お知らせ

  • データの移行について
    2005年10月26日のブログ開始当初から、2024年3月31日までの記事は、「猫の欠伸研究室(アーカイブ)」に移行しました(http://blog.livedoor.jp/taichimaru151/)。 このココログの「猫の欠伸研究室」には、2019年1月以降の記事を残し、2018年12月以前の記事は削除しました(2019年1月1日から2024年3月31日までの記事は、両方にあります)。

レンズを通した自然観察

  • この「レンズを通した自然観察」ということばは、恩師のお一人が、私の趣味を形容しておっしゃったものです。2023年2月7日のブログに書きましたが、実はときどき思い出していることばです。お世話になった先生方はたくさんいらっしゃいますが、この恩師は、就職のことから学位論文の執筆、審査に至るまで本当にお世話になった先生です。「写真の撮り方を指南してもらいたい」ともおっしゃったのですが、これはお世辞と理解しています。私はほぼ隠居状態となって10年以上になりますが、今、改めてこのことばをかみしめています。この先生には結婚式の際に「理論と臨床をつなぐ仕事をするように」ということばをいただきました。体調を崩してそれには十分に応えられませんでしたので、せめてこの「レンズを通した自然観察」については、極めるとまでは行かないにしても、もう少し精進したいと考えています。

ブログ名の由来

  • ブログ名の「猫の欠伸研究室」は、中日新聞の夕刊に連載されている「紙つぶて」というコラム(平成22(2010)年1月13日)に、元新党さきがけ代表の武村正義さんが書いていらっしゃった「人生は猫の欠伸である」というコラムによります。武村さんは、“チベットで鳥葬を取り仕切る僧侶が、「人の生涯は猫の欠伸のようなもの」と語った”と書いていらっしゃいます。「猫の欠伸のようなもの研究室」としたかったのですが、ちょっと間延びしますので、「猫の欠伸研究室」とした次第です。「研究室」とつけたのは、過去、大学に勤めていたことがあるということやら、知らないこと、分からないことがあると何でも調べずにはいられない性分であること、屁理屈、講釈が大好きであることからであります。しかし、「人生の研究をしている」のではありません。「大所高所」からのご高説を開陳できるほどの力量はないが故、「小所低所」からの戯れ言をつぶやくのが精一杯(苦笑)。身の程に合わせ、勝手なことを書き綴っていますので、御用とお急ぎでない皆様には、今後ともご交誼のほど、お願いいたします。是非ともコメントを頂戴し、少しでも世間を広げたいと熱望しております。

モットー

  • 座右の銘というほど立派なものはありませんが、過去に体調を崩し、療養生活を送った経験から、私なりのモットーをつくっています。その一つは、「淡々と飽きもせず……」です。自分では、「……」と余韻を残しているところが気に入っています。こだわりすぎや、やり過ぎはよくありません。若い頃はムキになってやったこともありますが、今はこのように「淡々と飽きもせず……」が自分に合っていると思っています。もう一つは「晴耕雨読」ならぬ「晴歩雨読」です。マンション暮らし故、耕すところはありません。代わりに歩いています。そして、最近(令和3(2021)年に入った頃から)追加したのが、「散歩生活、ときどき仕事」。NHKのテレビ番組に「晴れ、ときどきファーム!」というものがあります。これのもじり。浅学非才の身ですので、ご交誼の上、いろいろとご教示をお願いします。

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2019年3月 8日 (金)

20190302近鉄ハイキング「ふるさとの味と春風を感じて悲劇の千奈美姫に想いを馳せる 四日市うつべのヤマトタケル・芭蕉の足跡を体感!」へ(その2)……采女城跡、上品寺、小松神社、中山寺へ

