20210608諸戸氏庭園の花菖蒲
今日の散歩帰りに、諸戸氏庭園に立ち寄って、花菖蒲を見てきました。去年は、新型コロナのため春の特別公開が行われませんでしたので、2年ぶり。今年の春の特別公開は、6月13日(日)まで。開園は10時~17時(入園は16時まで)。大人一人¥500。諸戸氏庭園は、江戸時代の豪商・山田彦左衛門の隠居所として造園され、その後、明治17(1884)年に初代諸戸清六氏が買い取って、御殿と池庭を増築しています。さらに、二代目の諸戸精太氏が手を加え、現在に至っています。春の特別公開では、私はいつも花菖蒲を見に行っています。一昨年(2019年)は、6月4日に訪ねています(諸戸氏庭園で花菖蒲を楽しむ……濡れ燕という珍しい品種も咲いていました)。
10時20分頃入園、1時間ほど過ごしてきました。園内のマップは、ここにあります。現在、主屋は半解体修理中で、煉瓦蔵から入ります(冒頭の写真)。もとは、明治20(1887)年頃に木造で建てられましたが、明治28(1894)年に火災で焼失。その後、煉瓦で再建されています。昭和20(1945)年の戦災で2棟が失われ、現在残るのは、3棟。左の写真は、煉瓦蔵から園内に入ったところ。その先、順路にしたがって進むと、藤茶屋があります(右の写真)。山田家時代には、藩主が藤を愛でるために訪れたといわれる茶室です。昭和20(1945)年の戦災で焼失し、昭和43(1968)年に再建。
左の写真は、藤茶屋のに子にある藤棚。藤が咲いたら、見事な眺めと思います。右は、茶室。上右の写真では、向かって右にあります。
藤棚の奥に見える門の先に花菖蒲池があります。池を中心とした回遊式庭園になっています。ここは、専属の庭師さんがいらっしゃって、手入れをしておられますので、見事です。今日も訪ねた折には、花がら摘みの作業中。右の写真は、同じあたりから見た北側の景色。蘇鉄が植わった小高い丘があります。「久波奈名所図会」の「山田氏林泉図」にも描かれています。このあたりは、室町時代には「江の奥殿」と呼ばれ、既に邸宅・庭園の設けがあったといいます。貞享3(1686)年に豪商山田彦左衛門が下屋敷・隠居所としてこれを買い求め、庭園を造りました。
左の写真のように、池には石橋が渡され、回遊できるようになっています。右は、少し進んだところから藤茶屋の方を見た写真。
蘇鉄山の方へ進むと、茶室・推敲亭が見えます。覚々斎原叟(かくかくさいげんそう;延宝6(1678)~享保15(1730)年))作と伝えられている草庵。ここから菖蒲池へと続く低い地形を水面に見立てて沢飛石が打たれ、山間の渓流のような雰囲気を醸し出しています。この推敲亭と、それを含んだ景色、私の好みなのです。
以前教えていただいた「濡れ燕」がないか、かなり探したのですが、今日は見当たらず。右に、2年前の写真を再掲しておきます。これで咲いた状態だそうです。すでに咲き終わったのか、まだこれからなのか、はたまた失われてしまったのか、気になります。
神社。明治時代に改築。金毘羅神社・住吉神社・伏見稲荷・玉船稲荷・菅原神社が祭られているそうです。六華苑の方にも神社があります。神社の先から、池越しに御殿(広間)が見えます。御殿は、明治24年(1891年)の上棟。もともと水田であったところに揖斐長良川の中洲である十万山から 山砂を運んで盛土をして建物を建てたといいます。
神社の先で、クチナシ(梔子)の花が咲いているのを見つけました。柿安コミュニティパークにもあるのですが、そちらはまだです。甘い香りがあたりに漂っています。クチナシというと、毎回書きますが、どうしても渡哲也さんの「くちなしの花」の歌が浮かんできます。昭和48(1973)年のものですので、大学に入った年。
こちらが御殿。ずっと昔(今の保存修理事業が平成20年度から調査が始まっていますので、それ以前)、見学にきて、この御殿にも上がったような記憶がありますが、それは不確か。右の写真で、電灯がついていますが、この御殿、桑名で電気が通る前から、自家発電装置を導入して電灯を使っていたそうです。初代諸戸清六氏は、米相場財をなしたそうですが、自家発電装置で精米器を動かし、さらに御殿の電灯も灯したという話を、歴史案内人のKさんから伺いました。
御殿の東には、池があります。上述のように、ここは水田であったのを埋め立てて作られています。そのため、もとは、水門から流れ込む揖斐川の干満の影響を受け、池の水位が上下し、刻々と変わり行く景観を味わう汐入りの池となっていました。御殿の庭は、松と石を配した、前述の江戸期の庭園とは全く趣の異なった造りとなっています。鳥羽や志摩から運んできた見ごたえのある大石や、青石などが置かれています。長島城、桑名城から運んだ庭石もあります。宮内省技師であった小平義近が設計。琵琶湖を模してつくられています。
