お知らせ

  • データの移行について
    2005年10月26日のブログ開始当初から、2023年11月30日までの記事は、「猫の欠伸研究室(アーカイブ)」に移行しました(http://blog.livedoor.jp/taichimaru151/)。 このココログの「猫の欠伸研究室」には、2018年1月以降の記事を残し、2017年12月以前の記事は削除しました(2018年1月1日から2023年11月30日までの記事は、両方にあります)。

レンズを通した自然観察

  • この「レンズを通した自然観察」ということばは、恩師のお一人が、私の趣味を形容しておっしゃったものです。2023年2月7日のブログに書きましたが、実はときどき思い出していることばです。お世話になった先生方はたくさんいらっしゃいますが、この恩師は、就職のことから学位論文の執筆、審査に至るまで本当にお世話になった先生です。「写真の撮り方を指南してもらいたい」ともおっしゃったのですが、これはお世辞と理解しています。私はほぼ隠居状態となって10年以上になりますが、今、改めてこのことばをかみしめています。この先生には結婚式の際に「理論と臨床をつなぐ仕事をするように」ということばをいただきました。体調を崩してそれには十分に応えられませんでしたので、せめてこの「レンズを通した自然観察」については、極めるとまでは行かないにしても、もう少し精進したいと考えています。

ブログ名の由来

  • ブログ名の「猫の欠伸研究室」は、中日新聞の夕刊に連載されている「紙つぶて」というコラム(平成22(2010)年1月13日)に、元新党さきがけ代表の武村正義さんが書いていらっしゃった「人生は猫の欠伸である」というコラムによります。武村さんは、“チベットで鳥葬を取り仕切る僧侶が、「人の生涯は猫の欠伸のようなもの」と語った”と書いていらっしゃいます。「猫の欠伸のようなもの研究室」としたかったのですが、ちょっと間延びしますので、「猫の欠伸研究室」とした次第です。「研究室」とつけたのは、過去、大学に勤めていたことがあるということやら、知らないこと、分からないことがあると何でも調べずにはいられない性分であること、屁理屈、講釈が大好きであることからであります。しかし、「人生の研究をしている」のではありません。「大所高所」からのご高説を開陳できるほどの力量はないが故、「小所低所」からの戯れ言をつぶやくのが精一杯(苦笑)。身の程に合わせ、勝手なことを書き綴っていますので、御用とお急ぎでない皆様には、今後ともご交誼のほど、お願いいたします。是非ともコメントを頂戴し、少しでも世間を広げたいと熱望しております。

モットー

  • 座右の銘というほど立派なものはありませんが、過去に体調を崩し、療養生活を送った経験から、私なりのモットーをつくっています。その一つは、「淡々と飽きもせず……」です。自分では、「……」と余韻を残しているところが気に入っています。こだわりすぎや、やり過ぎはよくありません。若い頃はムキになってやったこともありますが、今はこのように「淡々と飽きもせず……」が自分に合っていると思っています。もう一つは「晴耕雨読」ならぬ「晴歩雨読」です。マンション暮らし故、耕すところはありません。代わりに歩いています。そして、最近(令和3(2021)年に入った頃から)追加したのが、「散歩生活、ときどき仕事」。NHKのテレビ番組に「晴れ、ときどきファーム!」というものがあります。これのもじり。浅学非才の身ですので、ご交誼の上、いろいろとご教示をお願いします。

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2020年11月 6日 (金)

20201031「勝手に三岐鉄道北勢線ハイキング『員弁街道を歩く』(いなべ市藤原町山口~阿下喜)」(その1)……いなべ市藤原町長尾の常夜燈、本郷社、円琳寺、東泉寺、長尾廃寺から猪名部神社へ

 10月31日に出かけた「勝手に三岐鉄道北勢線ハイキング『員弁街道を歩く』(山口~阿下喜)」の本編その1です。「みえの歴史街道」にある「濃州道(員弁街道)」を歩くシリーズの最終回。濃州道は、桑名では員弁街道と呼ばれます。三岐鉄道北勢線とほぼ平行に通っています。この街道は員弁郡下から桑名城下へと続く道として発展したもの。3月15日に、桑名市三ツ矢橋から歩き始め(2020年3月15日:20200315「勝手に三岐鉄道ハイキング『桑名の員弁街道を歩く』」(三ツ矢橋から三岐鉄道北勢線・星川駅)(予告編))、この日は星川駅まで。続いて、3月29日には星川駅から東員駅まで(20200329「勝手に三岐鉄道北勢線ハイキング『桑名の員弁街道を歩く』(星川~東員)」(予告編))、夏を越え、10月3日には楚原駅から阿下喜駅(20201003「勝手に三岐鉄道北勢線ハイキング『員弁街道を歩く』(楚原~阿下喜)」(予告編))と歩いてきました。当初は、桑名市内の街道を歩くつもりで計画したのですが、せっかくだから終点まで歩こうということになったのです。

201031inabe0  この日は、今までのやり方ですと、前回のゴールであった三岐鉄道北勢線阿下喜(あげき)駅から、いなべ市藤原町山口の員弁街道の終点(ここで、亀山からの巡見道と合流します。巡見道は、幕府の巡見使が通った道)までを歩くのですが、そうするとゴールしてからが困ります。阿下喜駅に戻るには、来た道をトボトボ歩いて、倍の距離になります。藤原には三岐鉄道三岐線が通っていますが、その終点の西藤原駅までは、ゴール地点から3.2㎞はあります。そこで、考えた末に、タクシーで終点まで行って、阿下喜駅に戻るルートを採用。同級生K氏、畏友M氏と3人旅。