 3月2日の近鉄ハイキング「ふるさとの味と春風を感じて悲劇の千奈美姫に想いを馳せる 四日市うつべのヤマトタケル・芭蕉の足跡を体感!」のその2です。その1では、塩浜駅をスタートして、川尻公園立ち寄り、観音寺と小古曽神社を見て来ました。
190302kintetsuhikingsiohama2 実際に歩いたルートマップは、こちら(その2)です。いきなりの余談というか、個人的な回顧で恐縮ですが、小古曽神社の西にある「四日市南自動車学校」は、私が鈴鹿に就職したとき(昭和54(1979)年)に通って、運転免許証をとったところです。冗談半分に最終学歴は「四日市南自動車学校卒業」といっております(笑)。就職してその秋から冬の初めは、厚生省(当時)の筋ジストロフィー研究班の仕事が忙しくてなかなか通えず、ほとんど期限ギリギリの半年かかってようやく試験に合格しましたので、忘れられません。三重県の運転免許試験場も、今の垂水ではなく、高茶屋にありました。
Img_4747c 話を戻して、小古曽神社から県道407号線に出て、内部駅前を通って、内部川(うつべがわ)の堤防に出ます。小古曽神社(3.5㎞地点)からは、1㎞あまり。内部川は鈴鹿山脈の鎌ヶ岳と入道ヶ岳の間に発し、鈴鹿川に流れ込みます。この内部川の左岸を1.5㎞ほど上流に行ったところに采女城跡があります。この写真で奥に見える丘というか、小山というか、その辺りが采女城跡。
Img_4755c 采女城跡の手前、ルートマップでは、市立内部幼稚園(ここには、内部小学Img_4756c 校もあります)のすぐ北にこんな案内板。「矢矧(やはぎ)橋と采女城ゆかりの地名」とあります。采女城があった鎌倉時代から戦国時代、内部川のこのあたりに「矢矧橋」がかかっていました。このあたり一面が竹藪で采女城の家臣が岳で屋をつくっていたことからその名が付いたといいます。さらに、城跡の西側には「ごくろ橋」という橋がかかっており、それは城の番所があってそこに詰めていた武士が交代のときに「ご苦労」といったことに由来するとか、橋のたもとで女子衆が洗濯をしていて、通る人に「ご苦労さん」と声をかけたことに因んだというそうです。
Img_4796c この写真は、采女城跡を見てから、足見川に架かる橋から上流を見たもの。奥に白く見えているのが、現在のごくろ橋。ここから見ただけで近くには行っていません。上掲の案内板には、「なこの坂」についても書かれています。采女城が信長勢に攻められたとき、敗残の武士・農民が泣きながら逃げたのがその名の由来とありますが、コースからは外れていました。四日市では、各地区でそれぞれの名所・旧跡の案内板が整備されています。これは歴史散歩好きにとってはとてもありがたいことです。
Img_4760c 「矢矧橋と采女城ゆかりの地名」から400m、スタートからは5.7㎞で采女城跡の入り口に到着(ちょうど11時)。藤原氏を祖先とする後藤家の後藤伊勢守基秀が文Img_4764c_2 応元(1260)年、先陣武功があって、三重郡采女郷の地頭になり、ここに移住、采女山(北山)に城郭を築いたのが始まり。以来三百有余年、連綿と治世したものの、後藤采女正藤勝のとき、織田信長の侵略に遭います。隻毛・蒲生毛に一味して戦ったものの、永禄11(1568)年に落城。
 後藤家は上記のように藤原氏を祖先としており、後藤兵衛実基は、保元・平治の乱に武功を顕し、後藤左衛門尉基清(ごとうさえもんのじょうもときよ;実基の養子)が検非違使として京都守護職に奮闘するなど名門とです。
 ちなみに、保元・平治の乱は、保元元(1156)年と平治元(1159)年に京都で相次いで起こった内乱で、いずれも宮廷内の権力争いに原因があり、短期間の戦闘で勝敗が決したのですが、武士の時代の到来を告げ、平氏政権が成立するきっかけとなりました。
Img_4766c 少し離れたところに建つ案内図。等高線も書かれていますが、これで地Img_4772c_2 形が読み取れるほどの能力はありません。しかし、せっかくやって来たのですから、登っていて見てくるしかありません。降りてきた方に伺うと、郭の跡や、深井戸の跡があるということでした。40mほどの台地にあり、200m×250mほどの広大な城郭跡です。40mというと大した高さではないように思えますが、実際に登るとなるとかなり大変でした。「難儀した」という感じ。
Img_4774c
Unemecastle この図に示したように、五の郭のところから一の郭まで登ってみました。五の郭の手前に「虎口(こぐち)」があります。虎口は、大手門などの城門が備えられたところで、城郭の重要な部分をなします。防御・攻撃の両面の機能があるところ。
Img_4779c 一の郭。キョリ測でみると、約60mの標高。かなり息が切Img_4781c れました(苦笑)。采女城は丘陵尾根を利用した「放射状連郭」の平山城。周囲には土塁や空堀が巡らされ、ここ一の郭には深井戸があり、水を得るようにしてあります。左の写真の中央にある囲いの中にその深井戸の跡。
Img_4787c 永禄11(1568)年、織田信長の家臣・滝川一益が、6,000余人を率いて攻め立てます。采女城には500人あまりの塀が集結していたのですが、大混乱を来たし、あるものは奮戦して討ち死に、あるものは敗走。城主・後藤采女正藤勝は割腹して果てたと伝わります。そのとき、奥方や千奈美姫は、あとを追って深井戸に身を投げて亡くなったといいます。後世、人々の間では、この古井戸から「夜な夜な女のすすり泣きが聞こえる」とか、「馬のいななきや、女人の悲鳴が細く尾を引く」などと語り継がれているそうです。入り口の案内板には「哀れなり」とありましたが、まさにそういう気がします。
 采女城跡の一の郭で一休み。さらにこの日は暖かかったので、初めに来ていったウィンドウ・ブレーカーでは汗を掻きましたので、持参した薄手のものに着替えました。采女城跡から降りて、スタートから6㎞。次の上品寺を目指します。釆女町から貝家町へ。
Img_4802c 6.8㎞地点に開徳山上品(じょうぼん)寺があります。ここは、真宗高田派Img_4805c のお寺。内部(うつべ)地区貝家(かいげ)町にありますが、その地名は、上品寺の門階の下に位置する階下(かいげ;文字通り、階段の下ということ)に由来するといわれています。嘉祥2(849)年、土師宿禰岩次(はじすくねがんじ)が建立した成保寺(じょうほうじ)が始まりと伝え(開山:澄順法師)、寛正元(1461)年天台宗から浄土真宗になり、元和元(1615)年現在地に移り、延宝7(1679)年上品寺と改名しています。
Img_4809c ご本尊は、阿弥陀如来。本堂に向かって左手(南側)には釈迦堂(1736

