20210925「東海道・伊勢街道歩いて伊勢詣りツアー」第10回「津・栄町~津・高茶屋」(その3)……薬師庵跡、松原寺、史跡明治天皇御小休所、香良洲道との追分、4分間待つ信号を経て成就寺へ
9月25日に行ってきた「東海道・伊勢街道歩いて伊勢詣りツアー」の第10回「津・栄町~津・高茶屋」の本編その3です。その2では、阿漕町神明神社まで来ました。このあたりの伊勢街道沿いには、古い家も多くのこっており、いかにも街道歩きをしているという気分を味わえます。冒頭の画像は、詳しいルートマップのその3。阿漕町から藤方に入っていきます。薬師庵跡、松原寺、史跡明治天皇御小休所、思案橋・香良洲道との追分を経て、国道23号線を越え、垂水へ。4分間待つ信号から成就寺に進んで行きます。
当日は、そのまま通り過ぎてしまったのですが、その2で訪ねた阿漕町神明神社から200mほど南の交差点が、昔、安濃郡と一志郡との境界だったといいます。写真は、2019年9月7日の近鉄ハイキング「お伊勢さん参りハイキング」の時に撮ったもの。薬師庵跡の前から北を向いて撮っています。奥に見えている交差点がそれです(2019年9月12日:20190907近鉄ハイキング「お伊勢さん参りハイキング 昔も今もお伊勢参り~旅7日目~伊勢街道、旅人気分で津のまちから垂水へ」(その3)……山二造酢、薬師庵跡、松源寺地蔵堂、明治天皇津八幡町御小休所碑、香良洲道との追分を経て、やっとの思いで昼食にありついて後、南が丘駅にゴール(完))。
スタートから5.5㎞ほどのところに薬師庵跡。「水子 子育 地蔵菩薩」という幟が掲げられた山門があります。山門をくぐってすぐ左手に地蔵堂。これが水子地蔵。
空き地の奥に石碑が建っており、北畠国主の祈願仏であった薬師如来の庵があったところと書かれていました。永禄12(1569)年、兵乱により家士等が如来様をゆかりのある一志郡松崎村の船乗りを業とする者に預け、厨子に入れたまま小船に乗せ、ここ八幡の地に安置すべく、新たに庵室を建てました。しかし、平成18(2006)年に、この南にある松源寺とともに火災で焼失してしまったのだそうです。
こちらは、八幡山松原寺(しょうげんじ)。天台真盛宗。2019年9月7日にも訪ねているのですが、山門と地蔵堂が一新されていました(右の写真は、その2019年9月7日に撮影したもの:20190907近鉄ハイキング「お伊勢さん参りハイキング 昔も今もお伊勢参り~旅7日目~伊勢街道、旅人気分で津のまちから垂水へ」(その3)……山二造酢、薬師庵跡、松源寺地蔵堂、明治天皇津八幡町御小休所碑、香良洲道との追分を経て、やっとの思いで昼食にありついて後、南が丘駅にゴール(完))。山門は、簡素化されたというとお叱りをいただくかも知れませんが、そんな印象。
地蔵堂は、山門脇にあったものが奥に新設。地蔵は、弘法大師作と伝わります。宝暦年間(1751~1761年)、松源寺に立ち寄ったあと、富士参りに向かった度会郡の人が富士山中で道に迷っていたら、旅僧に姿を変えたこの地蔵に助けられたという逸話が伝わっています。
松源寺から南へ200mほど行った、右側(西側)の民家の庭に「史跡 明治天皇津八幡町御小休所(めいじてんのうやはたごこやすみどころ)」という石碑が建っています。明治13(1880)年7月9日、明治天皇はこの地を通られ休憩されました。この頃、明治天皇は、三重県内を行幸されています。7月4日~6日には三重県庁、裁判所、師範学校、津中学校を御巡覧、願王寺(寒松院)に行在所が設けられました(津の寒松院に「明治天皇行在所跡」の石碑があります;2018年4月29日:20180423勝手に近鉄ハイキング「名古屋線・津新町駅から松菱、お城公園など」(その1)……津新町駅界隈、松菱百貨店、藤堂家墓所の寒松院)。7日に伊勢神宮に御親謁され、その後は、一身田の高田本山にお泊まりになられました(2018年1月19日:勝手に「JR・近鉄さわやかハイキング(笑)」……高田本山専修寺と一身田寺内町散歩(その2)専修寺の境内を歩く(前半))。さらに、7月11日・12日に、亀山で大阪鎮台・名古屋鎮台の合同演習(軍事訓練)をご覧になっています。ここでスタートからほぼ6㎞、。12時を過ぎています。
その先100mほどのところに八幡神社(津八幡宮)の社号標があります。伊勢街道を下る方向からいうと、左折すると、八幡神社の表参道に至ることを示しています。ここから東へ250mほど入ったところに八幡神社の表参道があります。八幡神社は、2019年4月28日の近鉄ハイキングの時にちょっとだけ立ち寄っています(2019年5月10日:20190428近鉄ハイキング「『阿漕』砂浜ハイキングと津グルメ散策」へ(その2)……教圓寺、神明神社、山二造酢を経て結城神社へ)。ちなみに、八幡神社は、垂水村(現在の津市垂水)千歳山にあった八幡神社(京都・石清水八幡宮から、伊勢国へ初めて分霊された神社)を寛永9(1632)年、津藩主・藤堂高次公がこの地に遷祀されたのに始まります。主祭神は、応神天皇と神功皇后。相殿神は、住吉大神(すみよしのおおかみ;航海の神)、藤堂高虎公です。寛永21(1644)年には、藤堂家の鎮守神社となり、この頃からの氏神祭が、現在は、津まつりとして続いています。
