20210925「東海道・伊勢街道歩いて伊勢詣りツアー」第10回「津・栄町~津・高茶屋」(その2)……津の観音さん、大門商店街から浄安寺、閻魔堂、市杵島姫神社から阿漕町神明神社へ
9月25日の「東海道・伊勢街道歩いて伊勢詣りツアー」の第10回「津・栄町~津・高茶屋」、その2です。その1では、津駅をスタートし、四天王寺など寺巡りをして(というか、この間、お寺しか見るところがありません)、塔世橋を渡りました。冒頭の画像は、詳しいルートマップのその2です。塔世橋からしばらく国道23号線を歩き、2㎞地点で左折し、東に入ります。津観音寺にお参りし、大門商店街を通り、フェニックス通りを越えて岩田川を観音橋で渡ります。
いきなり余談から。国道23号線から東に入るところに松阪肉の朝日屋があります。たぶん三重県では有名。東京にも支店があるようですが……。有名というのは、たとえば、大晦日にすき焼きを食べるということはよくあると思いますが、ここは大人気の店で、たくさんのお客さんが買いに来る光景が、ローカルニュースで毎年、取り上げられるのです。
さて、国道23号線から東に入ったあたりの伊勢街道の様子。国道からいうと、1本裏道ということ。国道沿いとはずいぶん雰囲気も変わってきます。ちなみに、この辺を歩いている頃から、空には雲ばかりになってきます。
観音寺に行くのですが、西側の門から入るため、2.3㎞地点で左折し、いったん伊勢街道からは離れます。観音寺に行く途中、津大門シネマがあります。平成13(2001)年4月に閉館した津東宝劇場の建物や設備を用いて、平成16(2004)年3月に津大門シネマとして開館。しかし、平成21(2009)年7月に閉館。大門シネマと同じビルに入っている喫茶サンモリッツ(ここも歴史があるようです)は、営業しています。
恵日山観音寺。地元では、「津の観音さん」と呼ばれています。真言宗醍醐寺派。本尊は聖観音菩薩。日本三大観音の一つとされます(ちなみに他の2つは、浅草観音、大須観音)。和銅2(709)年の建立とされ、室町時代の永享2(1430)年に、将軍足利義教が勅命を奉じ境内に三重塔や恵音院を建立したり、延徳2年(1490)には天台真盛宗の開祖、真盛上人が山内不動院に滞在し、観音堂に於いて説法され天台真盛宗を広められたといいます。ここは、2度ほど訪ねています。四天王寺の詳しいことは、3年前の「勝手にハイキング」の記事にあります(2018年5月 1日 :20180423勝手に近鉄ハイキング「名古屋線・津新町駅から松菱、お城公園など」(その2)……乱歩の墓のある浄明院、阿漕平治に関わる上宮寺、西来寺、大門商店街から津観音、2018年5月 2日:20180423勝手に近鉄ハイキング「名古屋線・津新町駅から松菱、お城公園など」(その3)……津観音から、蜂蜜まん本舗、千寿で天むすをゲットし、お城公園へ)。
津観音から南に出ると、大門商店街。観音寺の先の四つ角に道標があります。「すぐ こうのあみだ 左 げこうみち・右 さんぐうみち 左 こうのあミだ」とあります。碑陰には、「明治廿五年十二月立之□セハ松田傳兵衛/桝田伊蔵」。「こうのあみだ」は、津観音寺を指しています。明治25(1892)年建立。大門商店街は、ご多分に漏れず、往時の賑わいはありません。
道標から西に入ったところに、平治煎餅本店があります。平治煎餅は、津の銘菓の1つ。よくあるカステラ生地の薄焼き煎餅。桑名でいえば、かぶら煎餅。平治煎餅の由来は、こちら。この由来にある平治のエピソードから「阿漕な」ということばができています。店だけ見てきました。さらにこの近くには、蜂蜜まん本店、天むすの千寿などがあります。千寿は、天むす発祥の店。ただし、今日は、どれも食べてはいません(笑)。
大門商店街には、津宿の本陣跡と、脇本陣跡があります。ただし、今はまったく別の店になっています。本陣跡は百五銀行、脇本陣跡はニューマツザカヤというブティック。