Img_4814c

年・建立)があり、ここには釈迦如来坐像が安置されています。
Img_4818c この釈迦如来坐像は、もとは成保寺の本尊であったといます。木造、漆箔、彫眼で、平安時代前期釈迦如来像(10世紀、像高99cm、市指定文化財)は、江戸時代の初めに上品寺に移Img_4816c されたといわれ、現在も上品寺に引き継がれ、市指定文化財となっています。樟の木を用い、頭部と胴体を同じ木材で作る一木の像。この像は、体の内部に大きく開いた洞(うろ)があります。しかし、それは干割れを防ぐために人工的に彫られたものではなく、仏像を作る前からそのような状態であったと考えられています。今日は、ハイキングに合わせて特別に開帳されていました。
Img_4823c たびたびの余談。中山寺を出て再び、内部川の堤防に出ますが、そこにImg_4824c 可愛らしい、今まで見たことがないタイプの飛び出し坊や・嬢ちゃん。あちこちで見かけると、ついつい写真に撮ってしまいます。個人的な趣味(まぁ、ハイキング・ウォーキングも、ブログもそうではありますが)で恐縮。
Img_4827c 貝家橋の北詰にこんなお堂のような建Img_4828c 物。コースマップには「お堂が歯医者さんに」とあります。確かに歯科医院でした。わざわざお堂のような建物を建てたのでしょうか。
Img_4832c 貝家橋をわたって内部川右岸へ。300mほどでまた小松橋を渡って、内部Img_4834c 川左岸へ。北小松町に入って、小松神社を目指します。その手前にまたもやお堂か、お寺のような建物。ここは、公会堂とありました。そういえば、2月16日 の近鉄ハイキングのときも、四日市市智積町で、「延福寺跡」が智積公会所になっていました。(20190216近鉄ハイキング「酒蔵みてある記 銘酒『鈿女』伊藤酒造と智積養水をたずねて」(完))。
Img_4837c 公会堂のすぐ西に小松神社があります。ご祭神は、建速須佐之男命(タケハヤノスサノオノミコト)、大山祇命(オオヤマツノミコト)。三重県郡家Img_4839c (「みえ あがた ぐんけ」と思います。近鉄湯の山線・桜駅の北東に県地区があります)・土師辿馬手の嫡子に小松という人があり、聖武天皇の天平3(731)年、前杵開発田一二町をなし、この領土の名により小松村といったのですが、この頃、産土神として小松神社を創建したことに始まるといいます(神社検索・三重の説明)。明治41(1908)年、波木町にある加富(かふ)神社へ合祀されましたが、崇敬者の熱意により昭和17(1942)年に分祀されています。鳥居脇に子ども用の自転車が写っていますが、訪れた時、子どもたちが鬼ごっこか何かで遊んでいました。
Img_4841c 合祀された名残か、境内には「加富神社遙拝所」がありました。この遙拝Img_4850c 所は、大正12(1923)年に建てられたとあります。加富神社は、小松神社から北へ1.1㎞ほどの、足見川南岸山麓に鎮座しており、古くから采女七郷の総氏神とされています(こちらも参照)。
Img_4852c 鳥居の両側に、「平和の礎」、「表忠碑」などが合計3基あります。左の写Img_4848c 真は、「平和の礎」。これは、内部地区が建てたもので、英霊24柱を祀っています(三重県遺族会のサイトを参照)。右の写真は、「表忠碑」。「陸軍歩兵軍曹勲七等公七級堀君碑」と初めの方にありました。日露戦争に従軍し、奉天で戦死された旨の記述がされています。
Img_4846c_2 もう1基がこちら。「故陸軍輜重(しちょう)輸卒(ゆそつ)古市平吉君碑」とあります。石碑は、いずれも裏を見てきませんでした(裏に回りにくかったため)ので、これについては詳細は不明。「輜重」は、軍隊の糧食・被服・武器・弾薬など、輸送すべき軍需品の総称。「輸卒」は、輸送を任務とする兵卒。「輜重輸卒」は、旧陸軍で、輜重兵の監視のもとに軍需品の輸送に当たった兵卒。昭和6(1931)年、「輜重兵特務兵」と改称されていますから、日清戦争または日露戦争に従軍された方と思われます。なお、三重県遺族会のサイトに、「英霊碑」があるとされていますが、これには気づきませんでした(内部地区が建立し、出征軍人7柱を祀るとあります)。
Img_4861c  小松神社でほぼ8㎞、時刻は11時40分でした。ここから南へ。内部川をImg_4865c 渡って、南小松町。スタートから8.8㎞ほどのところに月見山中山寺(がっけんざんちゅうざんじ)。月見山の山号は、ここから東に月見亭があって、毎年9月の十五夜に月見をしたことに由来します。
Img_4867c 真宗高田派のお寺。高田本山専修寺第十世真慧(しんね)上人開基の旧跡寺院です。寛正2(1461)年、小松中山(今の北小松町)に建立されたのですが、法難にあって炎上し、弟子蓮蔵坊慶林が南小松に移転再建し、現在に至っています。真慧上人の御遺物として、山門に掲げる「月見中山」の扁額や上人の身の危険を告げて動き出したと伝えられる「歩行石」があるのですが、どちらもしっかり見てこず、惜しいことをしました。このほか、上掲の説明板によれば、たくさんの法物、真慧上人のご遺物があるようです。
 ちなみに、真慧上人は、室町後期の浄土真宗の僧。伊勢専修寺第10代。下野の高田専修寺9世・定顕の長男かとされます。常陸の浄土宗迎雲寺等で顕密を学び、高田に帰った後、伊勢・三河・越前・加賀に布教し、高田専修寺を継ぎ、伊勢一身田に無量寿院(現在の高田本山専修寺)を建立し、高田派教団の勢力を拡大しました。
Img_4863c 中山寺には、四日市市の天然記念物に指定されているモッコクがありまImg_4882c す。本堂裏西北方、書院廊下の西側に聳えています。根元周囲は6.9m、胸高周囲3.8m、樹高は13.2mで、樹齢は300年を超えるといわれています。「超古木」、「大径木」として、全国でも有数の大樹で、県下では先に出るものがないそうです。このモッコクは寺がここに再建された時(1500年以前)に植えられたと伝えられていますので、樹齢は450年以上と推定されています。ちなみに、モッコクは暖地に分布する常緑の樹木で、樹形が良く、葉が枝先に輪生状について見栄えが良いので、庭木として珍重されているそうです。
Img_4896c 中山寺を出たのが、12時を過ぎていました。まだ先がけっこうありますので、近くのコース沿いにある南小松子ども広場・運動広場で昼食としました(9.5㎞地点)。広くて、日当たりのよい運動広場のベンチです。今日は、ファミマの「バラエティおかず&おむすび」弁当(税込み¥368)。リュックに入れているうちに、偏ってしまいました(苦笑)。味には変わりありません。ここからは、昔、結婚した当初住んでいた笹川の公団住宅も見え、懐かしく思いながら弁当&休憩をしてきました。
 その2はここまで。その3は、この先、田園地帯にある普賢菩薩、采女八幡社などから。

