アルフォンス・デーケン先生ご逝去
昨日(9月7日)の中日新聞朝刊にアルフォンス・デーケン先生が亡くなられたという記事が載っていました(こちら:リンク切れになるかも知れません)。デーケン先生は、日本に死生学の概念を広げたことで有名です。カトリック司祭で上智大名誉教授でいらっしゃいました。享年88。ドイツ生まれ。昭和34(1959)年、イエズス会から日本に派遣されてこられました。上智大学で教壇に立つ傍ら、1970年代から「死への準備教育」の必要性を提唱しておられました。
なぜ私ごときが、このようにデーケン先生について書くかといいますと、現役の教員時代、先輩の医学系のM先生から誘われて、「あいちホスピス研究会」に関わりを持ったのですが、その活動の中で、デーケン先生にお目にかかったことがあったからです。あいちホスピス研究会が、「生と死を考える会」の全国大会を主催したとき、私もその運営に関わりを持ちました。その全国大会の時、デーケン先生のお話を伺い、また、懇親会でお目にかかり、ことばをかけていただいた記憶があります。大変暖かいお人柄で、ユーモアに溢れた方でした。先生のお人柄に魅了されてしまい、ご著書も何冊か読ませていただき、死生学について勉強しました。
精神分析学で有名なフロイトは、「トラウワーアルバイト(Trauerarbeit)」(ドイツ語)という概念を提唱しています。英語では、「グリーフワーク(grief work)」で、日本語では、「悲嘆の仕事・喪の作業」といわれています。普通は、愛する人の死について考えたいとは思わず、死をタブー化してしまいます。しかし、デーケン先生の考えでは、相手を失う前に悲嘆教育を受ければ、上手に立ち直る道を歩むことができるとしておられました。
また、デーケン先生がおっしゃったことの中でよく覚えているのは、「ユーモアとは、にもかかわらず笑うことである(Humor ist, wenn man trotzdem lacht.)」という、ドイツの有名な格言です。ユーモアの才能は、生まれつきのものだと思われていますが、本当のユーモアは人生の中で苦しいときに生まれるものだということを意味しています。つまり、自分が苦しんでいるにもかかわらず、相手に対する思いやりとして笑いを示すのが、真のユーモアだという話です。
残念ながら、私自身は、その後は諸般の事情から、あいちホスピス研究会や生と死を考える会の活動からは離れてしまい、デーケン先生のご活躍や死生学の展開についてフォローしなくなってしまいました。しかし、あの時に教えていただいたいくつかのことは、今でも自分の中に活きている気がしています。ご冥福をお祈りします。
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コメント
白尾さん、こんにちは。
ご無沙汰していますが、お陰様で変わりなく過ごしています。
非常勤で遠隔授業をする羽目になりましたが、新しいことも覚えないと、ボケていくといけませんから、マジメにやっています。
さて、デーケン先生が亡くなられたこと、私も、同じように懐かしい気持ちと、淋しい気持ちとを抱いて、ついついこのような記事を書きました。
こちらを暖かく包み込んででくださるようなお人柄に直接触れることができたのは、大変貴重で、ありがたい経験でした。
投稿: mamekichi | 2020年9月 9日 (水) 17時51分
大変ご無沙汰しております。お元気でいらっしゃいますか。
デーケン先生がお亡くなりになられたことを新聞記事で読み、懐かしさと寂しさを感じておりました。一時期、デーケン先生の追っかけをしており、あちらこちらへ講演を聞きに行っておりました。デーケン先生の言葉が、今でも、学生とともに看護に関わる中で活かされております。謹んでご冥福をお祈りいたします。
投稿: 白尾久美子 | 2020年9月 9日 (水) 15時14分