20190602近鉄ハイキング「斎王まつり 日本遺産斎宮散策と王朝絵巻『斎王群行』」へ(その1)……斎宮駅を出発して、いつきのみや歴史体験館、古代伊勢道、斎宮歴史博物館、塚山古墳群を見て、歴史の道から北野公園でお昼
6月2日に行ってきた近鉄ハイキング「斎王まつり 日本遺産斎宮散策と王朝絵巻『斎王群行』」の本編、その1です。ようやく書き始めたという次第です(苦笑)。斎宮のことはずいぶん以前から知っていて、大変興味を持っていました。去年、JRさわやかウォーキングや、近鉄ハイキングで伊勢に何度か行きましたが、その途中、近鉄電車で斎宮(さいくう)駅を通る度に、斎宮遺跡を眺め、一度は訪ねたいと思っていました。
斎宮は、かつて伊勢神宮の祭祀にあたって、宮中から派遣された未婚の内親王や斎王の居館で、神宮の事務諸般を司った斎王宮がおかれたところです。地名もこれに由来しています。斎王宮の創設は奈良時代で、この斎王制度は天皇の代ごとに替わりました。後醍醐天皇のときまで75代続き、後醍醐天皇の皇女祥子内親王を最後として、以後廃絶しましたが、約 600年間存続しました。しかし、正確な所在地は長い間不明で、幻の都といわれていました。昭和48(1973)年以来の発掘によってその範囲は 160haにも及ぶことが明らかとなり、多くの貴重な遺物が発見されています。昭和53(1978)年、斎宮跡の全域が史跡に指定されました。
当日は、朝から曇り空で夕方には雨という予報でしたが、行きたいという気持ちが強く、出かけました。結論から書くと、大満
足であります。この日のハイキングの受付は、近鉄山田線・斎宮駅で9時20分から10時半。斎宮は、松阪と伊勢の間。桑名駅を8時42分に出る松阪行き急行に乗車。松阪駅には9時49分着。ここで10時7分発の賢島行き普通に乗り換え。斎宮駅には、10時20分着。¥1,070。乗車時間は1時間20分。かなり遠い(笑)。右は、新潮社が発行した「日本鉄道旅行地図帳」の「関西1」から借りました。乗車距離は、55.1㎞あります。もう少し行けば、伊勢市駅や、宇治山田駅。
こちらが今日のコースマップ。斎宮駅の史跡公園口改札前から、いつきのみや歴史体験館、古代伊勢道を通っ
て、斎宮歴史博物館へ。さらに、歴史の道を通って、田園地帯を抜け、花菖蒲群落。ここには、私の好きな野花菖蒲の群落があるはず。そこから、斎宮に戻って、平安の杜で「斎宮群行」出発式やパレードを見て、斎宮駅がゴールという、マップ上は約6㎞のコース。右は、実際に歩いた実測ルートマップ。実は歴史の道から斎宮の森史跡公園に出るところで、1本早く曲がりすぎました。斎宮史跡の中を歩き回りましたので、ハイキングで歩いたのは、8.1㎞。自宅から桑名駅往復が1.8㎞ですので、合計9.9㎞。スタートは、10時28分。
実際に歩いたルートを少し詳しく描いたものが、左の実測ルートマップその1。まずは、斎宮駅・史跡公園口改札の目の前にあ
る「いつきのみや歴史体験館」へ。「いつきのみや」は、漢字で書けば「斎宮」。いつきのみや歴史体験館は、斎王制度660年間の中で1番華やかだった平安時代にスポットを当て、歴史体験ができる施設です。
建物は、平安時代の貴族の住まいであった「寝殿造(しんでんづくり)」を模したガイダンス棟(左の写真)と、古代の役所
の建物をモデルとした体験学習棟(右上の写真)などから構成されています。木造の平屋造りで、古代の建築技法を取り入れ、木材の組み立に釘・金物等を用いない伝統的な工法で建てられています。
左の写真は、「葱花輦(ソウカレン)」。屋根の上に金色の葱(ねぎ)の花の形の飾りをつけた輿(こし)です。本来は、天
皇の略儀の行幸に用いるのですが、斎王が都から斎宮に赴かれるときにも使われました。ここではその名の通り、さまざまな体験ができます。古代の遊び体験としては、盤双六(ばんすごろく)、貝覆い(かいおおい)、蹴鞠(けまり)等が用意されています。右の写真は、貝覆い。
事前に予約すると、「平安貴族なりきり体験」もあり、十二単を着られるそうです。ただし、お値段はかなりのもののようです(微笑)。「平安装束試着体験」は、そこそこリーズナブルな値段で体験できます。無料でいつでも体験できるのは、「小袿(こうちき)を着てみよう」です(左の写真)。今から千年ほど昔、貴族の女の人が着ていた衣装「十二単」の一部分を復元したものです。まず、単(ひとえ)を着てそれから袿に袖を通すという体験。平安時代のお姫様になった気分が味わえるそうです。