Img_7226c  天気は良好。三岐鉄道北勢線西桑名駅を8時23分に発車する阿下喜行き普通に乗車。阿下喜までは、20.4㎞。途中には11の駅Img_7230c_20201105045301 があります。単線ですから、何回か列車のすれ違いがありますし、最高速度は45㎞/hですから、阿下喜到着は、9時22分。ほぼ1時間、ガタンゴトンとゆられ、小旅行という感じ。運賃は¥510。途中からK氏も乗込み、沿線風景を眺めながら行きます。M氏とは阿下喜駅で合流。

Img_7235c_20201031192801  阿下喜駅のホームから見える藤原岳(標高1,144m)。我が家からも見えますが、ここまで来ると目の前。駅前にはタクシーImg_7248c_20201031192801乗り場はあるものの、待機しているクルマはなし。やむなく麻生田(おうだ)にある近鉄タクシー配車センターに電話で依頼したものの、「出払っていて、いつ戻るか分からない。『かなりお待ちいただきます』としか申し上げられません」と、好天なのに、いきなり暗雲が垂れ込めたような感じ(苦笑)。

Img_7237c  やむなく、阿下喜駅前で待つことに。駅の南にある軽便鉄道博物館の車両やレールを見たり、私は、上空にImg_7260c 飛んできたトビや、ロータリーの木にやって来たジョウビタキを撮影したりしていますが、タクシーはいっこうにやって来ません。駅前にいなべ市の福祉バス(無料)のバス停があり、目的地の山口を通る「立田線」があるのを発見。「これでいいじゃないか!」となったものの、発車時刻になってもやって来ず。よくよく見たら、「土日祝日は運休」(爆)。よくあるパターン。桑名のコミュニティバスも、日曜は運休。待つことほぼ1時間でやって来たタクシーに乗って、いなべ市藤原町山口まで移動。¥2,990。

Img_7281c  本来であれば、員弁街道の終点はさらに西へ200mほど行ったところですが、目印になるものがありません。そこで、この常夜燈のところで下車。ここから歩くことにしました。集落の入り口にある常夜燈で、「内宮外宮/村内安全」と彫られています。

201031inabe1  こちらが実際に歩いたルートマップの詳細図その1。北側に流れているのは、員弁川。田舎の街道ですから、「員弁街道」などという表示はありませんし、道標も建ってはいません。自作コースマップとGoogleマップ(これには「濃州道」という表示が出るのです)が頼り。しかしながら、円琳寺・地蔵堂の手前で南側の道を歩くところで、直進するというミス(苦笑)。まぁこれくらいはやむを得ないかも知れません。

Img_7287c_20201105060701

 さて、常夜燈の背後(西側)には、忠魂碑が建っていました。「故陸軍軍曹勲七等藤田学之碑」とあります。昭和19(1944)年に建てられていますので、第二次世界大戦に従軍された方のものと思われます。常夜燈の北東にImg_7293c_20201105060701 も、同じように、忠魂碑が3基ありました。「故陸軍歩兵上等兵藤田政治郎碑」「故陸軍歩兵田中鐵治郎碑」などとありました。このあたりの村から出征された方のものでしょう。

Img_7308c  スタートから800mほどのところに本郷社という神社がありましたが、コースマップを描いたキョリ測にはImg_7329c_20201105124501 載っていません。しかし、見つけてしまったからには、立ち寄ります。勧請年月は不詳。樹齢からして数百年以上の歴史を持つと推測されます。従来、天白天神だけが鎮座していたのですが、天保6(1835)年、八幡大神を久保の旧社地から遷し、天保91838)年、天照大神を神明社の旧社地(現在の地蔵堂:あとで訪ねるところ)から遷し、三神宮または三神社と呼ばれたといいます。

Img_7334c Img_7331c_20201105062001  主祭神は、火産霊命(ほむすびのみこと:火の神)。相殿神は、品田別命(ほんだわけのみこと:応神天皇)、天照大御神天白大明神(天白信仰(てんぱくしんこう)は、本州のほぼ東半分にみられる民間信仰。長野県・静岡県を中心とし、三重県の南勢・志摩地方を南限、岩手県を北限としている。様々な研究・解釈が行なわれたが、1980年ころから伊勢土着の麻積氏の祖神天白羽神(あめのしらはのかみ、長白羽神の別名)に起源を求める説が紹介されることが多くなった)、大山祇神(オオヤマツミノカミ:山を司る神)、麓山祇命(はやまつみのみこと:山の麓を司る神)、道反大神(おおみちがえしのかみ:伊弉諾尊が伊弉尊に追われた時、さえぎるために用いた石のことで、道反大神とも呼んだ)、手置帆負神(たおきほおいのかみ:紀伊の忌部(いんべ)の祖。国ゆずり・国土平定の話に登場し、笠づくりの役目をになった)、彦狭知神(ひこさしりのみこと:天照大御神が天岩戸に隠れた時、手置帆負命とともに天御量を作り、材木を切って瑞殿を作ったことによ、木工の祖神とされている)の8柱。ずいぶんいろいろな神様がいらっしゃいます。初めて名前を知った神様も多い。ウ~ン、神社の世界、神様も奥が深い。

Img_7324c_20201105062001  本郷社は、なかなかよい雰囲気の神社。杜も、左の写真のように巨樹からなっています。拝殿、本殿も上の2枚の写真のようImg_7338c_20201105062101 に、木々に囲まれ、厳かな雰囲気が醸し出されています。聖なる空間という感じ。燈籠も苔生していたりして、これもこの雰囲気に貢献している気がします。ということで、なかなかよいスタートを切ることができました(微笑)。

