にある土蔵には、本物のというか、実物の歌川広重の浮世絵などが展示されていました。「行書版 東海道五十三次 関宿」などなど。もちろん写真は撮れませんので、土蔵の外観だけ。

Img_2065c_20220513174301 Img_2059c_20220513174301  その他、興味があったものについて。左の写真は、主屋1階の帳場。ちょんまげを結った初老の男性が、帳場に座っています。番頭さんでしょうか。手前の上がり口には、足を濯ぐための水を入れる盥と、草鞋も見えています。右の写真は、資料館の入り口にあった駕籠。一般庶民が乗った駕籠と思われますが、これでエッサエッサエッサホイサッサと揺られたら、乗り心地はよくないというか、結構大変そうです。

Img_2062c_20220513174301  これについては知りませんでしたが、江戸時代の関宿の名物・特産品として火縄がありました。火縄は火奴ともいい、鉄砲に用いたため大名の御用があったほか、道中の旅人が煙草などに使うためにも購入したそうです。新所を中心に数十軒の火縄屋がありました。 火縄は自生する竹を薄くへぐように削り、これを縄を編むように作ったといいます。

Img_2092c_20220507193101 1651900657728c  続いては、深川屋。創業約380年。江戸幕府3代将軍・家光の時代から続くそうですし、「忍びの隠れ蓑」だとも。江戸時代寛永年間より作り続けられている「関の戸」は、忍者の末裔 服部伊予保重により考案されたお餅菓子だそうです。令和元(2019)年、ここ深川屋に残る古文書から当時の忍びの記述が発見されたため、忍びの隠れ蓑の和菓子屋としています。ここで、土産に関の戸を買おうという算段。先日、三重県総合博物館で「第30回企画展 名所発見、再発見!~浮世絵でめぐる三重の魅力~」を見たときにも買ってきました(2022年5月 4日:イソヒヨドリに何度も遭遇……午後からはMieMUで「名所発見、再発見!~浮世絵でめぐる三重の魅力~」を見る)が、ずっと昔から私の好物なのです。赤小豆の漉し餡をぎゅうひ餅で包んであります。伝統的な和三盆をまぶしたものと、石臼でひいた亀山茶をまぶしたもの、6個ずつのセットをお買い上げ。

Img_2100c Img_2104c_20220507193101  土産もゲットし、一安心(微笑)。関郵便局のところへ。郵便局の敷地は、天正20(1592)年、家康が休憩したので、御茶屋御殿屋敷と呼ばれ、幕府代官陣屋、亀山藩役人詰所となっています。高札場もここにありました。亀山藩が管理した高札場跡で、キリシタン禁令などの法規的な内容から隣接宿場までの人馬駄賃の規定、生活に関わる様々な張り出しが行なわれた場所です。明治10(1877)年に撤去されましたが、江戸時代後期、寛政年間から天保年間頃の高札場が復元されています。掲示されている文言は、天保年間(1831〜1845年)の調査と推測される『東海道宿村大概帳』に記された内容を読みやすい楷書に変えたものです。

Img_2096c_20220507193101  ポストが、宿場の雰囲気に合わせてつくられていますし、敷地内に「関町道路元標」があります。標石は一辺27㎝、地上高57㎝で頭は丸みを帯びています。「関町道路元標」と刻字があります。

Img_2158c_20220513193501 Img_2145c_20220513193501  この先で天台真盛宗の福蔵寺。ここは、織田信長の三男織田信孝の菩提寺であり、また、関の小萬の墓があります。さらに、英照皇太后が駐泊されたところ。

Img_2155c_20220513193501  織田信孝は、本能寺の変で亡くなった信長の冥福を祈るため、神戸の住人にして旧臣出会った大塚俄左衛門長政に命じてこの寺の建立にかかったのですが、信孝は秀吉との後継争いに敗れ、天正11(1583)年、尾張国野間において、自害させられました。長政が当山に首を持参し信孝公の菩提寺としました。信孝の墓石は不詳であったので、400年忌を迎えたとき、菩提を弔うために建立されたのが、この写真の墓。

Img_2136c_20220513193501  こちらは、関の小萬の碑と、墓。裏門の横にあります。関の小萬については、その3で触れたとおり、若くして父の敵を討った烈女として伝えられています。15歳から風雪にもめげず、亀山の道場に通って修行に努め、武を練り、天明3(1783)年8月、本懐を遂げました。また、客殿の奥には英照皇太后孝明天皇の后)が宿泊された書院が現存するそうです(非公開)。