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    佐伯 泰英: 陰流苗木(かげりゅうなえき)~芋洗河岸(1)~ (光文社文庫)
    今回も特別に時代小説を取り上げます。この2つ前の本に佐伯泰英さんの「恋か隠居か 新・酔いどれ小籐次(二十六)」を取り上げ、これは佐伯さんの300冊目の「文庫書き下ろし小説」だと書きました。今回のこの本は、301冊目です。しかも、80歳を越えて、さらに新しいシリーズを始められたのです。美濃を食い詰めた浪人・小此木善治郎が、職なし、金なし、住むあてなしながら、剣の達人にしてとぼけた侍であるものの、なんとも頼りになる存在で、親切な住人や大家によって受け入れられた長屋の秘密と謎の渦に巻き込まれるという設定。これまたおもしろそうなシリーズです。毎月刊行で、全3巻の予定とか。第2巻が待ち遠しい内容です。 (★★★★★)

  • 養老孟司, 鵜飼哲夫: なるようになる。 僕はこんなふうに生きてきた(中央公論新社)

    養老孟司, 鵜飼哲夫: なるようになる。 僕はこんなふうに生きてきた(中央公論新社)
    養老先生の新刊が出たというので早速入手し、ほぼ一気に読み終えました。「はじめての自伝!」といううたい文句で、帯には「虫と猫と、バカの壁。考え続けた86年」ともあります。養老先生は、かなりしつこい性格でいらっしゃるようで、疑問に思ったことは「まぁいいか」などと思わず、考え続けてこられたそうです。その結果が、これまでのユニークな著作に結実しています。それはさておき、考え続けた結果、「なるようになる。」というのが、養老先生の現時点での結論だそうです。「なるようにしかならない」ではなく、「なるようになる。」のです。物事は、はっきりとした目的意識があって進むのではないので、「なるようになる。」なのです。忘れてしまったような些事がその後の人生を動かしてきたかもしれないともあります。なるほどと、この本を読み、養老先生の来し方をいささか知ると、納得できます。というか、納得した気になっているだけかも知れませんが…… (★★★★★)

  • 佐伯 泰英: 恋か隠居か 新・酔いどれ小籐次(二十六) (文春文庫)

    佐伯 泰英: 恋か隠居か 新・酔いどれ小籐次(二十六) (文春文庫)
    佐伯泰英さんは、この本で「文庫書き下ろし小説」というジャンルで300冊刊行を達成されました。佐伯さんの時代小説はすべて読んでいます。まさにストーリー・テラーといえる作家で、実に読み応えのある時代小説をたくさん書いておられます。このシリーズは、いったん完結となったかと思ったのですが、この「恋か隠居か」で復活しました(と理解しています)。隠居を考える小籐次ですが、小籐次親子に挑戦状が届くところから始まる物語。今回も楽しめました。 (★★★★★)

  • 安藤優一郎: 15の街道からよむ日本史 (日経ビジネス人文庫)

    安藤優一郎: 15の街道からよむ日本史 (日経ビジネス人文庫)
    街道歩きを少ししています。三重県内では、東海道のほとんど、伊勢参宮街道、美濃街道・養老街道などを歩きました。もっとあちこちの街道を歩きたいと思っていますが、そのときにこの本が出版されましたので、早速入手して読みました。芭蕉の奥州街道、伊勢参宮街道のお伊勢参り、武士の旅日記などの章をとくに興味深く読みました。主要な街道を取り上げることで読みやすい歴史物語となっています。 (★★★★)

  • 大芦治: 心理学をつくった実験30 (ちくま新書)

    大芦治: 心理学をつくった実験30 (ちくま新書)
    「誰もが一度は耳にしたことがある有名実験の背景・内容・影響を紹介、新たな心理学像を呈示する」と帯にあります。心理学全般に関心を持つ社会人を読者に想定しているといいますが、私には心理学史のテキストとして、あるいは、入門段階の心理学を学んだ方がさらに学習を深める際に読む本としてもよいかも知れません。 私自身も、心理学の教科書を執筆したことが何度かありますが、そこに引用する理論や実験については、いわゆる「孫引き」をしてしまったこともよくありました。この本の著者は、可能な限り原典にあたって執筆していらっしゃり、その意味では参考になったところが多々あります。 ところで、著者は心理学の未来にあまり明るい展望を持てないようです。臨床心理士、公認心理師の資格が人気を集め、心理学部などもたくさん設けられました。私自身の勝手な個人的意見を書けば、資格ができると、レベルは下がると思っています。根拠はありません。個人的な印象によるものです。私は実験心理学でトレーニングを受け、臨床心理の分野に進みました。心理学の基本は実験心理学と個人差測定心理学にあると思っています。学部段階からいきなり臨床心理学プロパーに進むのは、相当よろしくないと思います。臨床実践にあたってはその基礎となる確かな、科学的な学問(知見、理論なども含む)が必要です。また、仮説演繹法などのものの見方もきちんと身に付ける必要があります。これらは実験心理学と個人差測定心理学から養われると思っています。 この本は、基礎的知識がない方がいきなり読むのは難しいでしょうが、科学的心理学を学びたいと思う方にはよい参考書となります。 (★★★★)