Img_7309c  本郷社のすぐ近くのお宅で、「鍾馗様」を発見。たいていは、屋根の上に鎮座しているのですが、ここは「塀の上の鍾馗様」になっています。K氏も、M氏も初めて見たそうですが、私はずいぶん前から見つけるたびに写真を撮っています。京都で多いそうですが(こちら)、桑名でも時々見かけます。

Img_7301c_20201105124101  本郷社の先、スタートから1㎞を過ぎたあたりで、東南の道に入るべきところを直進してしImg_7356c まいましたが、すぐに員弁街道に戻りますので、まぁご愛敬。田園風景もよい感じ。蕎麦の畑もあちこちにありますが、花の季節は終わり、実がついていました。

Img_7350c_20201105124701  「すばらしきふるさと 白瀨マップ」という大きな看板を過ぎると、員弁街道沿いに地蔵堂と円琳寺。地蔵Img_7358c 堂の詳細は、不明ですが、本郷社の説明板によればここに神明社があったと思われます。地蔵堂の前に立つ石柱には、「地蔵堂再建記念」と刻まれていました。

Img_7362c_20201105125501  地蔵堂の奥、西側にあるのが、青龍山円琳寺(せいりゅうざんえんりんじ)。真宗大谷派のお寺。門は、石の柱が立っており、さらに、鳥居かと見まごうようなものがついていて、お寺の門とは思えないイメージ。もとは天台宗でしたが、天和2(1682)年、本山4世常如(じょうにょ)上人の頃に真宗大谷派の寺となり、桑名の本統寺与力の寺となったそうです。

Img_7365c_20201031192801  桑名藩主・久松松平家の知遇を得て、その家紋「梅鉢」を賜り、使用を許されています。円琳寺は代々学者として有名な人物が多く、特に赤心校を開き郷弟の教育に尽くし「猪名部神譜」の大作を世に送った梅田春濤先生、その子香樟先生も漢学者として有名で、町内には碑文が多く残されているといいます。寺の西に春濤先生の碑(大賀賢励撰・市川進書)と赤心校の跡があるそうですが、事前によく調べなかったため、見てきませんでした。

Img_7378c_20201105130301

 円琳寺・地蔵堂のところで員弁街道は左折して、北に向かいます。1.8㎞ほどのところで員弁川を渡ります。本郷橋です。員弁川は、鈴鹿Img_7382c_20201105130301 山脈御池岳北麓に発し、桑名と川越町との境で伊勢湾に注ぎます。桑名あたりでは、町屋川と呼ばれ、河口部では川幅はかなり広いのですが、この辺りは、当然ながら、イメージが違います。

Img_7385c_20201105130301  橋の上から振り返ると、藤原岳が見えますが、北東の方向から見る眺めですので、いつも我が家から見ている藤原岳とはまったく違います。我が家から見えるところは、太平洋セメント藤原鉱山となっていて、石灰石が山容が変わるほど採掘されているのです。

201031inabe2  員弁川を越えて少し進むと、実測ルートマップはその2の範囲になります。員弁街道はいったん員弁川から離れて、小高いところを進みます。東泉寺、猪名部神社とお参りしたあと、またもやコースミス(苦笑)。しゃべっていて、地図を確認し忘れます。懲りないというか、反省しないというか。本来の員弁街道はオレンジ色のルートを行くのですが、大回りしてしまいました。

Img_7389c_20201105132501  2㎞を過ぎたところに長尾山東泉寺(ながおさんとうせんじ)。臨済宗妙心寺派のお寺。この一帯は、伽藍遺跡「長尾廃寺」Img_7405c_20201105132501 だといいます。長尾廃寺は、「長尾山福林寺」と号し、俗に「地蔵寺」として親しまれました。現在の、この東泉寺境内、及び付近一帯が廃寺跡とされます。平安時代の延暦年間(782年-806年)の創建と伝わり、猪名部神社の宮寺、白瀨城主・近藤弾正左衛門吉綱(北勢四十八家の一つ)の菩提所であったともいわれます。

Img_7392c_20201105132501  東泉寺についての詳細は不明。ネットでも、「ふるさと いなべ市の紹介(いなべ市観光協Img_7395c_20201105132501 会・ふるさといなべ市の語り部の会発行)」にも情報はありません。なかなかよい感じのお寺です。

Img_7398c_20201105132501  境内には稲荷社がありました。福寿稲荷大神。由緒などを書いたものはありません。社殿の背後には、階段があり、居合わせた方に伺うと、誰かの墓があり、その向こうに池か何かあると聞いたということでした。先ほどの長尾廃寺の説明板によれば、山頂付近には「長尾経塚」とも「員弁三郎行綱の墓」とも呼ばれる墓石があるといいます。員弁三郎行綱は、鎌倉時代員弁大領であった員弁家綱の子で、現在の東員町大木の御殿に居城し、源頼朝の騎射・巻狩の上意に従って、青少年の士気を鼓舞するため建久3(1192)年、追野原に於いて流鏑馬の神事を奉納したといいます。これが、東員町の猪名部神社で現在も行われている上げ馬神事のもと。

Img_7411c_20201031192801  東泉寺の少し東に猪名部神社。上述のように、東員町北大社にも同名の神社があります。「延喜式神名帳」にある「猪名部神社(伊勢国・員弁郡)」に比定される式内社ですが、どちらが延喜式神名帳の猪名部神社かは決着がついていないようです。近代社格では村社。創祀・創建年代は不詳。東員町北大社の猪名部神社と同様に、春澄善縄(はるずみの よしただ:平安時代前期の公卿(くぎょう)、学者。文章(もんじょう)博士。藤原良房と「続日本後紀」を完成。伊勢出身。本姓は猪名部)・春澄洽子(高子:はるずみの こうし)(平安時代前期~中期の女官。陽成天皇の即位にともない皇太夫人となった藤原高子との同名をさけ、洽子(こうし)(「あまねいこ」ともよむ)と改名。従三位、典侍。古今和歌集に和歌1首がおさめられている)の父娘の伝承が残っています。

