20211225「東海道・伊勢街道歩いて伊勢参りツアー」第17回「宇治山田駅~内宮~五十鈴川駅」(その2)……長峰神社、麻吉旅館、寂照寺、伊勢古市参宮街道資料館から牛谷坂にある両宮常夜燈へ
12月25日の「東海道・伊勢街道歩いて伊勢参りツアー」第17回「宇治山田駅~内宮~五十鈴川駅」の本編その2です。その1では、「油屋騒動」に関わる大林寺にお参りし、油屋跡まで来ました。近鉄鳥羽線を越えると、長峰神社、麻吉旅館、寂照寺、伊勢古市参宮街道資料館と見どころが続きます。伊勢自動車道を越え、「月よみの宮さんけい道」道標、雪峰稲荷、両宮常夜燈と見て、牛谷坂を下ります。
近鉄鳥羽線を越えたところから先の伊勢街道の様子。このあたりは、海抜32.8m。古市あたりで、もっとも高いところです(33mを越えるところもありましたが)。宇治山田駅のあたりから比べると、30mほど登ってきたことになります。
長峰神社。
「長峰」は、文字通り、長く続く峰。外宮と内宮を結ぶ、この古市の地形に因む名称。御祭神は、天鈿女命(あめのうづめのみこと)。天照大御神が天岩屋に隠れられた時、天鈿女命は神懸かりして舞を舞い、大御神のお出ましをいただいたと伝わっています。それ故、歌舞伎役者や伊勢音頭の遊女の祖神として、芸能の神様とされる天鈿女命を祀っていたのです。長峰神社は、この街道の(旧)中之地蔵町に鎮座していた宇須賣社(うずめのやしろ)を明治3(1871)年に、久世戸町・古市町・中之町・桜木町の4町の協議によって現在地に鎮座し、長峰の産土神として祀ってきたものです。その後、一帯に鎮座していたお社や祠の神々も合祀しています。相殿神は、木花開那姫命、天津彦火瓊々杵命、宇迦之御魂神、春日大神八衢比古神、久郡戸神(くなどのかみ;もとは、道の分岐点、峠、あるいは村境などで、外からの外敵や悪霊の侵入をふせぐ神で、牛馬守護の神、豊穣の神としてはもとより、禊、魔除け、厄除け、道中安全の神として信仰されています)、菅原道真公。
長峰神社から350mほど先を東に入ったところにあるのが、麻吉(あさきち)旅館。創業は明らかではありませんが、天明2(1782)年の「古市街並図」にその名前があるといいます。インスタ映えするというか、フォトジェニックというか、魅力的な建物。現在は、5棟の建物があり、懸崖造りで最上階までは6層。朝熊山や二見まで見えるそうです。
同級生K氏にも是非見てもらおうと思い、案内しました。お陰様で、好評(微笑)。伊勢自動車道の方まで降りて見てきました。ここは、一見の価値、十分あります。近くへいらしたら、立ち寄ることをお勧めします。もう少し天気がよいと、見栄えもよくなります。2019年2月4日の記事に晴天のもと、きれいに撮れた写真と説明があります(20190127JRさわやかウォーキング「新春に二千年の時を刻む大神宮へのおかげ参り」へ(その2)……麻吉旅館、浅香つづら稲荷、寂照寺、古市参宮街道資料館、猿田彦神社など)。
麻吉旅館から伊勢街道に戻ってすぐ、となりといってもよいところに栄松山寂照寺。浄土宗のお寺。ご本尊は、阿弥陀如来。創建は延宝5(1677)年。寂照知鑑上人(知恩院第37世)が、千姫(2代将軍・徳川秀忠の娘・豊臣秀頼の正室)の菩提を弔うため開いたのが始まりとされます。その後衰退したものの、安永3(1774)年、月僊上人により再興されました。現在の山門、八角輪蔵は月僊が再建したものと伝わっています。月僊は、円山応挙に師事したとされ、仏涅槃図や藤の図が残されています。ちなみに、千姫は、元和元2(1615)年、大坂夏の陣で豊臣氏が滅んでから関東に帰る途中、桑名で本多忠政の長子忠刻と巡り合い、再婚しています。また、月僊は求めに応じて絵を描いては報酬を集めていましたので、批判する人もいました。しかし、彼は報酬を一銭も自分のものとせず、すべて寂照寺の再興と貧しい人々の救済などの社会福祉事業のために使ったというエピソードが伝わっています。山門は、薬医門形式で、寛政9(1797)年に月僊上人によって建立されたもの。登録有形文化財。