Img_2165c_20220514031901  関宿もかなり見て回ってきました。このあと地蔵院へ行くつもりでしたが、その前にもう1ヶ所見なくてはなりません。それは、会津屋です。関宿を代表する旅籠の1つで、もとは、山田屋といいました。関の小萬が育ったのがここです。江戸後期に建てられました。今は、食事処。

Img_2162c_20220507193201 Img_2174c_20220514031901  関宿は西の追分まで続きますが、今回の最終目的地は、九関山宝造寺関地蔵院です。関の地蔵さんと呼ばれます。天平13(741)年、奈良東大寺の僧行基が、諸国に流行した天然痘から人々を救うため、この地に地蔵菩薩を安置したと伝えられています。この地蔵菩薩は、わが国最古のものです。「せきの地蔵さんに振袖きせて奈良の大仏むこに取る」という俗謡があるほど、関に暮らす人々に加え、東海道を旅する人々の信仰も集め、全国の数あるお地蔵様の中でも最も敬愛されているといわれています。本堂、鐘楼、愛染堂の3棟の建物は国の重要文化財に指定されています。聖武天皇の勅願所、明治天皇関行在所でもあります。明治天皇は関町には5回来られ、明治13(1880)年7月10日、12日の2回、地蔵院で食事休憩されました。この明治13(1880)年7月11・12日には、亀山で大阪鎮台名古屋鎮台の合同演習が行われ、それを明治天皇がご覧になっています。ちなみに、7月11日には、亀山の東町にある伊藤市治郎宅に宿泊されました。この時、明治天皇が宿泊された建物は、現在、亀山城多門櫓の隣りに移築され、明治天皇行在所遺構として残っています。ここは、前回の「井田川~亀山ウォーク」で訪ねたところ(2022年4月23日:20220423東海道ウォーク「井田川~亀山」(予告編))。

Img_2178c_20220514033501 Img_2171c_20220514033501  左の写真は鐘楼、右は愛染堂。鐘楼の脇に上右の写真に載せた「明治天皇関行在所」の石柱があります。ここにはまた、一休禅師の逸話も伝わっています。関東行脚の時、関宿を通りかかった一休和尚に修繕をした地蔵の開眼供養をしてほしいと村人たちが、頼んだところ快く引き受けてくれたのですが、一休和尚は「釈迦はすぎ 弥勒はいまだ いでぬ間の かかるうき世に 目あかしめ地蔵」と詠み、立小便をして立ち去ってしまったそうです。怒った村人たちは別の僧に開眼供養をやり直してもらいましたが、その晩、高熱を出したある村人の夢枕に地蔵が立ち、供養を元のようにせよと命じたといいます。あわてて桑名の宿にいた一休和尚に助けを求めると、地蔵の首にかけるようにと古びた下帯を手渡され、言われたとおりにしたところ、高熱は下がったそうです(寛政9(1797)年に発行された『東海道名所図会』にかかれている話)。

Img_2196c_20220514032001  関地蔵院で14時。途中亀山の清福寺で1度、20分くらい休憩して、おやつを食べただけで、ここまで歩き続けてきました。このあと昼食。国道1号線から関駅あたりに行けば、食べるところがあるだろうと思ってそちらへ。地蔵院口の交差点のところに関地蔵堂への道標(関地蔵堂エ 二町)と、「街道 おんな唄」の石碑。鈴鹿馬子唄の一節などが刻まれています。

Img_2202c_20220507193202 Dsc_6434c  JR関西線・関駅の近くに道の駅関宿があります。ここなら何か食べられるだろうということで立ち寄ったら、定食屋みくらという店がありました。冷やし海老おろしうどんをチョイス。¥840。

Img_2214c_20220507193201 Img_2242c_20220507193201  JR関西線・関駅には、14時45分頃にゴールイン。9.3㎞を歩きました。ここは、JR西日本のエリア。亀山までは1駅なのですが、この時間帯には1時間に1本のみ。しかも非電化区間。右の写真のように1両のディーゼルカーが走っています。

Img_2258c_20220507193201 Img_2266c_20220507193301  14時59分発の亀山行きに乗車。亀山には15時5分着。ここでJR東海の関西線に乗り換え。15時26分の名古屋行き快速。ただし、快速になるのは、四日市から。桑名には、16時6分着。料金は、通しで¥770。9.3㎞も歩き、また、暑かったのでそれなりに疲れました。しかし、この日は、念願の関宿を訪ねられましたので、心地よい疲労感でした。歩数は、22,266歩。現地で9.3㎞、自宅から桑名駅往復が2.4㎞で、計11.7㎞。