  • 磯田 道史: 家康の誤算 「神君の仕組み」の創造と崩壊 (PHP新書)

    磯田 道史: 家康の誤算 「神君の仕組み」の創造と崩壊 (PHP新書)
    磯田先生の書く本はどれもとても面白く読めます。といっても、私が読むのは研究書ではなく、新書だからなのかも知れません。この本は、家康がなぜ幕藩体制を創ることができたのか、江戸時代、誰が神君の仕組みを崩わしたのか、幕末、かくして神君の仕組みは崩壊した、神君の仕組みを破壊した人々が創った近代日本とは、家康から考える日本人というものという5つの章からなっています。家康は天下を取ったあとこの国を支配するのに巧妙な仕掛けをつくり、平和な時代が続いたのですが、誤算が生じて、徳川政権が変質し、崩壊に至ったと著者は考え、そのプロセスを俯瞰しています。いろいろな時点で「神君の仕組み」を骨抜きにする人物や政策が表れたといいます。組織が弱体化する姿を見ておくと、自分たちの劣化を防ぐ力が養われると磯田先生は述べています。徳川時代が現在にあたえている影響も多く、その分析も興味深く読めます。 (★★★★★)

  • 多井 学: 大学教授こそこそ日記

    多井 学: 大学教授こそこそ日記
    文庫本を買いに本屋に行ったら、平積みしてあるのを見つけて思わず買ってしまいました。私もその昔、ご同業だったことがあったからです。帯に「いくらでも手抜きのできる仕事」とありますが、私の経験でもそういう人もそれなりにいました。ちなみに私自身は、こき使われたと思っています。さらに「現役教授が打ち明けるちっとも優雅じゃない生活」とも書かれていますが、これはまさに私の体験と同じ。本に書かれていることがらも、ことごとく納得できます。私は、「そうそう!」といいながら読み終えました。大学教授で儲けている人はごく一部などなど。まぁ大学教授の仕事や生活に興味をお持ちの方は、さほど多くはいらっしゃらないとは思いますが、お暇な方にはどうぞ。 (★★★★)

  • 宮口 幸治: 境界知能の子どもたち 「IQ70以上85未満」の生きづらさ (SB新書)

    宮口 幸治: 境界知能の子どもたち 「IQ70以上85未満」の生きづらさ (SB新書)
    「境界知能」という言葉は、専門家はよく知っていると思いますが、一般のご父兄や、小中学校の先生方にはあまりなじみがないかも知れません。IQという指標でいえば、多くの場合70以上85未満の子どもたちがこれに該当する可能性があります。一見したところでは普通の子どもたちと変わりはなく、なかなか気づかれません。しかし、理論的には約14%の子どもたちが含まれますから、本の帯にあるように「日本人の7人に1人」となります。平均と知的障害のはざまにあり、気づかれにくいものの、授業について行けなかったり、友だちと上手くつきあえなかったり、感情のコントロールが苦手であったりして、当事者の子どもたちは苦戦し、辛い思いをしています。発達障害はよく知られるようになりましたが、境界知能の子どもたちにもしっかり目を向け、必要な支援を提供することは喫緊の課題といえます。この本では、境界知能とはどのような状態なのか、教科学習の前に認知機能を向上することの重要性、子どもの可能性をいかに伸ばしたら良いかについて具体的に、分かりやすく解説されています。 (★★★★)

  • 関裕二: スサノヲの正体(新潮新書)

    関裕二: スサノヲの正体(新潮新書)
    タイトルに惹かれて手に入れたものの、序章の記述が私にとっては退屈でしばらく放っておいたり、読み直そうと思ってくじけたりしていました。しかし、そこを乗り越えるとこの本はとても面白くなり、ほとんど一気読みしました。スサノヲ(素戔嗚尊)の正体を探るプロセスでアマテラス(天照大神)の謎も明らかにされて行き、それもとても興味深いものがあるのです。アマテラスは皇祖神とされますが、実在の初代王と言われる崇神天皇はアマテラスを伊勢に追いやっています。また、伊勢神宮を整備した持統天皇だけは伊勢に参ったものの、それ以降明治になるまで、1,000年以上も歴代天皇は伊勢神宮を訪れていません。明治天皇が東京に遷御したあと武蔵国の鎮守勅祭の社に定めたのは、スサノヲの祀られる氷川神社(現さいたま市)です。明治天皇は氷川神社を訪れた翌年に、伊勢神宮を訪れています。そもそも伊勢にいる神はアマテラスなのかという疑問にも立ち向かっている、古代史や神に関心がある方にはお勧め。 (★★★★★)

  • 安藤 優一郎: 大名屋敷「謎」の生活 (PHP文庫)

    安藤 優一郎: 大名屋敷「謎」の生活 (PHP文庫)
    時代小説をよく読みます。捕物帖、市井の人たちの生活、侍の物語、大名の話などいろいろとあります。庶民の生活については、これまでもいろいろな本でかなり知っていますが、大名の生活については分からないところの方が多いと思っていました。タイトルに惹かれて買ったのですが、大名やその家族の生活が詳しく書かれているのではなく、勤番侍の生活、大名屋敷の庭園、御用達商人や豪農、幕末の動乱と大名屋敷などの話が中心でした。それはそれで知らなかったことが多々あり、興味深く読みました。 (★★★)