もう1店。大門商店街の南の端に「とらや本家」。ここは、いちご大福などが名物というか、いちご大福発祥の店だそうです。そのいちご大福が生まれたのは昭和61(1986)年。とらや本家のご主人とおかみさんが、たまたま休憩のときに、あまった大福餅にいちごをのせて食べたところ、これが意外に美味しかったことから、約1ヶ月の 研究を重ね、その年の2月13日から販売を開始。その後も、お客さんへの店頭での試食やアンケートを重ねて今のスタイルになったということです。他にもさまざまなフルーツ大福があり、近鉄ハイキングで立ち寄ったときに、「なし大福」を食べたことがあります(2019年9月11日:20190907近鉄ハイキング「お伊勢さん参りハイキング 昔も今もお伊勢参り~旅7日目~伊勢街道、旅人気分で津のまちから垂水へ」(その2)……平治煎餅本店、津観音寺、大門商店街、とらや本家、閻魔堂、市杵島姫神社から「まんどさん」)。この日は、「もも大福」という看板が出ていましたが、立ち寄っていません。
フェニックス通りを渡ります。津市中央と津市なぎさまちとを結んでいます。中央分離帯にフェニックスが植えられていますから、このように呼ばれています。近鉄道路までは、昭和42(1967)年に開通しています。フェニックスは八丈島産で、6m間隔で99本植えられているそうです。
スタートから3.3㎞で岩田川に行き当たります。本来の予定では、前回、ここまで歩いて、近鉄津新町駅に向かうはずでした(笑)。なので、ここまでは、前回の宿題をしていた感じ。岩田川にかかる観音橋を渡っていきます。この橋について詳しいことは分かりませんが、その名前からして、観音寺の参道というような意味合いがあるのかも知れません。
観音橋の数10m上流に国道23号線の岩田橋がかかっています。橋の北詰には、松菱百貨店。昭和11(1936)年5月、三重県初の大型百貨店である大門百貨店として開業した老舗。駐車場に車が溢れていましたが、この日は「全国うまいもん博」を開催していたためか? 岩田橋南詰の西側には、百五銀行本店(右の写真の中央のビル)。明治11(1878)年12月、旧津藩(藤堂氏)の武士たちにより、国立銀行条例に基づく第百五国立銀行として設立されています。
岩田橋のところからが、本来の第10回伊勢詣りツアーのスタート。詳細なルートマップはその3へ。津球場の東あたりは、国道23号線を歩きます。浄安寺に立ち寄ってから、岩田交差点で左折し、東へ。真教寺、市杵島姫神社、教圓寺と進み、阿漕の町へ入ります。阿漕の町には古い家並みが残っています。ここで、阿漕町神明神社にお参り。
ノーチェックでしたが、岩田山浄安寺。浄土宗。国道から立派な鐘楼門が見えましたので、立ち寄って来ました。室町時代末期の永禄3(1560)年、玉蓮社瑞誉上人秀等大和尚により創建されました。桶狭間の戦いがあった年です。
本堂の前に法輪があり、「法輪をまわしましょう」という説明がありました。法輪があるのは、初めて見ました。車の輪が回り続けるように、未来に向かって永遠に広められていく仏の教え、すなわち仏法を象徴しているということです。法輪をまわすと、お釈迦様の御経をすべて読んだことになるそうです。
また、境内には平子鐸嶺(ひらこたくれい)の墓所があります。平子鐸嶺(明治10(1877)~明治44(1911)年)という方は知りませんでしたが、三重県出身の明治時代の美術史家。東京美術学校を卒業。若くして亡くなっています。内務省古社寺保存会委員で、法隆寺非再建論をとなえました。
平子鐸嶺墓所のとなりに「聯芳塔(れんぽうとう)」というものがありました。墓のようですが、現地ではよく分かりませんでした。これを書くに当たって、ネットでいろいろ調べてみたら、お寺の歴代住職の墓をこう呼ぶことがあるようです。なるほどと思うと同時に、知らないことは、本当にたくさんあるものだとも思います。
岩田交差点を左折し、東南へ向かいます。この頃から空模様が一段と怪しくなり、雨が当たってきました(苦笑)。真教寺につく前からやむなく、傘を差して歩き始めるほど。スタートから5㎞を歩いて、阿古木山真教寺(あこぎざんしんきょうじ)。天台宗。通称は、「閻魔堂」。慶長19(1607)年、津藩第2代藩主である藤堂高次公が建立したと伝わっています。ここは、津城下への南の入り口に当たります。悪霊や疫病が津の町に入らないようにという願いが込められているのです。
