20220205東海道ウォーキング(日永の追分~加佐登)(その3)……石薬師宿に入り、北町地蔵堂、小澤本陣跡、佐佐木信綱記念館へ
2月5日に行ってきた「東海道ウォーキング(日永の追分~加佐登)」の本編その3です。その2では、杖衝坂を登り、采女一里塚跡を見て、鈴鹿市に入り、自由が丘で懐かしい店で昼食を済ませました。その3では、いよいよ石薬師宿に入っていきます。北町地蔵堂、大木神社鳥居、小澤本陣跡、天野記念館とまずは進んで行きます。
自由ヶ丘の先で国道1号線は南へ。旧東海道は、右(西)へ逸れて行きます。東海道が国道1号線から分かれたすぐ先には、「東海道 石薬師宿」の標柱や、東海道の案内板などがあります。また、ここ石薬師は、歌人・国文学者である佐佐木信綱の故郷。記念館もありますし、和歌で町おこしもされています。右の写真にあるように、「石薬師 信綱かるた道」が整備されています。1.8㎞の間に佐佐木信綱の短歌50首が掲示されています。
そのすぐ先に北町地蔵堂。延命地蔵が祀られています。交通安全と家内安全を祈願すると霊験あらたかと書いてありました。石薬師宿の北の入り口に、旅の安全を願って立てられたと思われます。現在も、この附近の16軒の方々が地蔵講を結成していて、掃除、供花の奉仕をしているそうです。毎年8月24日には、地蔵盆も開かれています。
6.6㎞地点に大木神社の鳥居があります。大木神社は、ここから西へ200mほど行ったところにあります。以前来た時もパスしてしまったのですが(2019年5月3日:20190420JRさわやかウォーキング「旧東海道 石薬師宿と鈴鹿「植木まつり」を訪ねて」へ(その1)……河曲駅をスタートし、田園地帯を抜け、石薬師宿へ、大木神社の鳥居、小澤本陣跡、天野記念館から佐佐木信綱記念館へ、土産とおやつをゲット)、今回もパス(苦笑)。神社のシイの森は、市の天然記念物で、一度は見たいと思いつつ、です。延喜式内社ですが、勧請の年代などは不詳。石薬師宿の鎮守の位置づけ。主祭神は、天照大神。
大木神社を過ぎた東側におもしろいものを見つけました。民家の庭先に写真のようなものが飾られていたのです。「東海道 石薬師宿」とありますが、これ何と焼き物でできています。向かって左手の大きなものは、広重の描いた東海道五十三次「石薬師宿 石薬師寺」(保栄堂版)を焼き物で再現したもの。これには驚きました。中央にある小さなものは、同じく「四日市宿 三重川」。
反対の南側には、石薬師宿の旅籠などの場所を描いた「軒並図」が、やはり焼き物でつくられていました。ブルーの三角形があるところがたぶんこのお宅。見ると、「旅籠 富野屋新兵衛」とあります。ということは、ここのお宅は江戸時代は、旅籠を営んでおられたということ。
駐在所を過ぎると右手(西側)に小澤本陣跡があります。現在は、町角博物館ともなっています。石薬師宿は、東海道五十三次の44番目の宿場ですが、宿場となったのは比較的新しく、元和2(1616)年です。幕命によって設立され、宿の名前は当時有名であった石薬師寺からとられています。小沢家が本陣を勤めたのですが、屋敷は現在よりも広かったようです。大名の名前が書かれた関札や、宿帳もたくさん残っているそうで、元禄の宿帳には、赤穂藩主・浅野内匠頭の名もあるそうですし、大岡越前守の名もあるといいます。徳川家光や、姫路城に行く千姫(家康の孫)も宿泊したとか。石薬師宿は、小高い台地にあり、小澤本陣の周りには高い松の木があったため、別名「松本陣」ともいわれたようです。
小澤本陣跡のすぐ先に天野記念館があります。ここは、本町集会所になっています。タイムレコーダーで名高いアマノ株式会社の創業者・天野修一(明治23(1890)~昭和51(1976)年)翁が、昭和39(1964)年に故郷である石薬師町本町のために建てたものです。 天野修一翁は鈴鹿市に奨学資金を寄贈して若人の育英に偉大な功績をあげています。前庭にある記念碑の「天野記念館」の文字は天野修一翁の揮毫によるもの。
ここで詳しいコースマップはその4になります。石薬師小学校の南に佐佐木信綱記念館があります。石薬師小学校南の交差点を過ぎると、佐佐木家の菩提寺である浄福寺、その先の小さい交差点に道標と南町橋の親柱。さらに南に下り、国道1号線を越えると石薬師寺。古刹です。蒲冠者範頼之社、蒲桜を見て、石薬師一里塚跡へ。これで、この日見るべきところはコンプリート。
