心理職の資格法制化
名古屋では20度近くの気温となり、まさに小春日和となりました。午後、仕事に一区切りをつけてから、また、プチ散歩をしてきたくらいです。今日は、とくにアポイントもなく、来週の授業準備や、統計学の勉強(検定力について)、アンケートへの回答、学会役員選挙の投票(ネットで行われていました!)などをしていました。
さて、心理職の国家資格化につきましては、これまでにさまざまな経緯があり、なかなか実現に至っていませんでした。しかし、近着の“日本臨床心理士会雑誌”63号の記事によれば、ここ最近、著しく状況が変化したようです。
結論から書きますと、関連諸団体の会議で、「一資格、一種類」の基本コンセプトで合意を見たようです。さらに、
- 資格名称は、○○心理士、心理士(心理師)などが考えられる
- 資格の性格は、汎用性(医療などに限定されない)
- 医療機関においては医師の指示を受ける
- 受験資格は、学部卒+大学院修了者、学部卒で○年間の実務を経験した者
という性格の資格になりそうです。
現在の臨床心理士資格を有している場合には、経過措置を踏まえた然るべき手続き(国家試験受験など)を経て、国家資格を取得することが可能となる見通しです。ただし、国家資格を取得せずに、臨床心理士だけを続けていくこともできるようです。ということは、新たに設けられる国家資格としての心理職は、業務独占ではなく、名称独占の資格であろうと思われます。
資格・免許の制度は、最低水準をクリアしていることを証明するだけですので、これから解決すべき課題もまだ多いと思われますし、既存の臨床心理士、学校心理士、臨床発達心理士などとの整合性をいかにつけていくかという問題も残っています。
一方で、国による心理職の質の保証がなされることになれば、ユーザとなる国民にとっても安心して、心理職のサービスが受けられるようにしなければなりません。
臨床心理士の職能団体である日本臨床心理士会では、次のような考え方をとっています:
- 資格の名称:臨床領域の心理職であることがわかる公共性のある名称
- 資格の性格:各領域において汎用性のある資格
- 医療提供施設においては医師の指示を受ける
- 業務の内容:①心理的な問題を有する者とその関係者に対する心理アセスメント・心理相談・心理療法・心理臨床的援助を行う ②①の内容に加え、国民の心理的健康の保持及び増進を目的とした予防並びに教育に関する業務を含む
- 受験資格:①学部で心理学を修めて卒業し、大学院修士課程・専門職学位家庭で臨床心理学等を終了した者を基本とする ②学部で心理学を修めて卒業し、保健医療、福祉、教育、司法矯正、産業その他の機関で、臨床心理職の有資格者の指導の下での実務経験が数年以上ある者
- 更新制のある資格とする
- 経過措置として臨床心理士資格保持者は受験できるものとする
思えば、1990年~2000年には、診療補助職としての臨床心理技術者の国家資格化が、医師を中心に、途中から看護職2名、心理職6名をくわえて検討されましたが、当事者団体の方針が一本化できずに、旧・厚生省は法制化の検討を中止していました。2005年3月からは、議員立法が検討され、医療心理師議連と臨床心理職議連の2つの議連が組織され、それぞれが資格法制化を検討しましたが、2005年7月に「二資格・一法案」(臨床心理士及び医療心理師法案要綱骨子)が、2つの議連合同会議で了承されました。しかし、この法案は、例の「郵政解散」のあおりを受け、また、調整不十分であった一部の医療団体の反対表明にも遭遇し、上程前の段階で止まったままとなっていました。
その後、日本の心理学系の学会40学会が加盟する「日本心理学諸学会連合」を主な調整の舞台として、この「二資格・一法案」指示が決議されました(2007年6月)。さらに、2008年7月以降、日本臨床心理士会や心理学会関係者と医療団体とが水面下で協議を進め、具体的な協議へと進みました。
2009年4月以降、日本臨床心理士と、法人化された日本心理臨床学会、医療心理師巣殷賑協議会の動きが活発化してきました。9月末には、社団法人日本精神科病院協会も、その代議員会で、心理職の国家資格についての報告があり、基本的事項が了承されたとのことです。
そして、この10月現在、冒頭に掲げました国家資格化案が大筋で合意されるに至ったということです。初めの方にも述べましたが、まだ解決すべき課題は多々あると思いますし、個人的にも意見はありますが、過去20年に渡る臨床心理士の活動実績がある程度は認められてきたことも、資格法制化に向けての大きな要因として作用していると思います。
財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定している養成大学院は、平成21(2009)年7月1日現在、全国で157大学院となっています。量的拡大が、質的低下を招かないよう、教育カリキュラムの精選、教育内容の質的向上、教員の資質向上がさらに必要と思います。
さらに、私自身は、もっと医療、とくに専門医(精神科医、児童・思春期専門の精神科医、小児科医、小児神経科医)の先生方との連携は必須と考えています。また、昨今、医学、医療の領域では常識化してきている「エビデンス・ベースト・アプローチ」については、もっと関心が払われ、努力される必要性が極めて高いと思います。そのために、当事者団体や関連学会が、共同研究などを行って、各種の心理アセスメント方法の妥当性や、心理療法の効果についての検証を進めるべきです。
教員免許の更新制は、政権交代によって、いかにも中途半端な形で取りやめの方向に動いていますが、臨床心理士資格は、当初からずっと5年間で資格更新を行ってきています。これは、その間に一定の研修を自らに課す制度で、国家資格になったあともぜひとも継続し、専門職として、生涯にわたり研鑽を積むことが望ましいと思っています。それによって、心理職の国家資格化によって、心理的健康の維持・向上、不健康の改善といったメリットを享受していただく国民の方々に対するわれわれの責務であると思っています。
まだ、国家資格化が確定した訳ではありません。よりよい資格制度の設計、制定や、円滑で利用しやすい、また利用される方には真にメリットのあるものにしていくために知恵を絞ることが重要です。私も、その一端をになって、微力を捧げたいと思います。









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