御堂の中には、閻魔王座像や、円空作という十一面観音立像が安置されています。十一面観音立像は、総高236cmで円空仏としては屈指の大きさだそうです。左の写真では、正面が閻魔王座像、向かって左が円空作の十一面観音立像。余談ですが、この目の前に三重交通のバス停があり、その名もまさに「エンマ堂前」。我々が閻魔堂の中を覗いて降りようと思ったら、ちょうどバスが来て、乗車扉が開きました(苦笑)。乗ってしまうと、この日のゴールである高茶屋駅のすぐ近くにあるイオンモール津南まで行けたのですが、いくら何でもそういう訳にはいきません。
閻魔堂には、その手前に(西に)地蔵堂もあります。中には、お地蔵様が3体いらっしゃいました。
閻魔堂に並んで、市杵島姫神社(いちきしまひめじんじゃ)があります。この写真で、向かって左が閻魔堂、右が市杵島姫神社。
市杵島姫神社は、通称「弁財(べざい)さん」。それによって、このあたりの地名が、津市下弁財(しもべざい)町。この付近にあった庚申塚の境内に、建武年間(鎌倉時代から室町時代(南北朝時代)にかけての1334~1336年まで、後醍醐天皇の代の元号)、伊勢の国司であった北畠氏が守り本尊としていた市杵島姫大神を祀って町の産土神として崇めたといいます。主祭神は、市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)。相殿神は、建速須佐之男命、宇迦之御魂命、大物主神、猿田毘古神、大山津見命、天照皇大御神、徳川家康、事比良神。万物の生命をつかさどる水の神、音楽芸能、子孫繁栄の神様として崇敬されています。この神社には、青銅製の「湯立釜」があります(市指定文化財)。釜屋町(現・北丸之内)の辻氏と並び称された中山村(現・津市栗真中山町)の鋳物師・阿保氏の作(元文5(1740年鋳造)。
境内には樹齢が、400年とも500年ともいわれる、大きなイチョウの御神木があります。周囲は約4m。昭和20(1945)年の津空襲の時、湯気のようにもうもうとしたものが出て御神殿をつつみこみ焼失を防ぎ、風の向きも変え、火の手を止めたといわれています。
市杵島姫神社からすぐのところに一乗山教圓寺。真宗高田派のお寺。落ち着いた良い感じのお寺ですが、由緒などは不明(案内板はなく、ネット検索でも情報は出て来ません)。
閻魔堂や市杵島姫神社から南の伊勢街道沿いには、古い家がかなりたくさん残っていて、風情を感じます。たとえば、こちらのお宅。大垂があり、連子格子になっています。
教圓寺から南へ150mほどのところに阿漕町神明神社があります。ここは一風変わった神社で街道脇に鳥居があるのですが、そのすぐ奥が拝殿となっています。鳥居も拝殿も小振り。江戸時代の絵図には「一万度祓(いちまんどはらい)納社」として描かれているそうです。説明板によると、悪病が流行して町中がとても苦しんだ時に、人々が相談して阿漕町の中心部に神社を祭り祈祷したところ、病が治まったことから、町の守護として信仰を集めるようになり、毎年4月8日に大祭が催されるようになったといいます。
珍しいことに、御祭神(大日孁貴命(オオヒルメノムチノミコト;天照大神の異称)は屋根に作られた天窓の上に祭られています。これら2枚の写真は、2019年5月10日に撮影したもの(20190428近鉄ハイキング「『阿漕』砂浜ハイキングと津グルメ散策」へ(その2)……教圓寺、神明神社、山二造酢を経て結城神社へ)。この近鉄ハイキングの時は、氏子の方がいらっしゃり、許可をいただいて、拝殿前でかがみ込んで見上げて撮ったもの。このように天窓の上に神様がいらっしゃるので、地元では「まんどさん」と呼ばれています。
「まんどさん」がどんな風になっているのか疑問だったのですが、以前はこの両側に家が建っていて裏側は覗けませんでした。この日は、向かって右が更地になっていましたので、裏に回れました。ご覧のように、奥(東側)の屋根から出た柱に本殿(といっていいのでしょうが)が固定されていました。この本殿を、上左の写真にあるように、拝殿にある天窓から拝むという仕組み。なぜ、わざわざこのようなスタイルにしたのでしょう? きっと理由はあったと思うのですが、ネットで調べる限りは不明。その2はここまで。その3は、阿漕町神明神社殻150mほど先にある薬師庵跡、松原寺など阿漕を歩いて、国道23号線を西に越え、垂水に入っていきます。
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