Img_1567c_20220514041001 Img_2193c_20220514032001  オマケ。マンホールの蓋コレクション。左の写真は、亀山市のもの。右は、旧関町のもの(現在は、亀山市と合併して、亀山市関町になっています)。亀山のものは、多門櫓に花菖蒲の花の絵柄になっています。旧関町のものは、関宿の町並みにお地蔵様が立っているデザイン。

Sekistampc Kameyamastampc  もう1つオマケ。スタンプです。自作コースマップの裏に押してきましたので、それが透けてしまっていますが、ご愛敬。左は、亀山の加藤家屋敷、旧舘家住宅、旧佐野家でゲット。右は、関宿にある3つの資料館(関の山車会館、関まちなみ資料館、関宿旅籠玉屋歴史資料館)のもの。これにて「亀山宿~関宿」の東海道ウォーキングは、「完」。

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  • 磯田 道史: 磯田道史と日本史を語ろう (文春新書)

    磯田 道史: 磯田道史と日本史を語ろう (文春新書)
    磯田道史さんが、さまざまな分野の達人と歴史についての論賛をしたのをまとめた本です。論纂とは、①人の徳行や業績などを論じたたえること、②史伝の終わりに著者が書き記した史実に対する論評のこと。異分野の専門家同士が議論をすることによって生まれるものは、別次元となり、大変興味深いものとなります。この本がその論より証拠。養老孟司さんとの論賛からは「脳化社会は江戸時代から始まった」という話が出て来ています。忠、孝、身分などは、シンボリズムであり、それらは見たり、触れたりできません。また、関東大震災に遭遇したことは、被害に対する鈍感さをもたらし、それが太平洋戦争につながったという指摘には、なるほどそういう面も確かにありそうだと思わされました。その他、歴史や人間について、実にさまざまな、新しい見方が示され、大変おもしろく読み終えました。 (★★★★★)

  • 保阪 正康: 近代日本の地下水脈 I 哲学なき軍事国家の悲劇 (文春新書 1440)

    保阪 正康: 近代日本の地下水脈 I 哲学なき軍事国家の悲劇 (文春新書 1440)
    本の帯に「『水脈史観』で日本の失敗を読み解く」とあります。「水脈史観」という概念には初めて接しましたが、「攘夷のエネルギーは、いまも日本社会の根底に流れている」という見方です。明治維新後、日本がとりえた国家像は、欧米型帝国主義国家、道義的帝国主義国家、自由民権国家、米国型連邦制国家、攘夷を貫く小日本国家の5つであったが、哲学なきまま欧米型帝国主義国家の道を突き進み、軍事中心の国家作りを推し進めたことが、戦前の日本の失敗の原因であったというのが著者の主張です。それは確かにそうだと思いますが、私には、ほんのサブタイトルにある「哲学なき国家」ということが、現代日本の様々な問題の背景にあるような気がしてなりません。 (★★★★)

  • 佐伯 泰英: 陰流苗木(かげりゅうなえき)~芋洗河岸(1)~ (光文社文庫)

    佐伯 泰英: 陰流苗木(かげりゅうなえき)~芋洗河岸(1)~ (光文社文庫)
    今回も特別に時代小説を取り上げます。この2つ前の本に佐伯泰英さんの「恋か隠居か 新・酔いどれ小籐次(二十六)」を取り上げ、これは佐伯さんの300冊目の「文庫書き下ろし小説」だと書きました。今回のこの本は、301冊目です。しかも、80歳を越えて、さらに新しいシリーズを始められたのです。美濃を食い詰めた浪人・小此木善治郎が、職なし、金なし、住むあてなしながら、剣の達人にしてとぼけた侍であるものの、なんとも頼りになる存在で、親切な住人や大家によって受け入れられた長屋の秘密と謎の渦に巻き込まれるという設定。これまたおもしろそうなシリーズです。毎月刊行で、全3巻の予定とか。第2巻が待ち遠しい内容です。 (★★★★★)

  • 養老孟司, 鵜飼哲夫: なるようになる。 僕はこんなふうに生きてきた(中央公論新社)

    養老孟司, 鵜飼哲夫: なるようになる。 僕はこんなふうに生きてきた(中央公論新社)
    養老先生の新刊が出たというので早速入手し、ほぼ一気に読み終えました。「はじめての自伝!」といううたい文句で、帯には「虫と猫と、バカの壁。考え続けた86年」ともあります。養老先生は、かなりしつこい性格でいらっしゃるようで、疑問に思ったことは「まぁいいか」などと思わず、考え続けてこられたそうです。その結果が、これまでのユニークな著作に結実しています。それはさておき、考え続けた結果、「なるようになる。」というのが、養老先生の現時点での結論だそうです。「なるようにしかならない」ではなく、「なるようになる。」のです。物事は、はっきりとした目的意識があって進むのではないので、「なるようになる。」なのです。忘れてしまったような些事がその後の人生を動かしてきたかもしれないともあります。なるほどと、この本を読み、養老先生の来し方をいささか知ると、納得できます。というか、納得した気になっているだけかも知れませんが…… (★★★★★)