  • 服部環ほか: 指導と評価2023年10月号(図書文化社)
    「指導と評価」は、日本教育評価研究会の機関誌であるとともに、日本で数少ない教育評価に関する月刊誌です。この号では、教育・心理検査の意義と活用という特集が組まれています。「教育・心理検査の意義」に始まり、WISC-Ⅴ、KABC-Ⅱなどの個別検査の使い方、解釈の仕方、指導への活かし方がそれぞれの専門の先生によってわかりやすく解説されています。特別支援教育の現場でも、きちんとした心理アセスメント所見に基づいた支援を展開することが望ましいのですが、現場の先生方には敷居が高いようです。ご関心がおありの方には、どのように使えるか、どのように考えたらよいかについて基本的なことがらを理解するのに適しています。出版社のWebサイトからバックナンバーとして購入できます。 (★★★★)
  • 石田 光史, 樋口 広芳(ナツメ社): ぱっと見わけ観察を楽しむ 野鳥図鑑

    石田 光史, 樋口 広芳(ナツメ社): ぱっと見わけ観察を楽しむ 野鳥図鑑
    野鳥図鑑はすでに何冊も持っていますが、この野鳥図鑑は、2015年の刊行で、なぜ今までこの存在に気づかなかったと反省するほど便利そうなもの。掲載されているのは324種ですが、それぞれの特徴や、見わけのポイントがパッとわかるようになっています。その鳥の生活型や生息地、食性や羽色、形態などのほか、雌雄、夏羽冬羽、幼鳥などで特徴が異なる場合は、それらについても説明されています。観察したい行動から、おもしろい生態、探し方までもが載っていますし、鳥の鳴き声が聴けるQRコードも付いています。私自身、野鳥の特定がけっこうアヤシいので、しっかり活用しましょう。 (★★★★★)

  • 千枝大志(風媒社): 街道今昔 三重の街道をゆく (爽BOOKS)

    千枝大志(風媒社): 街道今昔 三重の街道をゆく (爽BOOKS)
    「東海の街道」シリーズの第4巻です。「街道歩きのお供に最適の1冊」といううたい文句。内容は、三重の主な街道、近世三重の城郭図・城下図を読み解く、お伊勢参り小咄、伊勢をめぐる〈参詣〉をデジタル化するの4章構成で、まさに三重の街道歩きの参考書としてよいと思います。私自身も県内の東海道、伊勢街道、美濃街道、濃州街道はほとんど歩き、ほかの街道も部分的に歩いていますし、城もここに載っているところはかなり訪ねています。デジタル化も、ブログに写真・記事を載せていますから、出来不出来はともかく、私も取り組んでいます。県内の街道はさらに歩こうと思っていますし、デジタル化にももっと取り組みたいと考えていますので、十分活用できるでしょう。 (★★★★★)

  • 唐沢孝一: 都会の鳥の生態学 カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰 (中公新書)

    唐沢孝一: 都会の鳥の生態学 カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰 (中公新書)
    都市にもたくさんの野鳥がいることを知る人は少ないかも知れません。私がいつも散歩している地方都市の公園では、これまで10年あまりで70種類近くの野鳥を観察しています。都会は自然の少ない人工的な環境にあふれていますが、野鳥たちはもともとの生態を活かしつつこれらにしたたかに適応してい生きています。この本では、カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽を取り上げ、その都会における生態や、活動の変化、人間と鳥との関係とその変化などについて多くの実例や、調査結果をもとに、豊富な写真を使って楽しく読めるようにまとめられています。 (★★★★★)

  • 堤未果: 堤未果のショック・ドクトリン 政府のやりたい放題から身を守る方法 (幻冬舎新書)

    堤未果: 堤未果のショック・ドクトリン 政府のやりたい放題から身を守る方法 (幻冬舎新書)
    「ショックドクトリン」とは、テロや大災害など、恐怖でこくみんが思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさ紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことです。アメリカでの3.11以来、日本でも大地震やコロナ禍の裏で知らない間に個人情報や資産が奪われようとしているというのがこの本のテーマ。パンデミックで製薬企業は空前の利益を得、マイナンバーカード普及の先には政府のよからぬ思惑があるなどよくよく注意し、自分の生命・財産を守らないといけないというのが著者の主張。「今だけ、自分だけ、お金だけ」という強欲資本主義に負けないようにするには、ちょっとした違和感を大事にし、お金の流れがその裏にないか、また、それで大もうけして回転ドアをくぐって逃げる輩がいないかをチェックすることです。また、政府が何か、大急ぎで導入しようとしたり、既存の制度を急拡大しようとするときは、要注意だそうです。 (★★★★)

  •  奥山景布子: 葵の残葉 (文春文庫)

    奥山景布子: 葵の残葉 (文春文庫)
    いわゆる「高須四兄弟」である徳川慶勝、松平容保、松平定敬、徳川茂栄は、幕末維新の激動期に、結局のところ官軍と幕府とに分かれて戦う運命になったのですが、この四兄弟を取り上げて埋もれた歴史を活写した小説。私自身は、桑名藩主であった松平定敬が取り上げられているので興味を持って手に取った次第。幕末維新は、次々に色々な出来事が起きて、さまざまな人たちの思惑も複雑に入り組んでいるので、小説にするのは難しいと思っていたのですが、隠れた主人公ともいえる高須四兄弟の視点からとても躍動感のある読み物になっています。また、この時期の歴史をより一層深く理解できたという感想も持っています。 (★★★★)

  • 國分功一郎: 暇と退屈の倫理学(新潮文庫)

