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2016年6月19日 (日)

障害者差別解消法と合理的配慮について

 本年4月から、「障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 平成25年法律第65号)」が施行されました。それにともない、特別支援教育の領域でも、「合理的配慮」が話題になっています。学校や行政の側も、十分な準備が整わない面もあるようで、手探りで進んでいるようにも思われます。また、障害のあるお子さんをお持ちの保護者の方々にも、この「合理的配慮」が十分には理解されず、ことばだけが先行しているような印象もあります。

 そこで、小生が知りうる範囲で、障害者差別解消法と合理的配慮についてまとめてみました。きちんと論述しようとしますと、障害者の権利条約、インクルーシブ教育、共生社会などのことから説き起こす必要がありますが、能力の範囲を超えますので、そこは割愛し、最低限必要な、基本的事項を取り上げるにとどめます。

 理解不十分や、誤りがありましたら、ご指摘くだされば、幸いです。

1.障害者差別解消法のポイント

 ここでのポイントは、学校教育という視点で整理したものです。それは以下の3点になります。括弧内に示したのは、障害者差別解消法の根拠となる条項です。

  1. 障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止(第7条第1項・第8条第1項)
  2. 環境の整備(第5条)
  3. 合理的配慮の提供(第7条第2項・第8条第2項)

2.各項目についての説明
①障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止

 行政機関等(公立学校を含む)(第7条第1項)、事業者(私立学校を含む)(第8条第1項)において、障害を理由とした不当な差別的取扱いが禁止されました。

 なお、「障害者」「障害」については、次のように示されています:

障害者:身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害(「障害」と総称)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの(第2条第1項)

②環境の整備

 行政機関等・事業者が、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を的確に行うため、施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修などの必要な環境の整備に努めるよう定めています。

 ちなみに、社会的障壁は、次のものをいいます:

社会的障壁:障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう(第2条第2項)

③合理的配慮の提供

 障害者から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合、その実施に伴う負担が過重でないときは、当該障害者の性別・年齢・障害の状態に応じて、社会的障壁の除去について合理的配慮をしなければならないと定めています。

 ただし、合理的配慮の提供は、行政機関等(公立学校)では法的義務(第7条第2項)、また、事業者(私立学校)では努力義務です(第8条第2項)。

3.学校教育における合理的配慮

 以下の説明は、「中央教育審議会初等中等教育分科会合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ報告(概要)―学校における「合理的配慮」の観点―(平成24年2月)」などによるものです

1)基礎的環境整備(8項目)

 合理的配慮を充実するために実施されるものが、基礎的環境整備です。上記の報告(概要)では、以下の8項目があげられています:

①ネットワークの形成・連続性のある多様な学びの場の活用
②専門性のある指導体制
③個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成等による指導
④教材の確保
⑤施設・設備の確保
⑥専門性のある教員、支援員等の人的配置
⑦個に応じた指導や学びの場の設定等による特別な指導
⑧交流及び共同学習の推進

2)学校における合理的配慮の観点(3項目11観点)

 合理的配慮とは、障害のある子どもが、他の子どもと平等に「教育を受ける権利」を享有・行使するために、学校の設置者・学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことと定義されています。障害のある子どもの状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要とされるものです。法律では、体制面、財政面において、均衡を失した、または、過度の負担を課さないものとされています。

 合理的配慮は、基礎的環境整備をもとに個別に決定されるもので、それぞれの学校における基礎的環境整備の状況により、提供される合理的配慮は異なります。
上記の報告(概要)では、以下の3項目11観点があげられています:

①教育内容・方法
 (1)-1 教育内容
  (1)-1-1 学習上又は生活上の困難を改善・克服するための配慮
  (1)-1-2 学習内容の変更・調整
 (1)-2 教育方法
  (1)-2-1 情報・コミュニケーション及び教材の配慮
  (1)-2-2 学習機会や体験の確保
  (1)-2-3 心理面・健康面の配慮
②支援体制
 (2)-1 専門性のある指導体制の整備
 (2)-2 幼児児童生徒、教職員、保護者、地域の理解啓発を図るための配慮
 (2)-3 災害時等の支援体制の整備
③施設・設備
 (3)-1 校内環境のバリアフリー化
 (3)-2 発達、障害の状況及び特性等に応じた指導ができる施設・設備の配慮
 (3)-3 災害時等への対応に必要な施設・設備の配慮

3)合理的配慮と基礎的環境整備の関係

Goritekihairyo_768x356  国、都道府県、市町村が、それぞれ教育環境の整備を行います。これらは、「合理的配慮」の基礎となる環境整備であるため、「基礎的環境整備」と呼ばれるものです。基礎的環境整備は、制度として不特定多数を対象に行われるものです。これらをもとに、各学校において、障害のある子どもに対して、合理的配慮を提供します。合理的配慮の方は、基礎的環境整備をもとに、個別に必要なものとして提供されるもので、両者の位置づけは異なっています。

 これを図式化すると、左図のようになります。

4.合理的配慮の提供に関わる補足説明
1)合理的配慮において、本人・保護者の意思の表明がない場合、どう対応するか

 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27年2月24日閣議決定)」には、「合理的配慮の基本的考え方」の中に、意思の表明がない場合でも、その障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白であるならば、適切と思われる配慮を提案するために自主的な取り組みに勤めることが望ましいとされています。

 教育分野においては、その障害のある子どもが十分な教育を受けられるかどうかの視点から判断することが重要と考えられます。

2)本人・保護者から意思の表明があった合理的配慮は、すべて提供されるか

 合理的配慮の決定に当たっては、本人・保護者と,設置者・学校とが十分に話し合い、合意形成をはかっていきます。その際、次のような「検討事項例」を参考に話し合い、共通理解を得て、合意していくことになります:

  • 何のために、 その合理的配慮を提供するのか?
  • 必要とされる合理的配慮は何か?
  • 何を優先して提供する必要があるか?
  • 体制面、 財政面から均衡を失した、 又は過度の負担になっていないか?
  • 教育の目的・内容・機能の本質的な変更となっていないか?
  • その合理的配慮の内容が、法令違反になっていないか?

 合理的配慮の提供に当たっては、個別に判断されますので、本人・保護者が要望した内容について、提供されないこともあります。

5.参考資料

 参考にした主な資料は次の通りです:

1)「中央教育審議会初等中等教育分科会合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ報告(概要)―学校における「合理的配慮」の観点―」(平成24年2月)
2)「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(平成27年2月24日閣議決定)」
3)田中裕一(2016):特別支援教育の現状と課題.一般社団法人日本臨床心理士会主催第8回(発達)障害の理解と支援に関する総合研修会 後期(1)資料,pp.2~37.
4)K市特別支援連携協議会での配付資料(障害者差別解消法と合理的配慮について)(平成28年2月)

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