Img_7417c_20201031192801  主祭神は、伊香我色男命(イカガシコオノミコト:古代日本の豪族・物部氏の祖にして、猪名部氏の祖神。天孫瓊々杵尊(ニニギノミコト:天照大神の孫)の兄、饒速日命(ニギハヤヒノミコト:物部氏の祖神)の六世の孫)。相殿神は、大山祇神(おおやまつみのかみ:山の神)、火産霊神(ほむすびのかみ=軻遇突智神(かぐつちのかみ):火の神)、春澄善縄宇迦之御魂命(うかのみたまのみこと:五穀、食物をつかさどる神)。員弁川の北岸、集落の中に鎮座するのですが、集落の西北隅の松林の中に春澄氏第宅跡と称する平坦な一角があり、土地の人はそこを「春澄屋敷」と称しているそうです。こちらにこのあたりの詳しい話があります。

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    逸見功: 統計ソフト「R」超入門〈最新版〉 統計学とデータ処理の基礎が一度に身につく! (ブルーバックス)
    今さら、なぜこういう統計ソフトの本を読むのか? と訝られると思うのですが、その昔、現役の頃には統計パッケージソフトIBM SPSSを使ってデータを分析して論文を書いていました。ただ、SPSSを始め、統計パッケージソフトは、値段がバカ高いのです。退職する前からこのRというフリーの統計処理ソフトが出て来て、ずっと興味を持っていました。先日、文庫本を買おうと思って本屋に行ったらこの本を見つけてしまいました(微笑)。今さらこれを使ってバリバリやる訳ではありません。むしろボケ防止かも知れませんが、昔のデータはそのままパソコンにありますから、これを使って、昔はやらなかった分析をしてみようと思っています。何か成果が出るかどうかは極めてアヤシいのですが、まぁゆるりといろいろやってみることにします。 (★★★★)

  • 林(高木)朗子, 加藤忠史, 林(高木)朗子, 加藤忠史: 「心の病」の脳科学 なぜ生じるのか、どうすれば治るのか (ブルーバックス)

    林(高木)朗子, 加藤忠史, 林(高木)朗子, 加藤忠史: 「心の病」の脳科学 なぜ生じるのか、どうすれば治るのか (ブルーバックス)
    たまにはこういう本も読まないと、認知機能が退化するかもしれないと思って(微苦笑)。というよりも、もともと神経心理学に興味がありましたので、本屋の店頭で見つけ、これは面白そうだと思って購入しました。うつ、自閉スペクトラム障害、ADHD、統合失調症、双極性障害など、現代人を悩ませる心の病について、脳にどのような変化が起きているか、最新の知見がまとめられています。最前線の研究者たちがわかりやすく説明しているのですが、知識ゼロで読むのはかなりキツいかも知れません。私は現役をリタイアして10年以上になりますが、その間にこれほど研究が進んだのかというのが正直な感想。心の病の原因は、1つとは限りません。心の病は「症候群」と見た方がよいと考えます。私自身が関わる自閉スペクトラム障害、ADHDなどの発達障害でもそうです。脳機能と心の病との関連について最新の知見を知りたい方にはおすすめ。 (★★★★)

  • 磯田 道史: 徳川家康 弱者の戦略 (文春新書)

    磯田 道史: 徳川家康 弱者の戦略 (文春新書)
    本の帯に「大河より面白い!」とありますが、本当にそうでした。午前中の散歩のついでに買ってきて、夕食までに一気に読み終えてしまいました。もったいない気がするくらい。松平元康がいかにして徳川家康になったか、さらに徳川将軍家がいかに続くよう礎を築いたかが、よく分かりますし、戦国時代から徳川幕府創世記までの歴史を見る目が養われる本です。それというのも、著者の磯田さんが古文書の権威で、一次史料を読みこなすだけでなく、場合によっては価値が怪しい資料まで傍証に用いて(怪しい資料でも使い道があるというのも良く分かりました)、ご自身の頭で考えた結果を実に分かりやすく解いてくれてあります。徳川家康の弱者の戦略のキーワードは、「武威」と「信頼」ということです。また、情報の取得、解読にも意を尽くしたことがよく分かります。混迷を深める世界情勢を読み解いて、我が国が進む方向を考える上でも役に立つ一冊。 (★★★★★)

  • 井手 正和: 発達障害の人には世界がどう見えるのか (SB新書)

    井手 正和: 発達障害の人には世界がどう見えるのか (SB新書)
    発達障害、とくに自閉スペクトラム症(ASD)の方では、感覚過敏や感覚鈍磨をよく伴います。「照明で目がチカチカする」「皆が話している教室では。音が鳴り響き絶えられない」「ケガをしてるのに、痛みを感じない」などさまざまな状況を呈します。著者は実験心理学や、認知神経科学を専門とし、ASDの方に見られる感覚過敏、感覚鈍磨は、脳機能の特性から来ていることを明らかにしてきています。ASDなど発達障害のあるご本人はもちろん、親御さん、教師など関わりを持つ方々は、このことをよく理解して支援にあたることがとても重要です。ASDを始めとして発達障害について、「わがまま」「自分勝手」「やる気がない」などと捉えてしまうと、支援どころか、理解もできなくなります。脳の働きによってさまざまなことが生じてきているという視点が必要不可欠です。この本は、感覚過敏・感覚鈍磨を手がかりにそういう視点について理解を深められます。 (★★★★)