さらに進み、スタートから6.4㎞のところに、香良洲道との追分があります。この写真では、左に入っていく道が、香良洲道(からすみち)、手前から右上に通っているのが伊勢街道です(東から西を向いて撮っています)。香良洲道とは、香良洲神社へお参りする道。「からす詣らな片参宮」といわれ、伊勢神宮の往路か復路に多くの人が香良洲神社を訪れたといいます(ちなみに多度大社にも、「お伊勢参らば お多度もかけよ お多度かけねば片参り」といわれています)。香良洲神社の主祭神は、天照大神の分身または妹神とされる稚日女尊(わかひるめのみこと)。この橋のところで、香良洲神社に参ろうかどうか思案したところから、思案橋と呼ばれたのです。
香良洲道との追分の先で、国道23号線を垂水南交差点で越えます。雨は、強まったり、弱まったりしてはいるものの、相変わらず降り続いています。
紀勢本線の踏切を越えた先に「4分間待つ信号」。近鉄ハイキングの「お伊勢さん参りハイキング」で来たときにもコースマップにわざわざ「4分間待つ信号」と書いてありました(2019年9月12日:20190907近鉄ハイキング「お伊勢さん参りハイキング 昔も今もお伊勢参り~旅7日目~伊勢街道、旅人気分で津のまちから垂水へ」(その3)……山二造酢、薬師庵跡、松源寺地蔵堂、明治天皇津八幡町御小休所碑、香良洲道との追分を経て、やっとの思いで昼食にありついて後、南が丘駅にゴール(完))。このあたりの伊勢街道は道も狭く、車の対向はできません。路線バスも通りますので、交互通行式になっていて、ここが赤信号ですと約4分待つ必要があるのです。
7㎞を過ぎた交差点(ここの信号も一体になって、4分間待つ信号を形成。両信号の間は、200mあまりあります)のところに垂水山成就寺。写真で、向かって左に見えるこんもりした森がそれ。
真言宗醍醐寺派。ご本尊は行基によって見いだされた、平安後期(12世紀後半)に作られた大日如来座像(こちらに写真があります)。行基(668~749年)は伊勢参宮の途中、このあたりの山中から仏像を掘り出し、堂を建てて安置しました。垂水は水に恵まれないところであったものの、この仏像が出現した跡地から「香水(こうずい)」と称する一切の痛みのある病を治す水が湧き出し、それを白河法皇に献上したところ病気が治癒したことから、七堂伽藍が建てられ、200人近くの僧侶が修行に励んでいたといいます。しかし、織田信長による焼き討ちに遭い、残ったのが成就寺と清水不動院、南晶寺、金剛寺だけでした(南昌寺、金剛寺はこのあと立ち寄ります。清水不動院は、ここから西に400mほどのところにあり、2019年9月22日の近鉄ハイキングの「お伊勢さん参りハイキング」で通っています(2019年9月25日:20190922近鉄ハイキング「お伊勢さん参りハイキング 昔も今もお伊勢参り~旅8日目~伊勢街道、旅人気分で垂水から雲出へ」(その1)……南が丘駅をスタート、成就寺、金剛寺、南昌寺から元伊勢の一つである加良比乃神社、称念寺、高茶屋神社へ)。水に恵まれなかったここ垂水で、良質な水が出て、街道を通る人も水を求めて立ち寄ったといいます。
西行法師も立ち寄り、歌を残しています。境内には、その西行法師ゆかりの「さる稚児桜」の孫の木が残っています。西行法師が伊勢参りの途中、成就寺に立ち寄ったとき、境内で一人の子どもが遊んでいたが、西行の姿に気づくと、そばにあった桜にスルスルと登り、高い枝に腰をかけました。あまりに見事な木登りに西行は思わず、「さるちごとみるより早く木にのぼり」と上の句を口ずさんだところ、木の上の子どもが、「犬のようなる法師来たれば」とすかさず下の句を付けて返したといいます。歌人西行法師と田舎の子どもの痛快なやりとりがあったこの桜は、その後、「さる稚児桜」と呼ばれ、成就寺の名木となっています。
境内に上がっていく階段の手前、お地蔵様の脇に道標があります。半ば埋もれているのですが、碑表と右側には「大日如来出現所香水道 従是/四丁」とあり、大日如来が出現した香水道がここから4丁(約436m)であることを示しています。左側には「安永二癸巳歳/九月吉日建之」、碑陰には「津魚町施主/栄四建之」とあります。安永2年は、1773年。なお、「伊勢参宮名所図会」に載っている成就寺の記述や、西行法師が訪ねた様子が、三重大学付属図書館のライブラリで見られます(ここ)。
成就寺の前の交差点からすぐ南に、成就寺の塔頭であった金剛寺、南昌寺がありますが、長くなりましたので、それはその4にて。その3はここまで。
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