「佐佐木信綱記念館」があります。ここには3年ほど前にも訪れています(2019年5月3日:20190420JRさわやかウォーキング「旧東海道 石薬師宿と鈴鹿「植木まつり」を訪ねて」へ(その1)……河曲駅をスタートし、田園地帯を抜け、石薬師宿へ、大木神社の鳥居、小澤本陣跡、天野記念館から佐佐木信綱記念館へ、土産とおやつをゲット)。佐佐木信綱資料館、佐佐木信綱生家、石薬師文庫、土蔵の4つを一体として、佐佐木信綱記念館となっています。左の写真は、資料館。ここは、佐佐木信綱博士の業績を顕彰するとともに、市民文化の向上と広く文学の研究に寄与するために設置されたもの。昭和61(1986)年に開館しました。佐々木家を始め、ゆかりのある方から寄贈、寄託を受けた品々の他、生家に保管されていた資料が収納、展示されています。遺愛品、御下賜品、書簡、原稿、書籍など多数があります。記念館は、佐佐木信綱顕彰会が鈴鹿市から委託されて運営しています。
佐佐木信綱は、歌人・国文学者として業績を残していますが、明治5(1872)年 6月、現在の鈴鹿市石薬師町で生まれました。佐々木家は、代々医者・学者であったそうですが、祖父・徳綱は書家で武術にも秀で「東海道人物誌」に紹介されるほどであったといいます。また、父・佐々木弘綱は、本居宣長の流れを汲む伊勢の国学者・足代弘訓に学び、江戸から明治にかけて歌人・国学者として全国的に活躍し、門弟は1,600名に及んだともいわれています。信綱は、父の指導の下、満4歳の時万葉集、古今集、山家集の名歌を暗誦、5歳には孝経の素読をしたそうで、5歳のときにはすでに短歌を詠んでいます。
障子からのぞいてみればちらちらと雪のふる日に鶯がなく
明治10(1877)年12月、父・弘綱が鈴屋社中から招請され、一家は松阪へ移住し(信綱は5歳)、信綱は翌年湊町小学校に入学しました。さらに、明治15(1882)、一家は上京。明治17(1884)年東京大学文学部古典科に12歳で入学し、同21(1888)年、16歳で卒業しています。卒業後は、宮仕えはしないという父の考えを継ぎ、生涯文筆生活でした。昭和38(1963)年12月、熱海市西山の凌寒荘にて没。享年91。石薬師には、もっと長く住んだと思い込んでいましたので、5歳で松坂に移ったというのは意外でした。
こちらは、石薬師文庫。昭和7(1932)年、信綱が還暦に当たって旧・石薬師村に寄附したもの。以前からあった土蔵(現存します)を文庫とし、写真に写っている建物が閲覧所として建設されました。伊勢国学に関する多くの版本や写本などを含む貴重な書籍が贈られました。現在は地域の図書館として、ボランティアによって運営されています。石薬師文庫の前には、佐佐木信綱・幸綱父子の歌碑と、里程標があります。歌碑には、信綱の「ふるさとの 鈴鹿の嶺呂の 秋の雲 あふぎつつ思ふ 父とありし日を」、また、孫の幸綱の「傾けて バイクを駆れる 群が行く 鈴鹿の山は 父祖のふるさと」という歌が刻まれています。里程標は、大正時代のもの。東面に「距 津市元標へ九里四町拾七間」とありました。南面にも「三重郡日永村大字泊へ壱里貳拾一町……」などと刻まれていましたが、敷地内で入れず、十分確認できませんでした。
石薬師文庫のさらに右手には、「佐々木弘綱翁𦾔居之碑 右文庫 左井」という石碑がありました(「𦾔」は、私が詠んだもので間違っているかも知れません)。
閲覧所になっている建物の右手にも歌碑があります。信綱が石薬師文庫を寄贈するに当たって詠んだ歌が、刻まれています。「これのふぐら 良き文庫(ふぐら)たれ 故郷の 人のために 若人のために」とありました。歌碑は、没後二年祭(昭和40(1965)年)を期して郷人によって建てられました。
こちらは、佐佐木信綱の生家。資料館の北隣です。生家はここに昭和45(1970)年に移築されたといいます。庭には、信綱が使った産湯の井戸もありますし、石薬師文庫の書庫に使われている土蔵も残っていました。
私にとって佐佐木信綱は、歌人、国文学者というよりも、唱歌「夏は来ぬ」の作詞者としてのイメージが強くあります。「卯の花の 匂う垣根に 時鳥(ほととぎす) 早も来鳴きて 忍音(しのびね)もらす 夏は来ぬ」が浮かんでくるのです。「卯の花」は、ウツギ。記念館の敷地だけでなく、石薬師の町中には至る所に、この卯の花が植えられています。前回尋ねた時は、4月20日でしたが、記念館の玄関脇の日当たりのよいところでは、もう咲き始めていました。卯の花の季節にもう一度訪れてみたい気がします。写真は、2019年4月20日に佐佐木信綱記念館で撮影した卯の花(ウツギ)。
思わず長くなりましたので、詳しいコースマップその4の途中ですが、その3はここまで。その4は、佐佐木家の菩提寺である浄福寺から。
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