  • 日本放送協会,NHK出版: NHK 100分 de 名著 中井久夫スペシャル 2022年 12月 [雑誌] (NHKテキスト)

    日本放送協会,NHK出版: NHK 100分 de 名著 中井久夫スペシャル 2022年 12月 [雑誌] (NHKテキスト)
    2022年12月のNHKのEテレ「100分de名著 中井久夫スペシャル」のテキストです。今頃(2023年2月)これをリストアップしているのはどうかという気もしますが、録っておいたビデオをみたのが最近なのです。中井久夫さんは、2022年8月にお亡くりになりましたが、日本を代表する精神科医のお一人であり、翻訳家、文筆家としても一流でした。現役の頃、中井さんの本はたくさん読みました。臨床心理学の分野でも「風景構成法」を導入した方として知られています。Eテレの講師である齋藤環さんは、中井さんを評して「義と歓待と箴言知の人」と書いておられますが、まさにそういう気がします。『最終講義』『分裂病と人類』『治療文化論』『「昭和」を送る』『戦争と平和 ある観察』が紹介されています。現在もウクライナで戦争が続いていますが、中井は「戦争は過程、平和は状態」とし、戦争は物語として語りやすく、とにかくかっこよくて美しい、それが問題だといいます。一方、平和は分かりにくく、見えにくいため、心に訴える力が弱いとします。「状態を維持する努力はみえにくい」のですが、戦争と平和に限りません。普段通りの日常生活を維持していくのも同じような気がします。戦争を経験していない人間が指導者層の多くを占めるようになると戦争に対する心理的抵抗が低くなるともいいます。「戦争には自己収束性がない」とも中井さんはいっています。われわれはやっかいな時代に生きていると痛感します。中井さんの本を多くの方が読むと、時代も変わるかも知れません。 (★★★★★)

  • 桑名三郎: 七里の渡しを渡った人達(久波奈工房)
    桑名と名古屋の宮を結んだ東海道唯一の海路「七里の渡し」をテーマにした歴史本です。船頭が旅人を案内しながら、七里の渡しを渡った歴史上の24人を紹介する内容。やさしい話し言葉で紹介されており、読みやすい本です。徳川家光、松尾芭蕉、明治天皇などが取り上げられています。著者は、桑名で歴史案内人をしながら、街の歴史を研究している、街道好きの方です。本は、桑名市内の書店とメルカリで¥1,200で販売。 (★★★★)
  • 磯田 道史: 日本史を暴く-戦国の怪物から幕末の闇まで (中公新書 2729)

    磯田 道史: 日本史を暴く-戦国の怪物から幕末の闇まで (中公新書 2729)
    磯田さんの本は面白い。というのも、話のもとには古文書があるからだと思う。その古文書も磯田さん自身が、古書店などで発掘してきたものがほとんどで、それ故、内容もオリジナリティが高くなる。この本は、戦国時代から幕末あたりを中心にさまざまな古文書の内容をもとに、例えば忍者の悲惨な死に方、江戸でカブトムシが不人気だった背景、赤穂浪士が吉良の首で行った奇妙な儀式などなど、興味深いエピソードを浮かび上がらせている。面白いので一気読みしてしまった。 (★★★★★)

  •  佐藤信(編): 新版 図説歴史散歩事典(山川出版社)

    佐藤信(編): 新版 図説歴史散歩事典(山川出版社)
    史跡や、寺社、町並み、城、美術工芸品等の見方がやさしく解説されている本です。「事典」となっていますが、いわゆる辞書とは違って、普通の本のスタイルです。索引が充実していますので、事典としても十分に使えます。最初の版をもっていますが、40年ぶりに改訂され、写真、図版も多く、歴史散歩の最強の味方です。 (★★★★★)

  • 日下部理絵: 60歳からのマンション学 (講談社+α新書)

    日下部理絵: 60歳からのマンション学 (講談社+α新書)
    今年1年、何の因果か(などと書くとお叱りを受けること必至ですが)、住んでいるマンションの管理組合の理事長を仰せつかっています。今年は、エレベーターリニューアル工事が最大のイベントで、それは無事に済んだのですが、前理事長から8年後に迫った第3回大規模修繕に向けて、修繕積立金が不足する見込みと申し送られました。確かにかなりの金額が不足しそうで、頭を悩ませていました。マンションに住みながら、そもそも基本的な知識が不足しており、管理会社のフロントマンの方の協力を得ながらシミュレーションなどをしていました。ネットであれこれ調べてはいたものの、それで得られる知識は体系的なものではありませんでした。この本は、事例を元にマンション管理について必要な知識が得られるように書かれており、まだすべて読み終えてはいないものの、とても役に立っています。任期残り2ヶ月半となって付け焼き刃ではあるものの、次の理事会に具体的に課題を申し送ることができるよう勉強中(笑)。 (★★★★)

  • 宮口 幸治: ドキュメント小説 ケーキの切れない非行少年たちのカルテ (新潮新書)