  • 佐伯 泰英: 恋か隠居か 新・酔いどれ小籐次(二十六) (文春文庫)

    佐伯 泰英: 恋か隠居か 新・酔いどれ小籐次(二十六) (文春文庫)
    佐伯泰英さんは、この本で「文庫書き下ろし小説」というジャンルで300冊刊行を達成されました。佐伯さんの時代小説はすべて読んでいます。まさにストーリー・テラーといえる作家で、実に読み応えのある時代小説をたくさん書いておられます。このシリーズは、いったん完結となったかと思ったのですが、この「恋か隠居か」で復活しました(と理解しています)。隠居を考える小籐次ですが、小籐次親子に挑戦状が届くところから始まる物語。今回も楽しめました。 (★★★★★)

  • 安藤優一郎: 15の街道からよむ日本史 (日経ビジネス人文庫)

    安藤優一郎: 15の街道からよむ日本史 (日経ビジネス人文庫)
    街道歩きを少ししています。三重県内では、東海道のほとんど、伊勢参宮街道、美濃街道・養老街道などを歩きました。もっとあちこちの街道を歩きたいと思っていますが、そのときにこの本が出版されましたので、早速入手して読みました。芭蕉の奥州街道、伊勢参宮街道のお伊勢参り、武士の旅日記などの章をとくに興味深く読みました。主要な街道を取り上げることで読みやすい歴史物語となっています。 (★★★★)

  • 大芦治: 心理学をつくった実験30 (ちくま新書)

    大芦治: 心理学をつくった実験30 (ちくま新書)
    「誰もが一度は耳にしたことがある有名実験の背景・内容・影響を紹介、新たな心理学像を呈示する」と帯にあります。心理学全般に関心を持つ社会人を読者に想定しているといいますが、私には心理学史のテキストとして、あるいは、入門段階の心理学を学んだ方がさらに学習を深める際に読む本としてもよいかも知れません。 私自身も、心理学の教科書を執筆したことが何度かありますが、そこに引用する理論や実験については、いわゆる「孫引き」をしてしまったこともよくありました。この本の著者は、可能な限り原典にあたって執筆していらっしゃり、その意味では参考になったところが多々あります。 ところで、著者は心理学の未来にあまり明るい展望を持てないようです。臨床心理士、公認心理師の資格が人気を集め、心理学部などもたくさん設けられました。私自身の勝手な個人的意見を書けば、資格ができると、レベルは下がると思っています。根拠はありません。個人的な印象によるものです。私は実験心理学でトレーニングを受け、臨床心理の分野に進みました。心理学の基本は実験心理学と個人差測定心理学にあると思っています。学部段階からいきなり臨床心理学プロパーに進むのは、相当よろしくないと思います。臨床実践にあたってはその基礎となる確かな、科学的な学問(知見、理論なども含む)が必要です。また、仮説演繹法などのものの見方もきちんと身に付ける必要があります。これらは実験心理学と個人差測定心理学から養われると思っています。 この本は、基礎的知識がない方がいきなり読むのは難しいでしょうが、科学的心理学を学びたいと思う方にはよい参考書となります。 (★★★★)

  • 磯田 道史: 家康の誤算 「神君の仕組み」の創造と崩壊 (PHP新書)

    磯田 道史: 家康の誤算 「神君の仕組み」の創造と崩壊 (PHP新書)
    磯田先生の書く本はどれもとても面白く読めます。といっても、私が読むのは研究書ではなく、新書だからなのかも知れません。この本は、家康がなぜ幕藩体制を創ることができたのか、江戸時代、誰が神君の仕組みを崩わしたのか、幕末、かくして神君の仕組みは崩壊した、神君の仕組みを破壊した人々が創った近代日本とは、家康から考える日本人というものという5つの章からなっています。家康は天下を取ったあとこの国を支配するのに巧妙な仕掛けをつくり、平和な時代が続いたのですが、誤算が生じて、徳川政権が変質し、崩壊に至ったと著者は考え、そのプロセスを俯瞰しています。いろいろな時点で「神君の仕組み」を骨抜きにする人物や政策が表れたといいます。組織が弱体化する姿を見ておくと、自分たちの劣化を防ぐ力が養われると磯田先生は述べています。徳川時代が現在にあたえている影響も多く、その分析も興味深く読めます。 (★★★★★)