    國分功一郎: 暇と退屈の倫理学(新潮文庫)
    ほぼ隠居状態ですから、暇と退屈には困りません(微笑)。それ故にこの本を手に取ったといっても、誤りではありません。著者がいうには、「暇」とは何か、人間はいつから「退屈」しているのだろうかといったなかなか答えにたどりつけない問いに立ち向かうとき、哲学が役に立つというのが著者のスタンス。哲学書なのに、読みやすいのです。スピノザ、ルソー、ニーチェ、ハイデッガーなど、その昔学生時代に取り組んで挫折した哲学者たちの論考を参照しつつ、現代の消費社会における気晴らしと退屈について鋭い指摘がされ、まさに蒙を啓かれます。 (★★★★)

  • 逸見功: 統計ソフト「R」超入門〈最新版〉 統計学とデータ処理の基礎が一度に身につく! (ブルーバックス)

    逸見功: 統計ソフト「R」超入門〈最新版〉 統計学とデータ処理の基礎が一度に身につく! (ブルーバックス)
    今さら、なぜこういう統計ソフトの本を読むのか? と訝られると思うのですが、その昔、現役の頃には統計パッケージソフトIBM SPSSを使ってデータを分析して論文を書いていました。ただ、SPSSを始め、統計パッケージソフトは、値段がバカ高いのです。退職する前からこのRというフリーの統計処理ソフトが出て来て、ずっと興味を持っていました。先日、文庫本を買おうと思って本屋に行ったらこの本を見つけてしまいました(微笑)。今さらこれを使ってバリバリやる訳ではありません。むしろボケ防止かも知れませんが、昔のデータはそのままパソコンにありますから、これを使って、昔はやらなかった分析をしてみようと思っています。何か成果が出るかどうかは極めてアヤシいのですが、まぁゆるりといろいろやってみることにします。 (★★★★)

  • 林(高木)朗子, 加藤忠史, 林(高木)朗子, 加藤忠史: 「心の病」の脳科学 なぜ生じるのか、どうすれば治るのか (ブルーバックス)

    林(高木)朗子, 加藤忠史, 林(高木)朗子, 加藤忠史: 「心の病」の脳科学 なぜ生じるのか、どうすれば治るのか (ブルーバックス)
    たまにはこういう本も読まないと、認知機能が退化するかもしれないと思って(微苦笑)。というよりも、もともと神経心理学に興味がありましたので、本屋の店頭で見つけ、これは面白そうだと思って購入しました。うつ、自閉スペクトラム障害、ADHD、統合失調症、双極性障害など、現代人を悩ませる心の病について、脳にどのような変化が起きているか、最新の知見がまとめられています。最前線の研究者たちがわかりやすく説明しているのですが、知識ゼロで読むのはかなりキツいかも知れません。私は現役をリタイアして10年以上になりますが、その間にこれほど研究が進んだのかというのが正直な感想。心の病の原因は、1つとは限りません。心の病は「症候群」と見た方がよいと考えます。私自身が関わる自閉スペクトラム障害、ADHDなどの発達障害でもそうです。脳機能と心の病との関連について最新の知見を知りたい方にはおすすめ。 (★★★★)

  • 磯田 道史: 徳川家康 弱者の戦略 (文春新書)

    磯田 道史: 徳川家康 弱者の戦略 (文春新書)
    本の帯に「大河より面白い!」とありますが、本当にそうでした。午前中の散歩のついでに買ってきて、夕食までに一気に読み終えてしまいました。もったいない気がするくらい。松平元康がいかにして徳川家康になったか、さらに徳川将軍家がいかに続くよう礎を築いたかが、よく分かりますし、戦国時代から徳川幕府創世記までの歴史を見る目が養われる本です。それというのも、著者の磯田さんが古文書の権威で、一次史料を読みこなすだけでなく、場合によっては価値が怪しい資料まで傍証に用いて(怪しい資料でも使い道があるというのも良く分かりました)、ご自身の頭で考えた結果を実に分かりやすく解いてくれてあります。徳川家康の弱者の戦略のキーワードは、「武威」と「信頼」ということです。また、情報の取得、解読にも意を尽くしたことがよく分かります。混迷を深める世界情勢を読み解いて、我が国が進む方向を考える上でも役に立つ一冊。 (★★★★★)

  • 井手 正和: 発達障害の人には世界がどう見えるのか (SB新書)

    井手 正和: 発達障害の人には世界がどう見えるのか (SB新書)
    発達障害、とくに自閉スペクトラム症(ASD)の方では、感覚過敏や感覚鈍磨をよく伴います。「照明で目がチカチカする」「皆が話している教室では。音が鳴り響き絶えられない」「ケガをしてるのに、痛みを感じない」などさまざまな状況を呈します。著者は実験心理学や、認知神経科学を専門とし、ASDの方に見られる感覚過敏、感覚鈍磨は、脳機能の特性から来ていることを明らかにしてきています。ASDなど発達障害のあるご本人はもちろん、親御さん、教師など関わりを持つ方々は、このことをよく理解して支援にあたることがとても重要です。ASDを始めとして発達障害について、「わがまま」「自分勝手」「やる気がない」などと捉えてしまうと、支援どころか、理解もできなくなります。脳の働きによってさまざまなことが生じてきているという視点が必要不可欠です。この本は、感覚過敏・感覚鈍磨を手がかりにそういう視点について理解を深められます。 (★★★★)

  • 日本放送協会,NHK出版: NHK 100分 de 名著 中井久夫スペシャル 2022年 12月 [雑誌] (NHKテキスト)