    宮口 幸治: ドキュメント小説 ケーキの切れない非行少年たちのカルテ (新潮新書)
    「ケーキの切れない非行少年たち」や「どうしても頑張れない人たち」の著者である宮口幸治さんの新刊です。前2著の内容をよりよく理解できるよう、「ドキュメント小説」として書かれたものです。主人公は、精神科医の六麦克彦。医局から派遣されて要鹿乃原少年院に勤務して5年。彼がそこで目にしたのは、少年院に堕ちてきた加害者ながら、あらゆる意味で恵まれず、本来ならば保護されてしかるべき「被害者」と言わざるを得ない少年たちでした。この内容は、前の2冊のように普通の新書では書き尽くせるものではなく、物語の形を借りざるを得なかったのでしょう。ただし、普通の小説として読むのには少し苦労するかも知れません。特別支援教育が普及して、知的障害や、発達障害のある子どもへの教育や支援は、以前に比べれば改善されてはいますが、最近は、家族の養護能力が十分でなかったり、親など家族自身に支援が必要なケースもたくさんあります。こうした中には、この本で取り上げられたような結末に至ることがあっても不思議ではないという気がします。極端な事例が集められていると思われるかも知れませんが、社会全体として真剣に取り組むべき課題が突きつけられています。 (★★★★)

  • 本田秀夫: 学校の中の発達障害 「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち (SB新書)

    本田秀夫: 学校の中の発達障害 「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち (SB新書)
    本田秀夫先生によるこのSB新書の4冊目のシリーズ。今回は、発達障害のあるお子さんの学校選び、学級選び、友達関係、学習や学力の悩み、不登校など、発達障害のあるお子さんの学校生活全般にわたって、どのような考え方に基づいてサポートしたら良いかについてまとめられています。それぞれ、親と先生とが、どのように取り組むことが基本となるか、解説されています。対策よりも予防的な工夫をコミュニケーション(要求ではなく)に基づいて行う、「学校の標準」を緩める、登校や成績を気にしすぎず、社会に出るための土台作りを考える、発達の特性には寛容になる、学びを大切にするが学力にこだわりすぎない、親と先生とが気づきを伝え合い相談、調整する、子どものモチベーションを重視するなど、具体的に書かれていて、分かりやすくなっています。発達障害のあるお子さんが小中学校で充実した学習が進められるための基本的な考え方やヒントが詰まっていますので、親御さんにも、先生方にもお勧めできます。 (★★★★★)

  • 佐々木秀斗: 小学生博士の神社図鑑 ぼくの近くにはどんな神さまがいるの?

    佐々木秀斗: 小学生博士の神社図鑑 ぼくの近くにはどんな神さまがいるの?
    サンドウィッチマン&芦田愛菜ちゃんMCの「博士ちゃん」に「三国志博士ちゃん」、「日本の神様博士ちゃん」として2回出演した佐々木秀斗君の自由研究を本にしたもの。何故これをここに取り上げたかというと、私のブログに載せた立坂神社の緑色の鳥居について、写真を提供して欲しという依頼が出版社からあったのです。私が提供した写真は、本書の162ページに「提供:猫の欠伸研究室」として載っています。ざっと読みましたが、大人でも、古事記や神社についてよく知らない方が、最初に手に取って基本的なことがらを知るには、わかりやすくて良い本だと思います。 (★★★★★)

  • 森 博嗣: 読書の価値 (NHK出版新書)

    森 博嗣: 読書の価値 (NHK出版新書)
    ネットで見つけ、新刊かと思って購入したのですが、4年前の本でした(微苦笑)。 若い頃に森博嗣さんの小説をすべて読んでいました。いつの頃からか、小説は読まず、森さんのエッセイだけを読むようになっています。「読書の極意を教える」と帯にはあります。もちろんそれについて書かれているのですが、私にはある種の知的生産の技術について著者の方法を開示していると読めます。「何でも検索できる時代にも、本を読む意味がある」というのは、よく首肯できます。また、「教養とは保留できる能力をいう」というのも確かにそうだと思います。自分の問題として抱続けられ、また、考え続けられるのは、容易ではありませんから。 (★★★★★)

  • 井川香四郎: 別子太平記 : 愛媛新居浜別子銅山物語 (文芸書)

    井川香四郎: 別子太平記 : 愛媛新居浜別子銅山物語 (文芸書)
    愛媛県新居浜市にあった別子銅山は、元禄3(1690)年、伝説の切上り長兵衛によって発見されてから、昭和48(1973)年の閉山まで、283年間にわたり、累計65万トンの銅を産出しました。これは、世界の銅の産出量の1/6にも達するといいます。巨大財閥住友の礎となっただけでなく、日本の貿易や近代化にも大きく貢献したのがこの別子銅山です。江戸時代には貨幣改鋳にも深く関わった世界屈指の鉱山を舞台に、そこに関わった人達を鮮やかに描いた、本当の意味での大河小説です。徳間時代小説文庫で読みました。  (★★★★)

  • 養老孟司, 池田清彦: 年寄りは本気だ―はみ出し日本論―(新潮選書)

    養老孟司, 池田清彦: 年寄りは本気だ―はみ出し日本論―(新潮選書)
    養老孟司先生と池田清彦先生の対談であれば、外れはありません。サブタイトルのように、「はみ出し日本論」ではありません。ど真ん中の日本論といってもよい本で、楽しみながら読めます。しかし、それは、自分のアタマできちんと考えているからこそ論じられる内容だと思います。常識や、マスコミで報道されることがらだけをフォローしていては、こういう風に考えることはできません。きちんとした理論、知識、データに基づかなければなりません。さらには、物事を捉える大きな枠組み、私の世代にとっては「パラダイム」といえるものが必要。それも、確固たるパラダイムが必要です。私にとってそれはある種の理想なのですが、なかなか難しい。しかし、まぁ、年寄りになったからこそ見えるものや、年寄りなりの知恵も働くようになるということもありますから、養老・池田の「怖いものなし」コンビを1つの目安として、言うべきこともいえるようになりたいものです。 (★★★★★)

  • 土井 善晴: 一汁一菜でよいと至るまで (新潮新書)