  • 多井 学: 大学教授こそこそ日記

    多井 学: 大学教授こそこそ日記
    文庫本を買いに本屋に行ったら、平積みしてあるのを見つけて思わず買ってしまいました。私もその昔、ご同業だったことがあったからです。帯に「いくらでも手抜きのできる仕事」とありますが、私の経験でもそういう人もそれなりにいました。ちなみに私自身は、こき使われたと思っています。さらに「現役教授が打ち明けるちっとも優雅じゃない生活」とも書かれていますが、これはまさに私の体験と同じ。本に書かれていることがらも、ことごとく納得できます。私は、「そうそう!」といいながら読み終えました。大学教授で儲けている人はごく一部などなど。まぁ大学教授の仕事や生活に興味をお持ちの方は、さほど多くはいらっしゃらないとは思いますが、お暇な方にはどうぞ。 (★★★★)

  • 宮口 幸治: 境界知能の子どもたち 「IQ70以上85未満」の生きづらさ (SB新書)

    宮口 幸治: 境界知能の子どもたち 「IQ70以上85未満」の生きづらさ (SB新書)
    「境界知能」という言葉は、専門家はよく知っていると思いますが、一般のご父兄や、小中学校の先生方にはあまりなじみがないかも知れません。IQという指標でいえば、多くの場合70以上85未満の子どもたちがこれに該当する可能性があります。一見したところでは普通の子どもたちと変わりはなく、なかなか気づかれません。しかし、理論的には約14%の子どもたちが含まれますから、本の帯にあるように「日本人の7人に1人」となります。平均と知的障害のはざまにあり、気づかれにくいものの、授業について行けなかったり、友だちと上手くつきあえなかったり、感情のコントロールが苦手であったりして、当事者の子どもたちは苦戦し、辛い思いをしています。発達障害はよく知られるようになりましたが、境界知能の子どもたちにもしっかり目を向け、必要な支援を提供することは喫緊の課題といえます。この本では、境界知能とはどのような状態なのか、教科学習の前に認知機能を向上することの重要性、子どもの可能性をいかに伸ばしたら良いかについて具体的に、分かりやすく解説されています。 (★★★★)

  • 関裕二: スサノヲの正体(新潮新書)

    関裕二: スサノヲの正体(新潮新書)
    タイトルに惹かれて手に入れたものの、序章の記述が私にとっては退屈でしばらく放っておいたり、読み直そうと思ってくじけたりしていました。しかし、そこを乗り越えるとこの本はとても面白くなり、ほとんど一気読みしました。スサノヲ(素戔嗚尊)の正体を探るプロセスでアマテラス(天照大神)の謎も明らかにされて行き、それもとても興味深いものがあるのです。アマテラスは皇祖神とされますが、実在の初代王と言われる崇神天皇はアマテラスを伊勢に追いやっています。また、伊勢神宮を整備した持統天皇だけは伊勢に参ったものの、それ以降明治になるまで、1,000年以上も歴代天皇は伊勢神宮を訪れていません。明治天皇が東京に遷御したあと武蔵国の鎮守勅祭の社に定めたのは、スサノヲの祀られる氷川神社(現さいたま市)です。明治天皇は氷川神社を訪れた翌年に、伊勢神宮を訪れています。そもそも伊勢にいる神はアマテラスなのかという疑問にも立ち向かっている、古代史や神に関心がある方にはお勧め。 (★★★★★)

  • 安藤 優一郎: 大名屋敷「謎」の生活 (PHP文庫)

    安藤 優一郎: 大名屋敷「謎」の生活 (PHP文庫)
    時代小説をよく読みます。捕物帖、市井の人たちの生活、侍の物語、大名の話などいろいろとあります。庶民の生活については、これまでもいろいろな本でかなり知っていますが、大名の生活については分からないところの方が多いと思っていました。タイトルに惹かれて買ったのですが、大名やその家族の生活が詳しく書かれているのではなく、勤番侍の生活、大名屋敷の庭園、御用達商人や豪農、幕末の動乱と大名屋敷などの話が中心でした。それはそれで知らなかったことが多々あり、興味深く読みました。 (★★★)