いつきのみや歴史体験館を見て、斎宮駅前に戻り、さらに西へ。斎宮小学校の手前で右折し、北へ。古代伊勢道をしばらく歩
きます。古代伊勢道は、飛鳥時代から奈良時代に、都と伊勢神宮、志摩国を結ぶために整備された幹線道路のことで、現代でいうならば「国道(当時の表現であれば、「官道」)」です。現在の松阪市駅部田から一直線に伸びる伊勢街道はその名残と考えられています。その延長線は、櫛田川、祓川を越えると、現在の斎宮跡のすぐ南に至っています。平成18(2006)年に発見されました。写真は、それを復元したもの。道幅は約9m。
古代伊勢道を歩いたのは350mほどでしたが、飛鳥時代から奈良時代にこのように幅も広い、立派な道が整備されていたと
は、伊勢神宮や、斎宮はよほど重要な位置を占めていたと思います。スタートからほぼ1㎞で斎宮歴史博物館もある古里公園にやって来ます。時刻は10時51分。ここ古里公園は、6月1日、2日の斎王まつりに合わせ、斎王市やアトラクションが行われていて、かなり賑わっていました。私が着いたときには、大正琴の演奏会の最中でした。食べ物屋さんなど、露店も多数出ていて、お子さんを連れた方や、若者たちのグループルなどで大賑わいでしたが、ここは通過。
斎宮歴史博物館です。1.3㎞、時刻は、11時少し前。この博物館も一度は、来たかったところ。常設展と、この日まで行われてい
た平成31年度春季企画展「めでたいのいろいろ」とを見てきました。近鉄ハイキング参加者割引で、団体料金を適用してもらえました。常設展¥260、企画展¥160で、合計¥420。ちょうど11時から、映像展示室で、斎王の儀礼と都から伊勢への旅を再現した「斎王群行」(18分)が上映されますので、まずはこれを見ます。本音をいうとあまり期待していなかったのですが、実際には見入ってしまいました(笑)。
展示室は、「文字からわかる斎宮」と「ものからわかる斎宮」の2部屋から構成されています。前者では、斎王制度が整い、も
っとも繁栄した平安時代を取り上げ、斎王が選ばれて伊勢に赴き、都に帰るまで流れを「延喜式」などの文献史料を手がかりに紹介されています。斎王が乗った輿(葱華輦)(左の写真;いつきのみや歴史体験館で見たものと微妙に異なる感じがしました)や斎王の群行模型(右の写真)、原寸大の斎王居室復元模型(十二単姿の斎王と命婦の人形や調度)等が展示されています。
こちらが原寸大の斎王居室復元模型。さらに、斎宮に関係する古典文学の紹介もあります。有名なのは、「伊勢物語」第六十九段「狩の使」。伊勢物語のこの部分では、在原業平と斎王の恋の物語が描かれるのですが、その絵巻物も展示されています。これは、恬子内親王(やすこないしんのう)に関わる話。恬子内親王は、清和天皇の異母姉で、14歳で群行、18年間の長期に渡って斎王を勤めたのち、天皇譲位により29歳で退下しています。「昔、男ありけり…」で始まる「伊勢物語」六十九段「狩の使」に登場する「斎宮」のモデルであるといわれます。恬子内親王と、在原業平と間に一夜のロマンスがあったというのです。真実である確証はありませんが、昔から物語の形を借りた真実であると信じられてきました。
展示室2の「ものからわかる斎宮」では、30年余にわたる斎宮跡の発掘調査が明らかにした斎宮の姿が考古資料と模型によっ
て紹介されています。左の写真は、斎宮寮の復元模型(400分の1)です。これは、床面に設置した斎宮跡全体の陶板航空写真と組み合わせたもの。右の写真は、ちょっとわかりにくいのですが、斎王御殿復元模型。母屋には斎王の座が2ヶ所設定されていますが、この模型では右手の座で斎王に食事が供されているところとなっています。
続いて、企画展「めでたいのいろいろー瑞祥ときざしー」へ。こちらの展示は、この日(6/2)まででした。日本古代に定着