月僊は、寛保元(1741)年、尾張名古屋の味噌商人の家に生まれ、7歳のとき剃髪し、10代で江戸の増上寺に入りました。生まれつき絵が好きで、修行の傍ら桜井雪館(せつかん)という画家について絵を学びました。増上寺の大僧正定月は、彼の絵の才能や修行ぶりを誉めて、自分の名の一字を取って「月僊」の号を与えました。その後、月僊は、京都の浄土宗総本山知恩院に修行することとなり、写生表現を重視した円山応挙の門に入り、与謝蕪村を尊敬し、中国の絵画をも学んだといいます。安永3(1774)年、月僊34歳のとき、知恩院の大僧正に頼まれ、当時荒れ果てていた伊勢の栄松山寂照寺を立て直すため、そこの住職となったという次第。月僊上人の絵はきちんと見たことがありません。機会があれば、是非と思います。
こちらは観音堂。やはり登録有形文化財。宝蔵として開基以来唯一存在する建物だそうです。寛政9(1797)年の伽藍再興の際境内北東に宝蔵を新築し、それ以来この建物は米蔵として使われました。昭和の中頃、増改築をし、観音堂となっています。観音堂の手前にあるのは、月僊上人之碑。
寂照寺の先、スタートから2.8㎞ほどのところに伊勢市立伊勢古市参宮街道資料館があります。参宮街道や江戸と上方の役者の登竜門でもあった伊勢歌舞伎、古市妓楼などの関係資料が1階の展示室に展示されています(無料、月曜定休)。
資料館を過ぎると伊勢自動車道の上を越えます。越えた先に「月よみの宮さんけい道」と彫られた道標があります。冒頭のマップを見ていただくとお分かりになりますが、内宮の別宮である月読宮は、ここからほぼ真東にあります。そこへの道標です。右面には、「建設主 田村吉兵衛」、碑陰には「明治廿七年六月」とありました。明治27年は1894年。さほど古いものではありませんが、文字は読みにくくなっています。
雪峰稲荷。昔から「浅間さん」と呼ばれた土地だそうです。以前は、木花開那姫命を祀る桜木神社であり、さらにその前は浅間神社だったといいます。木花開那姫命は、浅間神社の御祭神。平成29(2017)年に造替されています。
さらに進むと、富樫公園の南に「奉献両宮常夜灯」。奉献は「東京神田旭町・富樫文治」。大正3(1914)年2月に建立。管理者は油屋旅館と彫られています。富樫文治は、日本銀行小樽支店の施工者だそうです(こちらのブログ)。石柱の碑表には、「奉献 両宮常夜燈 東京神田旭町 富樫文治」とあります。向かって左には、「管理者 油屋旅館」と。あの「油屋」と関係があるのでしょう。「大正三(1914)年二月二十七日建」とあります。大正時代になってもこんな大きな常夜燈2基を寄附する方がいらっしゃったというのはスゴい。
この両宮常夜燈の向かい側には、神宮司庁頒布部があります。ここは、「大麻(たいま・おおぬさ)」と呼ぶお神札(ふだ)や暦(こよみ)を奉製する部署。前回、外宮で授与していただいた「神宮暦」もここでつくられているはず(2021年12月11日 :20211211「東海道・伊勢街道歩いて伊勢参りツアー」第16回「明野からいよいよ伊勢神宮・外宮へ」……(予告編))。
このあたりは、牛谷坂といいます。この名は、この付近に牛鬼という怪物がいたという牛鬼伝説「枕返し物語」の由来によります。かつての参宮路は、ここより手前の「月よみの宮さんけい道」の道標にそって左に曲がりました。この牛谷坂は、延宝2(1674)年、内宮長官の藤原氏富が、山田奉行桑山丹後守貞政の許可を受け、数百両の私財を投じて改修しました。このため、参拝者は、内宮への近道となるこの牛谷坂を利用するようになったといいます。ただ、当時の道は、今のようなまっすぐな坂道ではなかったため、元禄10(1805)年、古市の妓楼「千束(ちづか)屋」の主人りと(当時65歳)が、山田奉行の許可を得て、千両余りを投げ出して本格的な改修工事を行ったのが、現在の牛谷坂です。
その2はここまで。その3は、宇治惣門跡から、猿田彦神社へ。
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