  • 服部環ほか: 指導と評価2023年10月号(図書文化社)
    「指導と評価」は、日本教育評価研究会の機関誌であるとともに、日本で数少ない教育評価に関する月刊誌です。この号では、教育・心理検査の意義と活用という特集が組まれています。「教育・心理検査の意義」に始まり、WISC-Ⅴ、KABC-Ⅱなどの個別検査の使い方、解釈の仕方、指導への活かし方がそれぞれの専門の先生によってわかりやすく解説されています。特別支援教育の現場でも、きちんとした心理アセスメント所見に基づいた支援を展開することが望ましいのですが、現場の先生方には敷居が高いようです。ご関心がおありの方には、どのように使えるか、どのように考えたらよいかについて基本的なことがらを理解するのに適しています。出版社のWebサイトからバックナンバーとして購入できます。 (★★★★)
  • 石田 光史, 樋口 広芳(ナツメ社): ぱっと見わけ観察を楽しむ 野鳥図鑑

    石田 光史, 樋口 広芳(ナツメ社): ぱっと見わけ観察を楽しむ 野鳥図鑑
    野鳥図鑑はすでに何冊も持っていますが、この野鳥図鑑は、2015年の刊行で、なぜ今までこの存在に気づかなかったと反省するほど便利そうなもの。掲載されているのは324種ですが、それぞれの特徴や、見わけのポイントがパッとわかるようになっています。その鳥の生活型や生息地、食性や羽色、形態などのほか、雌雄、夏羽冬羽、幼鳥などで特徴が異なる場合は、それらについても説明されています。観察したい行動から、おもしろい生態、探し方までもが載っていますし、鳥の鳴き声が聴けるQRコードも付いています。私自身、野鳥の特定がけっこうアヤシいので、しっかり活用しましょう。 (★★★★★)

  • 千枝大志(風媒社): 街道今昔 三重の街道をゆく (爽BOOKS)

    千枝大志(風媒社): 街道今昔 三重の街道をゆく (爽BOOKS)
    「東海の街道」シリーズの第4巻です。「街道歩きのお供に最適の1冊」といううたい文句。内容は、三重の主な街道、近世三重の城郭図・城下図を読み解く、お伊勢参り小咄、伊勢をめぐる〈参詣〉をデジタル化するの4章構成で、まさに三重の街道歩きの参考書としてよいと思います。私自身も県内の東海道、伊勢街道、美濃街道、濃州街道はほとんど歩き、ほかの街道も部分的に歩いていますし、城もここに載っているところはかなり訪ねています。デジタル化も、ブログに写真・記事を載せていますから、出来不出来はともかく、私も取り組んでいます。県内の街道はさらに歩こうと思っていますし、デジタル化にももっと取り組みたいと考えていますので、十分活用できるでしょう。 (★★★★★)

  • 唐沢孝一: 都会の鳥の生態学 カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰 (中公新書)

    唐沢孝一: 都会の鳥の生態学 カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰 (中公新書)
    都市にもたくさんの野鳥がいることを知る人は少ないかも知れません。私がいつも散歩している地方都市の公園では、これまで10年あまりで70種類近くの野鳥を観察しています。都会は自然の少ない人工的な環境にあふれていますが、野鳥たちはもともとの生態を活かしつつこれらにしたたかに適応してい生きています。この本では、カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽を取り上げ、その都会における生態や、活動の変化、人間と鳥との関係とその変化などについて多くの実例や、調査結果をもとに、豊富な写真を使って楽しく読めるようにまとめられています。 (★★★★★)

  • 堤未果: 堤未果のショック・ドクトリン 政府のやりたい放題から身を守る方法 (幻冬舎新書)

    堤未果: 堤未果のショック・ドクトリン 政府のやりたい放題から身を守る方法 (幻冬舎新書)
    「ショックドクトリン」とは、テロや大災害など、恐怖でこくみんが思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさ紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことです。アメリカでの3.11以来、日本でも大地震やコロナ禍の裏で知らない間に個人情報や資産が奪われようとしているというのがこの本のテーマ。パンデミックで製薬企業は空前の利益を得、マイナンバーカード普及の先には政府のよからぬ思惑があるなどよくよく注意し、自分の生命・財産を守らないといけないというのが著者の主張。「今だけ、自分だけ、お金だけ」という強欲資本主義に負けないようにするには、ちょっとした違和感を大事にし、お金の流れがその裏にないか、また、それで大もうけして回転ドアをくぐって逃げる輩がいないかをチェックすることです。また、政府が何か、大急ぎで導入しようとしたり、既存の制度を急拡大しようとするときは、要注意だそうです。 (★★★★)

  •  奥山景布子: 葵の残葉 (文春文庫)