    日本放送協会,NHK出版: NHK 100分 de 名著 中井久夫スペシャル 2022年 12月 [雑誌] (NHKテキスト)
    2022年12月のNHKのEテレ「100分de名著 中井久夫スペシャル」のテキストです。今頃(2023年2月)これをリストアップしているのはどうかという気もしますが、録っておいたビデオをみたのが最近なのです。中井久夫さんは、2022年8月にお亡くりになりましたが、日本を代表する精神科医のお一人であり、翻訳家、文筆家としても一流でした。現役の頃、中井さんの本はたくさん読みました。臨床心理学の分野でも「風景構成法」を導入した方として知られています。Eテレの講師である齋藤環さんは、中井さんを評して「義と歓待と箴言知の人」と書いておられますが、まさにそういう気がします。『最終講義』『分裂病と人類』『治療文化論』『「昭和」を送る』『戦争と平和 ある観察』が紹介されています。現在もウクライナで戦争が続いていますが、中井は「戦争は過程、平和は状態」とし、戦争は物語として語りやすく、とにかくかっこよくて美しい、それが問題だといいます。一方、平和は分かりにくく、見えにくいため、心に訴える力が弱いとします。「状態を維持する努力はみえにくい」のですが、戦争と平和に限りません。普段通りの日常生活を維持していくのも同じような気がします。戦争を経験していない人間が指導者層の多くを占めるようになると戦争に対する心理的抵抗が低くなるともいいます。「戦争には自己収束性がない」とも中井さんはいっています。われわれはやっかいな時代に生きていると痛感します。中井さんの本を多くの方が読むと、時代も変わるかも知れません。 (★★★★★)

  • 桑名三郎: 七里の渡しを渡った人達(久波奈工房)
    桑名と名古屋の宮を結んだ東海道唯一の海路「七里の渡し」をテーマにした歴史本です。船頭が旅人を案内しながら、七里の渡しを渡った歴史上の24人を紹介する内容。やさしい話し言葉で紹介されており、読みやすい本です。徳川家光、松尾芭蕉、明治天皇などが取り上げられています。著者は、桑名で歴史案内人をしながら、街の歴史を研究している、街道好きの方です。本は、桑名市内の書店とメルカリで¥1,200で販売。 (★★★★)
  • 磯田 道史: 日本史を暴く-戦国の怪物から幕末の闇まで (中公新書 2729)

    磯田 道史: 日本史を暴く-戦国の怪物から幕末の闇まで (中公新書 2729)
    磯田さんの本は面白い。というのも、話のもとには古文書があるからだと思う。その古文書も磯田さん自身が、古書店などで発掘してきたものがほとんどで、それ故、内容もオリジナリティが高くなる。この本は、戦国時代から幕末あたりを中心にさまざまな古文書の内容をもとに、例えば忍者の悲惨な死に方、江戸でカブトムシが不人気だった背景、赤穂浪士が吉良の首で行った奇妙な儀式などなど、興味深いエピソードを浮かび上がらせている。面白いので一気読みしてしまった。 (★★★★★)

  •  佐藤信(編): 新版 図説歴史散歩事典(山川出版社)

    佐藤信(編): 新版 図説歴史散歩事典(山川出版社)
    史跡や、寺社、町並み、城、美術工芸品等の見方がやさしく解説されている本です。「事典」となっていますが、いわゆる辞書とは違って、普通の本のスタイルです。索引が充実していますので、事典としても十分に使えます。最初の版をもっていますが、40年ぶりに改訂され、写真、図版も多く、歴史散歩の最強の味方です。 (★★★★★)

  • 日下部理絵: 60歳からのマンション学 (講談社+α新書)

    日下部理絵: 60歳からのマンション学 (講談社+α新書)
    今年1年、何の因果か(などと書くとお叱りを受けること必至ですが)、住んでいるマンションの管理組合の理事長を仰せつかっています。今年は、エレベーターリニューアル工事が最大のイベントで、それは無事に済んだのですが、前理事長から8年後に迫った第3回大規模修繕に向けて、修繕積立金が不足する見込みと申し送られました。確かにかなりの金額が不足しそうで、頭を悩ませていました。マンションに住みながら、そもそも基本的な知識が不足しており、管理会社のフロントマンの方の協力を得ながらシミュレーションなどをしていました。ネットであれこれ調べてはいたものの、それで得られる知識は体系的なものではありませんでした。この本は、事例を元にマンション管理について必要な知識が得られるように書かれており、まだすべて読み終えてはいないものの、とても役に立っています。任期残り2ヶ月半となって付け焼き刃ではあるものの、次の理事会に具体的に課題を申し送ることができるよう勉強中(笑)。 (★★★★)

  • 宮口 幸治: ドキュメント小説 ケーキの切れない非行少年たちのカルテ (新潮新書)

    宮口 幸治: ドキュメント小説 ケーキの切れない非行少年たちのカルテ (新潮新書)
    「ケーキの切れない非行少年たち」や「どうしても頑張れない人たち」の著者である宮口幸治さんの新刊です。前2著の内容をよりよく理解できるよう、「ドキュメント小説」として書かれたものです。主人公は、精神科医の六麦克彦。医局から派遣されて要鹿乃原少年院に勤務して5年。彼がそこで目にしたのは、少年院に堕ちてきた加害者ながら、あらゆる意味で恵まれず、本来ならば保護されてしかるべき「被害者」と言わざるを得ない少年たちでした。この内容は、前の2冊のように普通の新書では書き尽くせるものではなく、物語の形を借りざるを得なかったのでしょう。ただし、普通の小説として読むのには少し苦労するかも知れません。特別支援教育が普及して、知的障害や、発達障害のある子どもへの教育や支援は、以前に比べれば改善されてはいますが、最近は、家族の養護能力が十分でなかったり、親など家族自身に支援が必要なケースもたくさんあります。こうした中には、この本で取り上げられたような結末に至ることがあっても不思議ではないという気がします。極端な事例が集められていると思われるかも知れませんが、社会全体として真剣に取り組むべき課題が突きつけられています。 (★★★★)