    土井 善晴: 一汁一菜でよいと至るまで (新潮新書)
    先に同じく土井善晴さんの「一汁一菜でよいという提案」を挙げましたが、入手したのはこちらが先。「一汁一菜でよい」というスタイルに至るまでの土井さんの修行、出会い、発見、迷いなどなどが書かれています。「家庭料理に失敗なんて、ない」、「すべては人を幸せにする料理に繋がる」というのが基本。具だくさんの味噌汁はおかずの1つになる。余裕があれば、食べたいものや、食べさせたいものをその都度調べてつくればよい。一汁一菜を入り口にして、一つ一つおかずをつくってみて、10種類ほどでもできるようになれば、それで幸せに一生やっていける。といった話があり、へぇーと感心させられました。これだけで健康に健やかに自足できるとも述べられています。一汁一菜なら、私にもできる、でしょうか?? (★★★★★)

  • 土井善晴: 一汁一菜でよいという提案(新潮文庫)

    土井善晴: 一汁一菜でよいという提案(新潮文庫)
    著者の土井善晴先生は、私と同世代。そして、私の世代にとってはあの土井勝さんの息子というイメージが強くあります。テレビなどにもよく出ておられ、なかなか面白い視点でものを見る人だなと思っていました。この本は,出版された当時(2016年秋)から知っていたのですが、手に取ったのはごく最近。文庫本を探していたのですがなかなか遭遇しなかったのです。「一汁一菜でよい」というのは、ご飯と具だくさんの味噌汁があればよいということです。家庭料理についての提案なのですが、実は、この本はもっと奥深いことを述べています。一言で言えば、日本文化や日本人の哲学について述べる中で、食や生活、生き方などについても論じられています。解説を書いておられる養老孟司先生は、それを「自足の思想」と表現していらっしゃいます。優しい、わかりやすい本ですが、実は奥が深い。著者の端正さもよく表れています (★★★★★)

  • 奥山 景布子: 流転の中将

    奥山 景布子: 流転の中将
    幕末の桑名藩主・松平定敬を描いた歴史小説。定敬は、実の兄で会津藩主である容保とともに徳川家のために尽くそうとしたものの、最後の将軍・徳川慶喜に振り回され、裏切られてしまいます。定敬は、それでも抗おうとしたのですが、国元の家臣たちはいち早く恭順を決め、藩主の座も追われてしまいます。朝敵といわれ、越後、箱館から上海まで流浪した定敬の波乱に満ちた人生と、秘めたる思いが生き生きと書かれています。定敬については、歴史講座で学んだり、本で読んだりしてきましたが、小説家の手にかかるとこのように立体的に、活き活きと動き出すものなのだと実感します。 (★★★★★)

  • サトウタツヤ: 臨床心理学小史 (ちくま新書)

    サトウタツヤ: 臨床心理学小史 (ちくま新書)
    たまには専門のアカデミックな本も取り上げます(微笑)。本屋でみつけ、購入。この本は、同じ著者が東大出版会から昨年刊行した「臨床心理学史」で果たせなかったことを果たそうと構想されたもの。果たせなかったのは、日本の臨床心理学史に触れることと、コンパクトな歴史記述だそうです。東大出版会の本は、読んでみたい気もしますが、¥7,000もしますし、内容もハードそうです。こうして臨床心理学の歴史を俯瞰してみますと、やはり実験心理学を抜きにしては臨床心理学も語れないといえます。私個人の考えでも、臨床心理学を学び、実践するには、実験心理学を学び、実験・調査などの方法で研究をした経験が必須です。臨床心理士、公認心理師の資格に関わり、心理学を志す人は多く、また、大学でも臨床心理学部や臨床心理学科もあります。しかし、私は、自分自身の経験からもやはり、実験心理学などの基礎心理学を抜きにして、臨床心理学は成り立たないと考えますし、学生も実験心理学を含めた基礎心理学を、少なくとも学部段階ではきちんと修得した方がよいと思います。本書を読んで、その考えはいっそう強くなりました。 (★★★★★)

  • 昭文社 旅行ガイドブック 編集部: 三重のトリセツ

    昭文社 旅行ガイドブック 編集部: 三重のトリセツ
    本屋に別の本を買いに行って見つけ、即買い(微苦笑)。私の好むタイプの本です。三重県の地形や地質、歴史、文化、産業などを、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント本。地図も歴史も文化も好きなのです。地図で読み解く三重の大地、三重を駆ける充実の交通網、三重の歴史を深読み!の3部構成。2017年11月にたまたまみつけたJRさわやかウォーキング「~四日市市制120周年記念~ 家族みんなで楽しめる四日市旧港街歩き」に行って以来、JRさわやか、近鉄ハイキング、勝手にハイキングで県内や近郊のあちこちに電車で行って電車で帰るハイキング/ウォーキングをしています。それによって訪ねたあちこちのことが改めてまとめられていて、とても楽しめます。各県のバージョンが出ているようです (★★★★★)

  • 磯田道史: 歴史とは靴である (講談社文庫)

    磯田道史: 歴史とは靴である (講談社文庫)
    歴史家・磯田道史さんが、鎌倉女学院高校で行った特別授業の記録と、ビリギャルの小林さやかさんなどとの対談を収めてあります。基本的には、「歴史の見方」についての本なのですが、それに留まりません。ものの見方、考え方を説いた内容です。むしろ、ものの見方、考え方を学びたい方にお勧めしたいと思うくらいです。ちなみに、タイトルは、「歴史は好きか嫌いかの嗜好品ではなく、安全に世の中を歩くためのむしろ実用品である」という意味です。これは、歴史の見方について、あまりよく理解されていないポイントと思います。講義録ですから、読みやすく、しかも大変おもしろい本です。 (★★★★★)