    奥山景布子: 葵の残葉 (文春文庫)
    いわゆる「高須四兄弟」である徳川慶勝、松平容保、松平定敬、徳川茂栄は、幕末維新の激動期に、結局のところ官軍と幕府とに分かれて戦う運命になったのですが、この四兄弟を取り上げて埋もれた歴史を活写した小説。私自身は、桑名藩主であった松平定敬が取り上げられているので興味を持って手に取った次第。幕末維新は、次々に色々な出来事が起きて、さまざまな人たちの思惑も複雑に入り組んでいるので、小説にするのは難しいと思っていたのですが、隠れた主人公ともいえる高須四兄弟の視点からとても躍動感のある読み物になっています。また、この時期の歴史をより一層深く理解できたという感想も持っています。 (★★★★)

  • 國分功一郎: 暇と退屈の倫理学(新潮文庫)

    國分功一郎: 暇と退屈の倫理学(新潮文庫)
    ほぼ隠居状態ですから、暇と退屈には困りません(微笑)。それ故にこの本を手に取ったといっても、誤りではありません。著者がいうには、「暇」とは何か、人間はいつから「退屈」しているのだろうかといったなかなか答えにたどりつけない問いに立ち向かうとき、哲学が役に立つというのが著者のスタンス。哲学書なのに、読みやすいのです。スピノザ、ルソー、ニーチェ、ハイデッガーなど、その昔学生時代に取り組んで挫折した哲学者たちの論考を参照しつつ、現代の消費社会における気晴らしと退屈について鋭い指摘がされ、まさに蒙を啓かれます。 (★★★★)

  • 逸見功: 統計ソフト「R」超入門〈最新版〉 統計学とデータ処理の基礎が一度に身につく! (ブルーバックス)

    逸見功: 統計ソフト「R」超入門〈最新版〉 統計学とデータ処理の基礎が一度に身につく! (ブルーバックス)
    今さら、なぜこういう統計ソフトの本を読むのか? と訝られると思うのですが、その昔、現役の頃には統計パッケージソフトIBM SPSSを使ってデータを分析して論文を書いていました。ただ、SPSSを始め、統計パッケージソフトは、値段がバカ高いのです。退職する前からこのRというフリーの統計処理ソフトが出て来て、ずっと興味を持っていました。先日、文庫本を買おうと思って本屋に行ったらこの本を見つけてしまいました(微笑)。今さらこれを使ってバリバリやる訳ではありません。むしろボケ防止かも知れませんが、昔のデータはそのままパソコンにありますから、これを使って、昔はやらなかった分析をしてみようと思っています。何か成果が出るかどうかは極めてアヤシいのですが、まぁゆるりといろいろやってみることにします。 (★★★★)

  • 林(高木)朗子, 加藤忠史, 林(高木)朗子, 加藤忠史: 「心の病」の脳科学 なぜ生じるのか、どうすれば治るのか (ブルーバックス)

    林(高木)朗子, 加藤忠史, 林(高木)朗子, 加藤忠史: 「心の病」の脳科学 なぜ生じるのか、どうすれば治るのか (ブルーバックス)
    たまにはこういう本も読まないと、認知機能が退化するかもしれないと思って(微苦笑)。というよりも、もともと神経心理学に興味がありましたので、本屋の店頭で見つけ、これは面白そうだと思って購入しました。うつ、自閉スペクトラム障害、ADHD、統合失調症、双極性障害など、現代人を悩ませる心の病について、脳にどのような変化が起きているか、最新の知見がまとめられています。最前線の研究者たちがわかりやすく説明しているのですが、知識ゼロで読むのはかなりキツいかも知れません。私は現役をリタイアして10年以上になりますが、その間にこれほど研究が進んだのかというのが正直な感想。心の病の原因は、1つとは限りません。心の病は「症候群」と見た方がよいと考えます。私自身が関わる自閉スペクトラム障害、ADHDなどの発達障害でもそうです。脳機能と心の病との関連について最新の知見を知りたい方にはおすすめ。 (★★★★)

  • 磯田 道史: 徳川家康 弱者の戦略 (文春新書)

    磯田 道史: 徳川家康 弱者の戦略 (文春新書)
    本の帯に「大河より面白い!」とありますが、本当にそうでした。午前中の散歩のついでに買ってきて、夕食までに一気に読み終えてしまいました。もったいない気がするくらい。松平元康がいかにして徳川家康になったか、さらに徳川将軍家がいかに続くよう礎を築いたかが、よく分かりますし、戦国時代から徳川幕府創世記までの歴史を見る目が養われる本です。それというのも、著者の磯田さんが古文書の権威で、一次史料を読みこなすだけでなく、場合によっては価値が怪しい資料まで傍証に用いて(怪しい資料でも使い道があるというのも良く分かりました)、ご自身の頭で考えた結果を実に分かりやすく解いてくれてあります。徳川家康の弱者の戦略のキーワードは、「武威」と「信頼」ということです。また、情報の取得、解読にも意を尽くしたことがよく分かります。混迷を深める世界情勢を読み解いて、我が国が進む方向を考える上でも役に立つ一冊。 (★★★★★)