さらに順路にしたがって進むと、推敲亭に出ます。前述のように、覚々斎原叟(かくかくさいげんそう;延宝6(1678)~享保15(1730)年))作であれば、17世紀末か、18世紀初めのもの。立ち入り禁止なのですが、いつも一度でいいからここに入って景色を眺めてみたいと思います。右は、そのつもりになって推敲亭の西側から撮った写真。
推敲亭は、このように3畳の広さの草庵。写真に向かって右が東。右の写真は、推敲亭の東から撮ったもの。諸戸氏庭園のサイトに、「ここから菖蒲池へと続く低い地形を水面に見立てて沢飛石が打たれ、山間の渓流のような雰囲気を醸し出している」とありますが、それが感じられる景色と思います。
庭園の南側に進みます。最初の花菖蒲池のところに戻って来ています。ここ諸戸氏庭園の花菖蒲池は、回遊式庭園になっていて、高低差、池、流れがありますので、変化に富んだ景色の中で花菖蒲が楽しめます。これは、九華公園の花菖蒲園にはない魅力。
石橋のところに来ました。ここを奥に向かって渡っていくと、もう一度回ってこられます(微笑)。これで花菖蒲を含め、一通り回って、楽しんできました。諸戸氏庭園は、まだ主屋、石取祭車庫の修理が進んでいますので、全部を見ることはできません。煉瓦蔵も修理するとともに、5棟に戻すという話を聞いています。早く、全体を見られるようになって欲しいと思っています。
石取祭車庫が修理中と書きました。いつもは表から見ていますが、裏からの様子。基礎部分と建物部分とが、分離され、建物はジャッキアップされていました。
ちなみに、ここには、太一丸の祭車が保管されているのです。明治30(1897)年のもの。代表彫刻は「四神」、「雷獣」で、彫刻は高村光雲の工房によります。飾は神鹿。左の写真は、桑名七里の渡し公園のオープニングセレモニーで公開されたときのもの(2015年11月3日:「桑名七里の渡し公園」オープニングセレモニー)。
ということで、ほぼ1時間、諸戸氏庭園と花菖蒲を見てきました。御殿の前で歴史案内人のKさんにお目にかかり、今日も、諸戸氏庭園や、建物、庭、さらには、撮影スポットまでいろいろと教えていただきました。春の特別公開は、残り5日間。週末は雨予報ですが、お近くの方には一度お尋ねになることをお勧めします。
ちなみに、拙宅玄関前から見下ろすと、こんな感じ。右端に煉瓦蔵が見えています。中央の大きな覆いは、主屋の半解体修理現場。その向こうの森の中に庭園があります。左端に見えている屋根が、御殿(広間)。玄関先からは花菖蒲池も、潮入池も見えませんが、それにしても、よいところに住まいを構えたものだと思います(自画自賛故、ご容赦ください)。
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おユキさん、おはようございます。
諸戸氏庭園の春の特別公開も、いよいよ明日までになりました。
今日、明日は、藤茶屋でかき氷のサービスがあるそうです。
専属庭師さんがいらして、手入れをしておられますので、いつ見てもきれいで気持ちの良いお庭です。
春の特別公開は、今年は4月24日からでしたので、藤のシーズンにはちょっと遅いかも知れません。
私はいつも、知り合いの歴史案内人の方に花や、紅葉の様子を確かめて出かけています。
Facebookでも、情報が発信されています。
推敲亭はいつ見てもいい感じです。
大きさも3畳というのがよいと思います。
ここは、コロナが収まったら、一度是非お尋ねください。
けっこう暑い日が続きましたので、緑陰が恋しくなる感じです。
コロナワクチン、ファイザー製か、モデルナ製かによっても接種後の状況が少し違うかも知れません。
もちろん、個人差もあります。
いずれにしても、確率からすると、一般的には特に心配する必要はないと思っています。
投稿: mamekichi | 2021年6月12日 (土) 11時37分
mamekichi先生、おはようございます。
諸戸氏庭園、相変わらず、良いですねぇ。
期間限定という希少価値も相まっているのかもしれませんが。
日本昔話に出てきそうな、推敲亭の佇まい。
建物に「カワイイ」はヘンかもしれませんが、カワイイです(微笑)。
推敲亭は、以前にも書いたかもしれませんが、夢殿(八角堂)や瞑想用のピラミッドを連想させます。
なので、ここから景色を眺めたいと仰る先生とは、目的が違いますが、私も一度、中に入ってみたいと思います。
藤棚も、花が盛りの時に行ってみたいなぁと思います。
公開されていれば良いのに。
昨日から少し肌寒くなりましたが、暑い日には、新緑が涼しく感じられますね。
そうそう、昨日、ワクチンを二回打った方にお話を伺いました。
一度目の夜、少しの痛みと微熱が出て、二度目は、一度目より軽かったということでした。
こういう方もいらっしゃるのだなぁ、と、珍しいお話を聞かせてもらいました。
投稿: おユキ | 2021年6月12日 (土) 10時58分