  • 久住 祐一郎: 江戸藩邸へようこそ 三河吉田藩「江戸日記」 (インターナショナル新書)

    久住 祐一郎: 江戸藩邸へようこそ 三河吉田藩「江戸日記」 (インターナショナル新書)
    この著者の前著「三河吉田藩・お国入り道中記」で読んだ、三河吉田藩(豊橋)の参勤交代の話も大変おもしろく読めましたし、江戸時代の藩邸の様子、殿様や家臣の仕事、暮らしなどに興味があったので、読んでみました。三河吉田藩に残る「江戸日記」などの古文書から、江戸の大名屋敷がどのようなところであったか、江戸で働く武士の状況、江戸の藩邸で起きた事件のいろいろ、藩邸の奥向きの様子、さらには、明治維新後の藩邸から子爵邸への変化について、リアルな武士の暮らしのもろもろがまとまっていて、とても興味深く読めました。三河吉田藩は、現在の愛知県豊橋市にあり、松平伊豆守家が長く藩主を務めています。松平伊豆守家は、「知恵伊豆」の異名を持つ松平伊豆守信綱を初代とし、忍藩、川越藩、古河藩、吉田藩、浜松藩と国替えを繰り返した後、寛延2(1749)年から明治維新まで三河吉田を治めています。 (★★★★)

  • 安藤 優一郎: 江戸の旅行の裏事情 大名・将軍・庶民 それぞれのお楽しみ (朝日新書)

    安藤 優一郎: 江戸の旅行の裏事情 大名・将軍・庶民 それぞれのお楽しみ (朝日新書)
    サブタイトルに「大名・将軍・庶民 それぞれのお楽しみ」とあり、さらに、オビには「300年前は えっ!? 今よりもっと愉快な旅行天国」ともあります。ただし、旅行を心から楽しめたのは、庶民に限られていたようです。参詣者を増やしたい各地の寺社、温泉、宿泊業者が積極的に営業したからです。一方、武士や大名は、トラブルメーカーだったといいます。公用で旅行したり、参勤交代したりなのですが、宿泊料のダンピング、備品の破壊などなどトラブルをまき散らしながらの旅であったり、権威を笠に着たりで、あまり歓迎されなかったようです。江戸時代の旅のエピソード満載で、楽しめる本です。 (★★★★)

  • 藤田 和弘, 熊谷 恵子, 熊上 崇, 星井 純子, 熊上 藤子: 心理検査のフィードバック

    藤田 和弘, 熊谷 恵子, 熊上 崇, 星井 純子, 熊上 藤子: 心理検査のフィードバック
    この本は、WISC-ⅣやKABC-Ⅱなどの知能検査の結果(アセスメント情報)を「子どもの自立と社会参加」により役立つものにしていくには、どのように伝えたらよいか(フィードバック)についてまとめられています。過去には、保護者、学校の担任、子どもたち自身に知能検査の結果を伝えることはされていませんでした。しかし、現在では、苦戦している子どもたちが、自分のことを理解し、自分なりにも工夫して、学習や生活スキルを向上させ、将来の自立と社会参加につなげるために、知能検査の結果(アセスメント情報)を子どもたち自身にも伝えるようになってきています。私も、相談では、お子さんに直接、フィードバックを行い、子どもたち自身が自己理解を深め、意欲的、積極的に取り組めるようにしています。この本は、子どもと支援をつなぐ、支援者をつなぐという視点から、心理検査のフィードバックについて基礎から応用、事例を含んでその全体像を把握できる、優れたものとなっています。 (★★★★★)

  • 新潮文庫: 文豪ナビ 藤沢周平 (新潮文庫)

    新潮文庫: 文豪ナビ 藤沢周平 (新潮文庫)
    藤沢周平の作品案内、小説に見られる名言集、映像化された作品の出演者や、関係者による評伝などによって藤沢周平の作品についてすべてとはいいませんが、かなりが分かります。私は、藤沢周平の小説が好きで、たぶんほとんど読んだと思います。ただそれは、15~6年以上前のことで、リストアップもしていませんから、すべて読んだかどうかについては、不確か。こういう本を読むと、もう一度読もうかという気になります。この本では、娘の遠藤展子さんの「父にとっての家族」がもっとも興味深く読めました。また、藤沢周平の言葉で私が気に入っているのは、「普通が一番」です。ほかにも、「挨拶は基本」「いつも謙虚に、感謝の気持ちを忘れない」「謝るときは素直に非を認めて潔く謝る」「派手なことは嫌い、目立つことはしない」「自慢はしない」という言葉が、遠藤さんが父から言われて心に深く残っていることばだそうです。 (★★★★)

  • 千正康裕: 官邸は今日も間違える(新潮新書)

    千正康裕: 官邸は今日も間違える(新潮新書)
    新型コロナのまん延にともなって、政治的な判断や、もろもろの政策は、迷走したといってもよいと思います。突然の全国一斉休校要請、いわゆるアベノマスクの配布や、閣議決定をやり直した一律給付金など、なぜああいうドタバタになるのか、国民の信頼が得られなかったというか、失ったというのか、ずっと疑問を抱いていました。著者は、元厚生官僚で、社会保障・労働分野で仕事をし、現在はコンサルティング会社を経営。この本では、最近のコロナ禍での出来事の背景を記述する中から、官僚主導から官邸主導への変化に、政治の仕組みの変化がついて行けていないからだとしています。これに関して、政治家、官僚ともに仕事のやり方を変えることが必要であるとともに、国民の側にも良い政策をつくるためには望まれることがあるといいます。 (★★★★)