  • 井手 正和: 発達障害の人には世界がどう見えるのか (SB新書)

    井手 正和: 発達障害の人には世界がどう見えるのか (SB新書)
    発達障害、とくに自閉スペクトラム症(ASD)の方では、感覚過敏や感覚鈍磨をよく伴います。「照明で目がチカチカする」「皆が話している教室では。音が鳴り響き絶えられない」「ケガをしてるのに、痛みを感じない」などさまざまな状況を呈します。著者は実験心理学や、認知神経科学を専門とし、ASDの方に見られる感覚過敏、感覚鈍磨は、脳機能の特性から来ていることを明らかにしてきています。ASDなど発達障害のあるご本人はもちろん、親御さん、教師など関わりを持つ方々は、このことをよく理解して支援にあたることがとても重要です。ASDを始めとして発達障害について、「わがまま」「自分勝手」「やる気がない」などと捉えてしまうと、支援どころか、理解もできなくなります。脳の働きによってさまざまなことが生じてきているという視点が必要不可欠です。この本は、感覚過敏・感覚鈍磨を手がかりにそういう視点について理解を深められます。 (★★★★)

  • 日本放送協会,NHK出版: NHK 100分 de 名著 中井久夫スペシャル 2022年 12月 [雑誌] (NHKテキスト)

    日本放送協会,NHK出版: NHK 100分 de 名著 中井久夫スペシャル 2022年 12月 [雑誌] (NHKテキスト)
    2022年12月のNHKのEテレ「100分de名著 中井久夫スペシャル」のテキストです。今頃(2023年2月)これをリストアップしているのはどうかという気もしますが、録っておいたビデオをみたのが最近なのです。中井久夫さんは、2022年8月にお亡くりになりましたが、日本を代表する精神科医のお一人であり、翻訳家、文筆家としても一流でした。現役の頃、中井さんの本はたくさん読みました。臨床心理学の分野でも「風景構成法」を導入した方として知られています。Eテレの講師である齋藤環さんは、中井さんを評して「義と歓待と箴言知の人」と書いておられますが、まさにそういう気がします。『最終講義』『分裂病と人類』『治療文化論』『「昭和」を送る』『戦争と平和 ある観察』が紹介されています。現在もウクライナで戦争が続いていますが、中井は「戦争は過程、平和は状態」とし、戦争は物語として語りやすく、とにかくかっこよくて美しい、それが問題だといいます。一方、平和は分かりにくく、見えにくいため、心に訴える力が弱いとします。「状態を維持する努力はみえにくい」のですが、戦争と平和に限りません。普段通りの日常生活を維持していくのも同じような気がします。戦争を経験していない人間が指導者層の多くを占めるようになると戦争に対する心理的抵抗が低くなるともいいます。「戦争には自己収束性がない」とも中井さんはいっています。われわれはやっかいな時代に生きていると痛感します。中井さんの本を多くの方が読むと、時代も変わるかも知れません。 (★★★★★)

  • 桑名三郎: 七里の渡しを渡った人達(久波奈工房)
    桑名と名古屋の宮を結んだ東海道唯一の海路「七里の渡し」をテーマにした歴史本です。船頭が旅人を案内しながら、七里の渡しを渡った歴史上の24人を紹介する内容。やさしい話し言葉で紹介されており、読みやすい本です。徳川家光、松尾芭蕉、明治天皇などが取り上げられています。著者は、桑名で歴史案内人をしながら、街の歴史を研究している、街道好きの方です。本は、桑名市内の書店とメルカリで¥1,200で販売。 (★★★★)
  • 磯田 道史: 日本史を暴く-戦国の怪物から幕末の闇まで (中公新書 2729)

    磯田 道史: 日本史を暴く-戦国の怪物から幕末の闇まで (中公新書 2729)
    磯田さんの本は面白い。というのも、話のもとには古文書があるからだと思う。その古文書も磯田さん自身が、古書店などで発掘してきたものがほとんどで、それ故、内容もオリジナリティが高くなる。この本は、戦国時代から幕末あたりを中心にさまざまな古文書の内容をもとに、例えば忍者の悲惨な死に方、江戸でカブトムシが不人気だった背景、赤穂浪士が吉良の首で行った奇妙な儀式などなど、興味深いエピソードを浮かび上がらせている。面白いので一気読みしてしまった。 (★★★★★)