した「めでたい」、「めでたい」しるし、「めでたい」を演出する、「めでたい」を共有する、「めでたい」の記憶という5つのテーマに沿って展示がされていました。延喜式には「瑞祥のリスト」が載っていたという話にはとても興味を引かれました。大瑞(たいずい)には麒麟、鳳凰、白澤など実在しない動物が、上瑞(じょうずい)には白狼、白鹿など、まれに現れるものが上がっています。私が興味を持ったのは、先日、桑名市博物館で「改元と宸筆」を見たこともあって、「嘉永度改元難陳」という村田家に伝わる文書。江戸中期から後期の旧邸文書を管理した家だそうです。「難陳」は、改元時に挙がった候補に貴族たちが肯定・否定の意見を述べ合う儀式。明治もこのとき候補に挙がったというのは、桑名市博物館でも見ました。
斎王群行絵巻の実物も展示されていました。最後のやまと絵師といわれる河村長観氏のオリジナルだそうです。割りとゆっくり見て回りましたので、常設展とこの企画展「めでたいのいろいろ」を見終えたら、11時45分になっていました。斎宮歴史博物館は、スタートからまだ1.3㎞ほど。先が長いので、次に向かうことにします。
博物館から外へ出て斎宮歴史博物館前の信号を渡ったところに「塚山古墳群」がありました。斎宮歴史博物館および周辺に分布する群集古墳で、5世紀末~6世紀初頭の築造といわれます。
円墳と方墳、42基が発見され、そのうち13基が現存しているそうです。円墳は直径15m前後のものが、また、方墳は1辺8~12mのものが多く、周溝を備えています。右の写真は、塚山3号墳。周溝を含めると直径18m、高さ2mの円墳。ここからは須恵器、円筒埴輪が出土したそうです。
塚山3号墳の墳丘の北側裾部に、史跡の南西側から北辺を通り、東部エンマ川に続く、幅3~4m 、深さ4mのの大きな溝(防御用環濠)がみつかっています。これは鎌倉時代大溝。約2㎞にわたって伸びており、広いところで幅3.4m、深さ3m以上もあるといいます。これまでの発掘調査から、平安時代の終わり頃につくられ、鎌倉時代中頃まで使われていたと考えられています。斎宮の北側を区画するためのものとされています。
塚山3号墳の脇に歴史の道が通っており、ここを進みます。写真にもありますが、古代の代表的な歌人が読んだ斎宮に関する和
歌24首が、12本の擬木に刻みこまれています。実測ルートマップその1にありますが、指定されたコースではもう1本次の交差点まで行って右折することになっていたのですが、「斎宮駅」「いつきのみや歴史体験館」という看板があったので、何も考えずに曲がってしまいました。上園芝生公園のところまで行って間違いに気づき、左折。「斎王の森史跡公園」まで行って、正しいコースに戻ります。この公園の北側の道を東へ。
余談。上園芝生公園のところを歩いていたら、近鉄線に「しまかぜ」が行くのが見えました。反射的にシャッターを押してし
まいます(苦笑)。桑名あたりは10時40分頃通過していきます。一度乗ってみたいと思いつつ、果たせていません。指定されたコースに戻ったところに、「天然記念物 斎宮のハナショウブ群落 1.8㎞」の案内板。次は、ここへ行くのです。野花菖蒲の野生の群落があるというで、期待してきたのです。
途中、2.5㎞ほどのところで「酒まんじゅう 斎庵」。コースマップを呈示し、500円以上買うと特典ありとなっていましたが、立ち寄らず。まだ半分も来ておらず、先を急ぎたかったのです(斎王群行の出発式が13時からですので、それまでに斎宮跡に戻りたいと思っていました)。しかし、時刻はちょうど12時。昼をどうしようかと思いつつ歩いていると、斎庵から200mほどのところに北野公園。コースマップを見ると、この先ハナショウブ群落まで休憩や、昼食に使えそうなところはありません。北野公園で弁当を食べることに。
とくに何もない公園でしたが、ここで昼食&休憩としました。この日も懲りずに駅ナカファミマの弁当(苦笑)。ただし、幕
の内弁当にしてみました(揚げ物が多いのは変わりありませんねぇ。しかし、まつりのイベントで何か買って食べるというのもどうも、という気がします)税込み¥398。15分ほど昼食休憩。
キリも良いので、その1はここまで。その2は、田園地帯をひたすら歩いて、花菖蒲群落へと向かいます。
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